【中竹竜二】なぜ「スポーツマインドの学び」がビジネスに活きるのか

2019/4/28
「壁を超えて、繋がろう。」
2月9日、永田町GRIDにて『SCJ Conference 2019 スポーツの壁を超えて、繋がるカンファレンス ~共に未来を創るコーチ・リーダーの祭典~』が開催された。
催しの仕掛け人は、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターであり、起業家としてTEAMBOXを経営するSCJ代表理事の中竹竜二。
壇上に上がった中竹は開口一番、「こうした学びの場では、皆さんの意欲や主体性が大事になります。
『初めまして』の人がほとんどと思われますが、隣に座っている人と自己紹介をして下さい」と、聴講者同士での会話を呼びかけた。
「心理的安全環境を作り出し、人と人との間に何を言っても恥ずかしくない関係性があると、学びはより深められる。こうした講義の場でも理想は、『講師と受講者』ではなく、『学びの仲間』であること。受講者同士間で、ビジネスに繋がってもいい。
一人が何かを教えるとき、両方が学べる環境を作ることが大切」と、自ら提唱する理念を実際の行動に結びつけた。
中竹氏は「スポーツの現場だけで、課題やビジョンを考えるのではなく、様々な業界・業種との壁を取り払い、繋がっていくことが必要」という理念を掲げる。
そんな彼に「スポーツマインドの学び」の重要性などについて話を聞いた。
中竹竜二/日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター
1973年福岡県生まれ。2006年早稲田大学ラグビー部の監督に就任し、2007年度から大学選手権2連覇。2010年日本ラグビー協会コーチングディレクターに就任。株式会社「チームボックス」の代表取締役として企業のリーダー育成も行っている。
ーーこのカンファレンスを始めた動機は?
中竹 国内には様々なスポーツ団体があって、それぞれ活動をしています。しかし、発信力がなく、他競技の団体同士でのネットワーク構築に苦戦していることが考えられます。
SCJがそうした団体のハブとなり、活動の情報をキャッチアップできるコミュニティを作りたいと思って、カンファレンスをスタートしました。
ゆくゆくは国内全てのスポーツ関連団体と協力関係になりたいなと思ってます。
ーー中竹さんの考える「コミュニティ」とはどんなものですか?
中竹 「悩みを共有し合える仲間が集う場」ですね。
相談に答える答えないということに関係なく、ただただ気になっていることについて対話ができる仲間のいる場所ということです。
実際のところ、多くの人が持っている悩みをクローズドにしてしまっているので、誰かと対話をしていかないと問題解決にならないし、そもそも課題に気づけない。
持っている悩みがどのくらいの大きさなのかも、自分の主観だけではなかなか気がつけないものなんですよ。
今回のコンセプトは「壁を超えよう」です。もともとお互いに知らない人同士をくっつけることで、スポーツ界以外にも、何かいいエッセンスを提供したいと思いました。
そこで「俯瞰的にものをみる」「キャリアをどう考えるか」という切り口で、レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人氏さんと、多くのビジネスパーソンの転職活動に関わってきたmorich社長の森本千賀子さんにお声掛けしました。
面白かったのは、楽屋です。
二人は初対面の挨拶をするやいなや、すぐに仲良くなって、具体的にこれをやろうと仕事の話をし始めました(笑)。
「壁を超えよう」というコンセプトのお手本のようなことをしてくれて、この人たちを呼んでよかったと思いました。
イベントをきっかけにして「壁」を超えられる。これからもそんな場を作りたいですね。
ーー中竹さんは「誰かのこうするべき論を真似するのではなく、自分なりの哲学を持つことが大切」と講演で話していました。哲学はどのように作り出せばいいのでしょうか?
中竹 哲学って、自分のこだわりから生まれるものなんですよね。そのためには、自分の好き嫌いを明確にする鍛錬を積むこと。
好きや嫌いに、理由はありません。最終的には「何で自分はこれが好きなんだろう」「何で嫌いなんだろう」という自己認識を明確にすることで、形作られているものだと思っています。
でも、それは無人島に一人でいても、自分が何者なのか分からないように、他者とのふれあいの中でしか生まれないものだと思います。他者と喋る中で初めて自分自身に気づく。
スポーツ業界は、コーチも選手もまだまだクローズドに閉じこもっているんですけど、業界としてそうした状況にすら気づけていない。
業界全体に対しても自己認識をしてもらい、「俺たちはこれがやりたいから、これにこだわっていくんだ」という哲学を持ってもらう。そうなって欲しくて、こういった場を設けています。
今まではどうしても、「スポーツのノウハウはスポーツ業界の中だけでいい」「スポーツは、所詮スポーツだよね」と思われることが多かったんですね。
でも今、海外では「スポーツとそれ以外の業界に差はない。ビジネスであろうがスポーツであろうが、組織が結果をあげるには共通項がある」という考え方が広まってきているんですよね。
日本もそうなって欲しいと思います。
しかも組織運営の観点で考えた時に、スポーツは結果が出るまでのサイクルが最も速いんですよ。
短いスパンに練習や試合があって、結果もはっきりと出る。
ビジネスはなかなか区切りが見えにくいもので、誰が勝って、負けたのかも曖昧です。
つまり、良い悪いを判断しづらい。
その中で、組織運営の共通項を探そうと考えた時に、スポーツのエッセンスというのは最も分かりやすく、誰もが共感できるものなんです。
実際、多くのマネジメントメソッドが、スポーツから多く流入してきていたりもしています。
ですので、科学的にも客観的にも、スポーツからエッセンスを抜き出して業界・業種問わずいろんな領域に応用することで、そこからいい結果を生み出すことに繋げていきたい。
そうしたことを、SCJの活動を通じてやれたらいいなと思っています。
そして、そうしたエッセンスが常に溜まっていて、共有もできる。そんなプラットフォームのような団体になればいいなと思っています。
(執筆、写真:今井 雄紀)