株式会社ユーザベースは2019年3月28日に、第11回定時株主総会を開催しました。今回の株主総会では、ユーザベース経営陣の顔や人となりが見えるように、株主の皆様との質疑応答を交えたパネルディスカッションを実施しました。

(登壇者:モデレータ 梅田優祐、SPEEDA 稲垣裕介、NewsPicks 坂本大典、FORCAS/JVR 佐久間衡、ユーザベースCOO 松井しのぶ、ユーザベースCFO 千葉大輔)

<質疑応答>Quartz事業の見通しやリスク、ユーザベースのブランド戦略について回答(ユーザベース第11回定時株主総会レポート)

はじめに(梅田)

梅田:
皆様、こんばんは。株主総会の後半は、できるかぎりカジュアルに皆様とコミュニケーションさせていただく時間にできればと思っております。一方的に私たちからご説明するというよりも、 sli.do というサービスを使って皆様からのご質問にお答えしながら進められればと思っております。難しければ挙手でも構いませんのでよろしくお願いいたします。
まず最初に、各事業の責任者がどういう人間かということを知っていただきたく、簡単にご紹介させていただきたいと思います。
まずSPEEDA事業は、稲垣(裕介)が担当しております。稲垣は私の高校時代の同級生で、稲垣(い)と梅田(う)でたまたま席が隣同士になったことから関係がスタートしています。そのときはまさかこうして人生のパートナーになるとは思っていませんでした。もしかしたら私の奥さんよりも長い時間を一緒に過ごしています。それぐらい、運命はどうなるかわからないなと思っています(会場笑)。
この稲垣が今はSPEEDA事業を担当しておりますので、 まず稲垣から簡単にご紹介させていただきます。

SPEEDA事業の紹介(稲垣)

稲垣:
先ほど(株主総会)は、ありがとうございました。SPEEDA事業について、私から簡単にご説明いたします。
SPEEDAは、梅田の投資銀行やコンサル時代の原体験からスタートしている事業です。世界中の様々なサプライヤー様からデータを提供いただき、情報収集・分析できるプラットフォームです。
企業情報や統計情報などの膨大なデータを、独自の業界分類で3Cの形に構造化していることから、例えば「マレーシアの空調機業界について知りたい」というような抽象的な調査にも対応できることが強みです。社内のアナリストチームの知見とエンジニアチームの技術力を持って、プラットフォームを作り上げています。ただのデータベースではなく、検索性の高いプラットフォームを提供できているところが、評価いただいている大きなポイントです。
今年の大きなトピックの1つが、中国市場へのフォーカスです。アジア事業を成長させていくためには、今年は成長が著しい中国市場にコミットを強めていきたいと思っています。その先駆けとしてまず中国語版SPEEDAをリリースしました。これにより今まで以上に中国でのユーザーの獲得を目指します。また中国市場での事業展開を強める中で、そこで収集できる中国のより深いデータをSPEEDAに格納していきます。そういった価値の高いデータを日本を含めた周辺国のアジアのユーザーの皆様にも提供していくことができればと思います。

entrepedia/ami/FORCASの紹介(佐久間)

梅田:
次はentrepediaとami、FORCASです。事業責任者の佐久間はもともと、UBS証券時代の私の同僚でした。
最初はSPEEDA事業を担当していまして、その中で事業会社のお客様がSPEEDAを求めているが、当時のSPEEEDAがニーズにフィットしていないという原体験から、FORCASを立ち上げました。entrepediaもSPEEDAで未上場スタートアップ情報のニーズがあるところからジャパンベンチャーリサーチ社をM&Aし、今、amiという新サービスをスタートしています。
いずれも佐久間が自身で手を挙げ、仲間を集めながら事業をつくってまいりました。佐久間からこの3事業についてご説明します。
佐久間:
佐久間です。よろしくお願いいたします。
entrepediaとamiは、スタートアップに特化したサービスです。投資家向けがentrepediaで、稲垣から先ほど説明のあったSPEEDAのスタートアップ版と捉えていただくのがわかりやすいかと思います。amiは数ヶ月前にリリースしたばかりで、まだプロダクトマーケットフィットを目指している段階です。起業家がビジョンやストーリーを発信し、そこに共感する仲間を集めていくサービスを目指しています。
entrepediaにはスタートアップのファクト情報がすでにたくさん集まっていますので、年に1回、資金調達動向などをまとめたレポートを公開しています。たとえば2018年における国内の総調達額は3,880億円だったというのはentrepediaのデータからなのですが、この数字は日経さんやテレビ、マスコミでも引用される、いわばデファクトになっています。
FORCASについては少しご説明が難しいのですが、この図で示しているように、企業のマーケティング活動というのはターゲットを決めてマーケティングでリード(メールアドレス等のコンタクト情報)を取り、営業して、最終的に契約につなげる一連の取り組みです。
このターゲティングの部分で、「そもそもどういうお客さんをターゲットにしたら、成約率が高くなるのか」をテクノロジーで解析して定義し、無駄な営業やマーケティングをなくして生産性を高めるための「ABM(Account Based Marketing)」を実現するためのプラットフォームです。
図の矢印の様に下から上へテクノロジーが発達しており、FORCASは「MAの次」のサービスであると説明することもできるかと存じます。
最近のトピックとしましては、7月24日にSaaS企業が一同に集まる「SaaSway Conference」を開催します。FORCASのお客様にはSaaS企業が多く、SaaS企業の皆様と一緒に、未来を描く場をつくろうという取り組みです。

NewsPicks/Quartzの紹介(梅田・坂本)

梅田:
次はNewsPicksとQuartzです。NewsPicksは坂本から、Quartzは私からお話させていただきます。
NewsPicksの日本の責任者は、坂本がやっております。坂本は10年前、SPEEDAを創業したときからのメンバーです。当時は京都の大学にいまして、ある学生向けメーリングリストに私が出したインターン募集を見て応募してくれました。それからずっと一緒に事業をつくってきた人間です。
坂本:
NewsPicksの坂本です。よろしくお願いいたします。
NewsPicksはB2Cのサービスなので皆様の中にもご存知の方は多いかもしれません。特徴の1つは、いろんな経済ニュースをワンストップで読めるプラットフォームであるということ。もう1つは、そのニュースに対する有識者のコメントを合わせて読めること。
そしてもう1つは、社内に編集部があり、独自コンテンツをつくっていること。優秀な編集者、記者が集まって、今どこにもない情報を発信しています。
梅田:
Quartzは、2018年にM&Aしたアメリカのメディアです。読者層が日本のNewsPicksと同じで、25〜45歳、若手のビジネスリーダーが大半です。世界中で2000万人の読者がいまして、米国進出する際にも何らかの形で提携したいと考えていました。
実はNewsPicksをスタートするときに、最も参考にしたサービスがQuartzです。Quartzは本物のジャーナリズムをスマートフォンで提供した、最初のメディアだと思います。こうして今、グループとして仲間に加わってもらって、とても力強く感じています。
以上が事業の紹介となります。あと2人、ご紹介させてください。

ユーザベース コーポレート(松井・千葉)

梅田:
ユーザベースのコーポレートを率いている松井と千葉です。松井はもともと日本で働いていたのですがご家族の都合でタイに引っ越すことになり、今、リモート執行役員としてタイで働いています。ユーザベースは創業時からずっと、新しい働き方、先進的な働き方を常に追求していきたいと考えていました。松井の話を聞いたときに、東京にいなくても、世界のどこにいても職責を果たせるモデルとして挑戦してみようということで、タイから東京にいるコーポレートチーム全体をマネジメントしています。
松井:
コーポレートCOOの松井と申します。よろしくお願いいたします。
今、ユーザベースグループとしては連結16社ぐらいあるのですが、私たちコーポレート部門は、ホールディングス機能をもっており、全事業に対してシェアードサービス(間接部門の共有)的に、コーポレートサービスを提供しています。創業者であり経営者でもある梅田と稲垣の2人と一緒に、千葉と二人三脚で、強い会社づくりを目指しています。
私が見ているのが法務や人事、総務、広報、情報セキュリティ、カルチャー作りなど。千葉はCFOとして、経理財務やIRなどを見ています。その他にもM&Aの実行やグループ全体の組織づくりなど、いろいろ何でも屋的にやっているのですが、「経済情報で、世界を変える」というミッションを達成するため、グローバルカンパニーを目指すユーザベースグループを支えるコーポレート基盤をつくることがミッションです。
梅田:
千葉はもともと、スタートアップでCFOをやっていました。その前はベンチャーキャピタルで、その前はドイツに留学していて、プロサッカー選手を目指してたんでしたっけ?
千葉:
はい(会場笑)
梅田:
ですので英語は苦手で特訓中なのですが、ドイツ語はペラペラというのが千葉です。自己紹介お願いします。
千葉:
千葉と申します。よろしくお願いいたします。
今回、QuartzのM&Aで大きなファイナンスを実施いたしまして、投資家の皆様からたくさんの問い合わせをいただいております。実はこれにすべて回答しているのは私でございます。ですので、今後、IRで問い合わせをされる際には電話やメールの向こうにコイツがいるんだなと思っていただければと思います(笑)。本日もぜひ忌憚のないご質問をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

Q:幻冬舎とのNewsPicks Bookについて

梅田:
それでは8時半までの残り30分、皆様からいただいた質問に回答してまいります。この質問が一番Likeが多いですね。
(編注:以下、質問は原文にできる限り近い表現を残しています)
Q:幻冬舎とのトラブルの件は、顛末はどうなったのでしょうか?
梅田:
こちらは私から回答させていただきます。
見城さんとは私もお会いしていまして、まずは経緯の説明をさせていただきますね。
もともとはアカデミア会員向けに毎月1冊、NewsPicks Bookという書籍を出版してお届けしていました。これを幻冬舎さんとの共同レーベルで運営しています。当初始めた時からまずは一定期間は両社でやってみることが決まっていて、その期間が来たこともあり、NewsPicksは今後自前でやっていきたいという申し入れをしていました。その一連のやりとりを知った見城さんがお怒りになり、あのTwitter投稿となりました。
この経緯につきましては週刊文春にも載っておりまして、そこで報じられていることがすべて事実でございます。箕輪さんが答えたインタビューや文春さんが報じられたこと、すべて事実です。
私たちとしましても、見城さんとどういう形でお話するのが良いかは、箕輪さんを含めた現場の方々とはずっと話をしておりました。箕輪さんとしては「箕輪が言うんだったら、それでいいよ」と見城さんだったら仰るはずなので、現場同士でしっかりやった方がいいだろうと。私たちもそう思っていたのですが、そうじゃなかった。
いくら現場が「見城さんに直接言わなくてもいい」と言っても、私たちは幻冬舎さんに非常にお世話になってきて、幻冬舎さんがいなければBookは立ち上がらなかったわけですから、そのお礼も含めて直接伺うべきだったというのは、大変反省しております。経営者としてもっと誠実な対応をすべきだったというのが、大きな反省点です。
そこで私も日本に戻ってきまして、見城さんのもとに謝罪と説明のためにお伺いしまして、今ではご理解いただけたと思っております。今後に関しまして詳細は4月に発表いたしますが、NewsPicksとして、社内に出版部門をつくり、独自レーベルをつくっていきます。これに並行して、幻冬舎さんとのNewsPicks Bookも提供し続けます。こちらについては新レーベルの編集長が4月に就任しますので、そこで詳しくご説明できればと思っております。

Q:Quartzが取材した米国テック企業のニュースを日本語でも読みたい

Q:米国のテック企業の決算説明会をQuartzの優秀な記者に取材していただいて、日本語でリポートしてほしいです。米国株投資家にも日本の企業経営者にも喜ばれるサービスになると思います。
梅田:
そうですね、仰るとおり米国ではUberやSlack、Pinterest、Zoomといったテック企業の大きなIPOが続きます。今日もちょうどQuartz編集長のKevinから今後の計画を聞いたのですが、テーマの1つとして、IPOのカバーを増やしていくと言っていました。これは日本の皆様にもお届けできたらなと思っています。
もう1つは、日本のNewsPicks編集部とQuartz編集部の連携。これはもっと増やしていきたいと思っています。例えばQuartzが米国トップ企業へのCEOインタビューをやっていきたいと思っているのですが、これをNewsPicksとの共同インタビューとしてできないかと考えています。最初の企画段階から入って、日米同時に配信するというのは、今後も積極的にやっていきたいと思っております。

Q:負債リスクへの考え方について

Q:長短借入金と社債の総額が96億円、これに対してのれんが92億円、前期のEBITDAが12億円弱なので、Quartz事業等が不振になるシナリオでは、かなり重い負債と思われます。
梅田:
これに関してはCFOの千葉から、このリスクをどう捉えているのか回答させていただきます。
千葉:
まず96億円の負債のうち、Quartz買収した際にみずほ銀行さんからお借りしたブリッジローンが55億円で、これがかなりの割合を占めております。こちらにどう対応するかということが、このリスクに対処するための1つの鍵だと理解しています。
その上で、Quartz買収時に発表いたしました、新株予約権型の資金調達額が65億円あります。こちらは株価が3275円を上回らなければ行使されないものですが、この株価に達したら65億円が調達されるというものです。55億円の負債の反対側に、65億円の調達も控えているというのが、今の負債の状況になります。
ただ株価3275円をどう達成するかはコントローラブルではありませんので、何よりもまず、この55億円を返済するために、追加借入や別の資金調達の方法をさまざまな金融機関と協議している最中です。
この負債リスクにつきましては皆様にご心配いただかなくても済むように、業績でしっかりと結果を出して、順調であるということをIRでも示していきたいと考えています。
梅田:
補足させていただきますと、私たちはSPEEDAやNewsPicksでストックビジネスを提供しておりまして、強固なキャッシュフローを生んでいます。次の日に売上が急に落ちるということはありませんので、まず強いキャッシュを生む事業を持っているということが大事かと思っております。
ですので仮にQuartzなど新規事業で不振になることがあれば、まず止血をすることが最優先です。止血さえすれば、既存事業が生み出すキャッシュをもって借入を返済していくことができます。このシナリオを持っているということは、補足させていただければと思います。

Q:人材採用について

Q:人材採用は順調ですか?どんなルートで集まってくるんでしょう?
梅田:
次は人材についてのご質問ですね。こちらはとても重要ですね。
今年も採用は強化する方針でして、基本的に、採用責任は各事業が持つという考え方をしています。結局良い人材が事業に直結しますので、人事部が中央で全てコントロールするのではなく、事業責任者が見るのが一番だと考えております。
採用については松井が一番横断的に見ていますので、まずは松井から回答させていただきます。
松井:
今年もかなりの大量採用を予定しており、目標に向かって各事業が邁進しております。ご存知の通り、かなり売り手市場のため企業としては苦しい立場ではありますが、おかげさまで我々のミッション・バリューに共感いただき、優秀なメンバーが入社してくれています。
一方で、採用が遅れているところもないわけではありません。先ほど、これからグローバル展開をしていくと申し上げました。それに伴うグローバル人材の採用、さらに経営幹部層の採用は非常に重要だと考えておりますので、引き続き頑張って参ります。全社的にはかなり良い人材を採用できており、この4月も新卒や経営幹部含め、沢山の方が実際に入社してくれることになっています。
(追記:4/1に新体制、新メンバーについて発表いたしました)

Q:Quartz事業でマーケティングのアクセルを踏むタイミングは

Q:米国事業ではマーケティングのアクセルを踏むかを見極め中という説明がございましたが、具体的なKPIのような指標があれば教えてください。
梅田:
最終的には、日本と同じく有料会員数をKPIに置きます。Quartzの広告事業はすでにビジネスとして成り立っていますので、いかに有料会員を育てるのかが非常に大切になります。
有料会員を獲得するために必要な最初のステップは、無料会員の強い基盤を持つこと。そして、その無料会員が有料会員に変化するための、強いコンテンツが充分にできていることがポイントになります。
1つ目については、Quartzへのエンゲージメントを見ています。具体的にはユーザーの継続率と訪問数ですね。
2つ目に関しては、無料会員から有料会員への転換コンバージョン率を見ています。コンバージョン率が一定以上になれば、広告を踏んでもそれに見合うだけの有料会員が増えると言えるからです。これは今年1月から始めて、成果を見極めているところです。

Q:編集者、記者採用について

Q:レベルの高い編集者や記者を確保するために、具体的にどのようなことをやっていますか?採用や教育などの観点で。
梅田:
こちらはNewsPicksの坂本から回答させていただきます。
坂本:
やはり、優秀な記者や編集者の採用は非常に重要です。既存メンバーからの紹介や、業界内での評判が高い方だったり、エッジの立った記事を書かれた方がいれば声がけするなど、ありとあらゆる方法をとっています。
とはいえ、それだけでは優秀な人材の確保が限られてしまいます。今は若手の育成にも注力し始めていまして、ベテランの下に若手を付け、徒弟制度のような形での育成をスタートしています。

Q:ユーザベース成長の秘訣は

Q:ずばり、ユーザベースがここまで急成長している秘訣はなんですか
梅田:
こちらは稲垣からお答えします。
稲垣:
前半の株主総会で申し上げた内容と重なりますが、やはりミッションとバリューだと思います。この2つを強固に共有したチームがあり、そのチームでサービス提供できているからだと思っています。
私は現在、ユーザベース全体の代表取締役であると同時にSPEEDA事業のCEOを兼任しています。普段SPEEDAのことをメインに考えていますが、それ以外の事業は今ここにいるメンバーに信頼して任せることができています。私たちは「チーム経営」と呼んでいます。
チーム経営で大切なのは、お互いに関わり合わない聖域を作ることではありません。例えば梅田と私でも、それぞれに強み・弱みがあります。成長のためにお互いの強みを活かし、更に弱みを互いにサポートし合うことが非常に重要です。ミッション・バリューの価値観を共有しながら、こういった形でチーム経営の輪を広げていることが、私たちの強みになっていると捉えています。
今、日本ではチーム経営を実現できていますが、今後これを日本だけでなくグローバルでも実現していけるかがポイントになると思います。Quartzをはじめ、今後さらに海外展開を進めていくためには、グローバルの役員やメンバーたちとも、同じような強度でチーム経営をしていくことが次のテーマだと思っています。それを実現することができれば、グローバルでも成長を描いていけると信じています。

Q:SPEEDAの競合優位性は

Q:SPEEDA事業は、Bloombergやビューロー・ヴァン・ダイクなどの老舗経済情報サービスと競合しているわけですが、このような老舗経済情報会社に対するSPEEDAの優位性、勝算はどのようにお考えでしょうか?
稲垣:
先ほどご説明をした「3C」の構造化が一番の差別化ポイントです。今も個々のデータでみると私たちよりデータ量の多いプラットフォーマーは存在しますが、これだけ情報を整理し、3C構造で体系化して検索性の高いサービス提供している会社は他にはないと自負しています。
もう1つ、経済情報にアナリストなど人の知見という付加価値を与え、それを技術でスケールさせるチームがあることも差別化ポイントだと考えています。創業当時、梅田がビジネスサイドを、私が技術サイドを見ていました。SPEEDAの想定顧客の出身であるビジネスサイドのメンバーが本当にユーザーが欲しいものを考え、その横にエンジニアのメンバーがいて形にする。それぞれの視点からモノづくりを考え、ボタンの色1つに3日くらいかけて喧嘩することもありました。――それくらいの強度でモノづくりをし続けることがさらなる進化を産んでいきます。
今後気にしなければいけないのは、ゲームチェンジをしかけてくるようなベンチャーですね。今までにない技術力や知見などで、いろいろなことをやってくる会社が必ず出てくると思うので、そこでも負けないように私たちも非連続に進化できる施策を打っていくことが本質的に重要になると考えています。
(会場から挙手にて質問)
質問者1:
SPEEDA事業に関して追加で質問させていただきます。
株主総会で代表から「経済情報で、世界を変える」というミッションのお話がありました。経済情報の定義はありますか?
SPEEDA事業もしくはSPEEDAの中には、知財の中でも特に重視される特許が入っていないと思います。今は米中の経済戦争、冷戦のまさに戦時下にありますが、その中でも重要視されている知財に関して、まず経済情報に含まれるかどうか。もし含まれるとしたら、それがコンテンツとして導入される予定もしくは今後の計画はありますか?
稲垣:
ありがとうございます。まず、経済情報には含まれると考えています。これまでは優先順位の関係で、中国や他国のデータを増やすことに注力してきましたが、おっしゃる通り、知財の重要度はかなり上がってきていると認識しています。ですので、次の1年の中で何らかの形でみなさんにお届けできるよう、開発を進めていきます。進捗を含め、どこかのタイミングでお伝えできればと思います。
梅田:
経済情報の定義について補足します。我々のユーザーはビジネスパーソンです。彼らがビジネス上の意思決定をする際に必要な情報は、意思決定の大小に関わらず、全て経済情報と定義しております。非常に広い定義だと捉えていただければと思います。

Q:中国事業における検閲について

Q:中国は検閲はどんな感じですか
梅田:
これは稲垣からお答えします。
稲垣:
ここは正直、ドキドキしている部分ではあります。
まず、メディアとプラットフォームでは、圧倒的にメディアのほうが検閲は厳しい状態です。ですので、私たちの事業でも誤解が無いようにそれぞれが別の事業であること、メディアとプラットフォームの間にはしっかりとファイアウォールがあることを明確に伝えていくことが重要です。
それを中国現地の方々にしっかり理解いただくために、現地のネットワークを作っていきます。政府の方々ともコミュニケーションを図り、我々のプラットフォームは中国にとってセーフティだということも伝えていかなければと考えています。そのためには、現地でそういったコミュニケーションが取れる人材の採用が非常に重要です。そもそも現地のトップには現地の人材が立つべきだとも考えているので、その採用も積極的に動いている状況です。

Q:NewsPicksのコメント欄でディスカッションしたい

Q:NPのコメントにコメントができるようになればディスカッションにつながったり、新たなコミュニティが生まれる可能性があると思うのですが、そういったサービスは実現できますか?
坂本:
ありがとうございます。NewsPicksのコメント欄に関して、まず大前提としてポジティブな場にしたいということを一番大事にしています。コメントする人が何か嫌な気持ちになってしまうと、このサービスというのは衰退してしまうと考えているので、ポジティブな場を作っていく。それを優先すると、コメントにコメントを返せる機能を単純に付けてしまうと、言い合いになってしまうことも起こりうるため、今すぐに機能を実装するつもりはありません。
ただ、コメントし合うことでディスカッションが生まれ、より良い情報が生まれる可能性も充分認識しております。それに関しては、コメント欄ではなく、よりクローズドなコミュニティを作っていく形を検討しています。例えば、何らか共通点のある方々のコミュニティを作り、その中ではコメントのやり取りができるようなものや、編集部でテーマを決めて、そのテーマを読者参加型で一緒に作っていくようなことを検討しています。
コミュニティによって対話が生まれ、そこからより良い情報を作っていく。NewsPicksの読者の方々は、ビジネスの最前線で活躍されている方が非常に多いので、彼らのコメントを活用したコンテンツを作ることにもチャレンジしていければと考えています。
梅田:
コメント欄はNewsPicksの最も重要な機能で、この5年間で試行錯誤しながら作ってきました。1つの法則として、一度でも顔を合わせた人同士では、コメント欄で喧嘩が起きないというものがあります。NewsPicksアカデミアでは定期的にイベントを開催しており、そこで顔を合わせておくと、その後はNewsPicksのコメント欄が荒れません。アカデミアからコミュニティアプリを作っていくのも方向性の1つとしてあるかなと考えています。

Q:5年、10年後の時価総額と、ユーザベースが描く未来について

Q:5年、10年後の時価総額はどのぐらいをイメージしてますか?そして、ユーザベースのサービスによってどのような世界になっているのでしょうか?
梅田:
これは私から回答させていただきます。
「時価総額をいくらにします」と私たちから申し上げるのは少し違和感があるというのが、率直な気持ちです。時価総額は、株式市場で評価いただくものです。我々がお約束できるのは、売上と利益の2つだけ。この2つにしっかりコミットして、どのような夢を描いているかを株主の皆様に共有し、その夢に乗っていただく事だと考えています。あくまでも時価総額はその結果、後から付いてくるものだと考えています。
また、私たちは株主の皆様との信頼関係が大切だと考えており、そのためには言葉より有言実行の積み重ねで示すことが重要だと考えています。それが業績予想であり、業績予想を達成できているかどうか。この積み重ねでしかないと思います。株主の皆様とのコミュニケーションでは、出来る限りオープンに状況を開示していくことを大事にしたいと考えています。
その前提で、今後5〜10年のビジョンをお話しますと、私たちのミッションである「経済情報で、世界を変える」に確実に近づいている状態を実現します。このミッションが指すのは、ビジネスパーソンの日々の意思決定を支えることです。例えば、転職しようという意思決定もあれば、企業買収のような大きな意思決定もあります。その意思決定をするのに必要な情報の土台になっていること。
人々の意思決定と行動の集積が、日本を動かしています。私たちのサービスをグローバルに展開し、世界中のビジネスパーソンの意思決定を支えられるようになると、その集積が世界を動かしていることになります。それが「経済情報で、世界を変える」というミッションにつながるのです。
今はまだそこから遠くにおりますが、5年後、10年後には確実に近づいていたいと思います。5年後、10年後には、世界中で不可欠な存在になっていなければと考えております。

Q:「Apple News+」による影響は

Q:Appleがニュース事業に参入し、NewsPicksにとっては驚異になると思うのですが……。どうお考えですか?
梅田:
「Apple News+」の当初の提供範囲は米国とカナダだけですので、私から回答させていただきます。
日本ではサービスを提供していませんが、Appleは「Apple News」というサービスを以前から提供しています。日本のSmartNewsやYahoo!ニュース、LINEニュースのようなイメージで、さまざまなコンテンツをキュレーションして、それをワンストップで届けるサービスです。Apple Newsは以前からあるものの、米国市場ではそこまで決定的なサービスとはなっていませんでした。
「Apple News+」で新しくなったのは、約10$(米国で9.99$)でThe Wall Street JournalとLos Angeles Timesなどの記事が読み放題になるというもの。約10$の中で読める主要ニュースメディアはその2つしか入らず、あとはForbesなどの雑誌系の記事も読み放題です。サービスの根源的な価値は以前とあまり変えておらず、価格体系が変更になった(以前は有料メディアを読むためには全てを個別に購読する必要があった)形なので、Quartzとは提供している価値が違うかなと考えております。
例えばWSJなどのメディア側がプッシュ通知を送ると、自動的にApple Newsからもプッシュ通知が来るような仕組みになっています。Apple Newsにエディターがいて、ユーザーに最適化してニュースを届けているわけではありません。私のApple Newsの通知も、さまざまなメディアから同じようなニュースが幾つも届いています。
ただ、この10$のサブスクリプションは、経済ニュースに支払うポケットを取り合うことは間違いありません。油断をせず、彼らが競合になることを認識してサービスを提供していきたいと思います。

Q:記事ごとに課金できるようにしてほしい

Q:NewsPicksのファンから株主になった者です。有料会員以外の方々にも良い記事は読んでほしいと切に願います。1記事100円とか、ZOZOの送料みたいに値段を決めさせてみるのは実現可能なのでしょうか。
梅田:
NewsPicksファンから株主になっていただいたとのことで、ありがとうございます。
我々はSPEEDAでもFORCASでも、サブスクリプション型にこだわり、大切にしています。サブスクリプション型ビジネスについては佐久間が並々ならぬ愛情がありますので(会場笑)、佐久間からご説明します。
佐久間:
ご説明します。簡単に言うと、ユーザーの方々と「嘘のない関係」が作れるのが最大の理由です。
そのことにより、以下の3つが矛盾しなくなります。3つというのは、①売上などのPL的な成果、②サービスを提供する側のHAPPY、③ユーザーの方々にとってのリアルな価値です。
サブスクリプションモデルでは、この3つが矛盾しないので長期的には大きな成果につながっていきます。米国のサブスクリプションエコノミーインデックス(Zuora社が提供する、サブスクリプション事業を営む米国企業の売上を指数化したもの)を参照すると、他業態と比較して圧倒的な数値的成果も出ています。
梅田:
記事ごとの課金につきましては、例えば1記事100円にしてしまうと、1記事だけ良いものを作ればそれでいい、となってしまう可能性があります。その記事を読んだ方が満足いただけなかったとしても、「(100円を)払ってくれたからいいや」となってしまうかもしれません。
毎月一定額をいただくことは、一回限りではなく、必ず毎回、そして継続的にユーザーの皆さんに満足して頂けなければならないということです。これは佐久間が申し上げた、「嘘のない関係」を築くこととイコールです。毎月1500円を払い続けていただけるかは、利用者と良い関係をつくれるか否かにつながっています。だから私たちは、サブスクリプションモデルを続けていきたいと考えているのです。
司会:
他にもたくさんご質問いただいておりますが、時間になりましたのでここで終了とさせていただきます。皆さま、本日は遅い時間までどうもありがとうございました。