企業の組織変革を支援するコンサルティング会社「リンクアンドモチベーション」取締役、国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」取締役副社長を務める、麻野耕司氏。
チームづくりのプロフェッショナルとして活躍し、2019年4月3日には、著書『THE TEAM 〜5つの法則〜(NewsPicksBook)』の発売を予定している。
史上最年少(当時)でのリンクアンドモチベーション執行役員就任をはじめ、輝かしいキャリアを誇る麻野氏は、ビジネスパーソンとして成長するためにどのような形でお金を使ってきたのだろうか。
「熱くビジョンを語るくせに、自分がそこに賭けてないのは格好わるいと思った」
――まずは、新卒で社会人になられてから、どのようにお金を使ってきたのか教えてください。
麻野 給料のほとんどは、持株会制度を通じて自社株に投資していました。リーマンショックの影響で業績が伸び悩む時期もありましたが、ずっと買い続けました。分散投資などまったく考えていなかったので、もし会社がダメになったら、僕の資産もまるごとなくなっていたかもしれないですね。
――それくらい会社の成長を見込まれていたということでしょうか?
麻野 営業や人事の仕事を通して、会社の未来を熱く語り、人に人生を賭けてもらっているのに、自分が会社に投資していないのは格好わるいなと思ったんです。自社への投資以外は、タクシー代に消えていきました。少しでも長く仕事をしたいと思っていたので。
――仕事で目標を達成した自分へのごほうびとしてお金を使うようなことはなかったのでしょうか……?
麻野 僕は時計も車も買わない、旅行も行かないといった感じで、一般的にごほうびと言われるようなものにお金を使うことはないんですよね。仕事を成功させたら、また別のおもしろい仕事が回ってくるのが自分にとってのプレゼントみたいなもので。ただ、20代から30代前半にかけて、後輩との飲み代にお金を使うことはありましたね。
――それは今後の仕事につなげるためですか?
麻野 いえいえ。事業目標を成し遂げた後に、仕事仲間たちと語らいながらお酒を飲むって最高の幸せじゃないですか。僕は収入を上げたり、なにかを買ったりするために働くという気持ちはあまりないんです。それよりも仲間と一緒にいい時間を過ごしたい。そのために仕事をしているといっても過言ではありません。
去年、社員旅行で沖縄に行ったんですが、最終日の夜、突然宴会場の電気が消えて、僕に向けたメッセージムービーが流れ始めて。僕が取締役に就任して部門を離れることが決まっていたので、メンバーがサプライズを用意してくれたんです。
――いい話……!
麻野 それを見たとき、号泣してしまいまして(笑)。そのメッセージムービーは、僕にとって何千万円以上の価値があると、綺麗事ではなく本気で思いました。仕事を通じてできた仲間とのつながりや絆は財産ですね。嘘かと思うかもしれないんですけど、真剣に思ってるんですよ。
「ギリギリ入社」を挽回するのに必死だった20代の頃
――昔から物事には、のめり込むタイプだったんですか?
麻野 そうですね。僕はとにかくどんくさい人間なので、なにか物事を始めるとき、最初は必ず失敗するんです。その遅れを取り戻すために、人より熱中してしまうところがあるのかもしれません。
例えば、僕は中学校時代バレーボール部だったのですが、あまりにも運動神経が悪くて、3年間ずっと補欠でした。引退前、監督の好意でピンチサーバーとして試合に出られたものの、打ったボールがネットにすら届かず(笑)。
――3年間の集大成が……。
麻野 このままだと悔しいなと思い、高校では夢中になってバレーボールに取り組みました。結果的にレギュラーの座を掴み取って、大会で優勝も経験できたんです。「スタートダッシュで出遅れて、追い込んで成果を出す」までの流れはいつもセットで、他にも同じような経験がありますね。
実は、リンクアンドモチベーションに新卒で入社したときも、選考の評価は同期の中で一番低かったんですよ。
――それはとても意外です。
麻野 最終面接で思うように上手く話せなかったので、面接の最後に、意を決して僕の評価について尋ねてみたんです。そうしたら、社長が苦い顔をしながら「自分でどう思うの?」って聞き返してきて。だから、「今日は上手く話せませんでしたが、一生懸命仕事をする気持ちはあります」と答えました。
――それに対して、どんな言葉が返ってきたのでしょう。
麻野 「きみはかなり苦労すると思うけど、それでも頑張れるか?」って。当然「頑張ります!」と答え、なんとか内定が決まったんですが、最後に会長や社長と握手をするときまで2人は迷っている様子でしたね。「本当に頑張れる?」って何度も確認されたほどで(笑)。ギリギリで入社できたんです。そうした経緯もあって、入社してからは遅れを挽回するために必死でした。
ビジネスパーソンの成長には「座学」より「目の前の仕事」
――そうした努力をする日々の中で、例えば本などの自己投資にお金を使うことはありましたか?
麻野 読書や勉強という意味では、そこに投資してきたという意識はないですね。ビジネスパーソンとして成長するには、黙々と机で本と向き合うより、まずは目の前にある生の仕事に力を入れるべきだと思っています。
――それはなぜでしょう?
麻野 僕がよく話す例え話なんですが、イスラエルに接している「死海」ってありますよね。塩分濃度が高く、水に入ると体がプカプカ浮くという。ふつう湖には、水が流れ込む川と流れ出る川両方があるのですが、「死海」はすごく低地にあるので、流れ出る方の川がないんです。つまり出口がない。だから循環できず、どんどん水が死んでいくんですよ。
人間も同じです。どんなに知識を頭に入れても、使う場面がなければ意味がない。なんでも手当たり次第に手を伸ばすのではなく、必要になった場合に初めてインプットすること。まずは目の前の仕事です。
――知識を増やすことを目的にしてはダメだということですね。
麻野 自分にとってどんなものがあれば仕事がしやすいかを考えてみるといいですね。人によってはタクシーかもしれないし、本かもしれません。大事なのは出口を見据えていること。自覚的であること。お金を使うのは、そのあとでいいと思います。あ、でも『THE TEAM』はとても役に立つ本なので是非買ってくださいね(笑)。
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