自立、スピード、グローバル。欲しいものは小さなモノ創り企業にあった

2019/3/29
新天地に飛び込んだ時に「入社前と入社後のギャップ」を感じたことが一度はあるだろう。聞いていた、イメージしていた理想とは異なる現実に我慢ができず移籍したこともあるかもしれない。

東京・立川に本社を置く従業員120人程度の製造業、メトロール。採用難の今、大手企業から移籍したり、高学歴の新卒者が入社する動きがある。『小さなモノ創り企業』になぜ優秀な人材が集まるのか。

上場している大手製造業からの移籍者、難関国立校から今年4月に入社する新卒者の声をもとに、優秀人材を引き寄せる「ティール組織」、進化する中小企業文化の魅力に迫る。
大手企業ゆえの業務プロセスに違和感
──藤村さんは、グローバルで高いシェアを持つ大手メーカーからメトロールに移籍しました。
藤村 そうですね、新卒で上場している大手空調機メーカーに入社し3年半勤めました。
私が就職活動で重視していたのは大きく2つで、1つは世界を舞台にビジネスが展開できるグローバルカンパニーであること。2つ目は迅速な意思決定でプロジェクトを進め、さまざまな役割を経験できるベンチャースピリッツを持っていることでした。
就活している中で前職の企業と出会い、グローバル大手でありながらもベンチャーのようなカルチャーを感じさせることがあったので、就職を決めました。
北海道大学工学部環境社会工学科卒業。京都大学経営管理大学院修了後、大手製造業に入社。経営企画部門で業務プロセス改善プランの立案・実行に携わる。2018年、メトロールに移り、海外マーケットの開拓に携わる。
藤村 生産部門の経営企画部に配属され、開発・生産プロセスの改善プランやコストダウン戦略立案を担当していました。
──経営企画は、「花形ポジション」ですよね。
藤村 そう言われますよね。確かに、立案したプランが開発・生産全体を改変するような可能性もありますので、だいご味はありました。
ただ、全体を大きく変えるようなプロジェクトに携わっていても、組織が大きいと当たり前かもしれませんが、1つのプロジェクトはいくつものブロックに分割され、任される仕事はほんの一部でしかありません。
そして、一つひとつのタスクを進めていくための工程として、社内関係者に説明するための打ち合わせ調整と、説明資料の作成が多い。
対価をいただくお客様に向けてダイレクトに仕事がしたいと思っていた私にとっては、どこか心にもやもやを抱えたまま勤めていたんです。
──そんな中で、メトロールを知ったわけですね。
藤村 転職をはっきりと決めていたわけではなくて、ただ、自分のやりたいことができる会社があればいいなという気持ちで、さまざまな企業の動向をニュースサイトで見ていた時に、NewsPicksでメトロールの社員の働きぶりを書いた記事を読んだんです。
その記事では、入社して間もない20代前半の社員が海外ビジネス未経験にもかかわらず、たった1人で他国に行き、営業活動している様子が描かれていました。
出張計画は自分で立て、どんなお客様に会いに行くのか、提案内容も自分で決めている。会社からはクラウドにひも付いたコーポレートカードを支給され、経費申請の必要なく個人の裁量に委ねられている。
そんな働きぶりに衝撃を受けて、話を聞きに行き、年齢や役職に関係ないフラットな組織、若くても自律している社員、社員たちを信じて裁量を与えている社長の考えに共感し、入社を決めました。
新卒・未経験で「即、海外行き」
海外出張計画の立案者と決裁者は「自分」
──メトロールに入社して1年、この間に経験したことを教えてください。
藤村 元々グローバルで活躍したいという思いがあったので、その希望を伝えて海外営業担当として入社しました。前職では主に改善計画の立案によるコスト削減が仕事だったので、売り上げを伸ばす営業は正反対の職種でした。つまり、未経験です。
右も左も分かりませんから、最初の3カ月は見積もり作成や出荷業務など、社内の仕事を一通り経験させてもらい、社内全体の活動を把握し、その後、国内営業の同行に携わりました。
そして、半年経った頃に、数カ月、海外の展示会や先輩の営業に同行するなどして、独り立ちしました。今では、毎月の約半分は東南アジアの国々に1人で出向いている状況です。
──出張のプランは、会社で決まっているわけですか。
藤村 行く場所も回数も、タイミングも自分で決めます。分からないときには相談すれば教えてもらえますが、指示が下りてくるわけではなく、自主的に全部回していきます。自分で展示会に申し込み、航空券はもちろん現地の宿や車を手配し、ブースのセッティングを行い、顧客と交渉して、契約します。
大手なら、まずは上司に相談しないといけないですし、それぞれの手配をしてくれる人がいますよね。でも私には、何でも自分でやる今の動き方がとても合っています。
海外イベントで商談する藤村さん。英語もそれほど得意ではないようだが、入社前の短期留学と実践でレベルを上げている
──思うがままに行動して、その報告は行っているのでしょうか。
藤村 営業会議が毎月あり、どのような案件があったかはメンバーと情報共有します。だからといって、報告のために特別な資料を作るわけではありません。ちゃんとビジネスチャンスの本質が伝われば報告の形は問われません。
「間接業務担当を設けない、ムダな資料を作らない、ムダな社内調整をしない、会議では敬語禁止」という方針は記事で知っていましたが、それが本当に実践されていました。
前職で日常的に使っていたエクセルやパワーポイントのスキルが落ちたと感じるほどです(笑)。その分の時間を、考えることやいろんな人に会う外向きの仕事をするために使えています。
徹底的にムダを排除する背景には、そうしないと業績が伸びている現状に対応できない事情もあると思います。
社長は精鋭でコンパクトな組織がベストだと考えていて、そのために小さな製造業には珍しくITの活用にも積極的です。
スマホを積極的に活用しないような年配の社員でも、スマホどころか「Apple Watch」を駆使して仕事をしているし、社員には最新のiPhoneやPCを支給してクラウドサービスも用意。新しいものに触れる機会を提供して刺激を感じてもらおうという意志を感じますし、効率化を進めようという考えが根付いているとも思えます。
採用過程で垣間見た「ティール」
──本郷さんは、この春新卒で入社予定ですが、就職活動ではどのような企業に応募していたのでしょうか。
本郷 業種や企業規模、知名度はまったく気にしていなくて、社会貢献や環境問題に興味があり、また国際学部で学んでいましたので、グローバルで活躍できる企業も対象に、関連する企業を中心にエントリーシートを作成し面接に行くといった極めて普通の就活をしていました。
でも、それを続けていくうちに、違和感を覚えるようになりました。
筑波大学社会・国際学群国際総合類を2019年3月に卒業。業界や企業規模を問わず、グローバルで活躍できる環境を求めて就職活動する中で、メトロールに関心をいただき採用試験を受け合格後、即決。同年4月にメトロール入社予定。
──違和感、というのは?
本郷 エントリーシートを書いている時に、ふと、このエントリーシートで私を判断されるってどうなんだろう?って疑問に思ってしまって。不思議ですよね。
ちょっとした違和感を感じながら就活をしている時に、メトロールの記事に出会い、ティール組織のような仕組みを運営している点にすごく興味を持ち、一次選考も兼ねた説明会があったので、足を運んだんです。
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──どのような選考があったのか、教えてもらえますか。
本郷 個室に5人が集められ、ある企業の社長から持ちかけられた経営の問題に対して、コンサルタントになったつもりで解決策を提案するというものです。
面白かったのは、指示がそれだけだったこと。「話し合ってください」で終わり。最後にプレゼンをするのかどうかも分かりません。そこで社長に会う前の資料作成をゴールに設定し、担当を決めて話し合いました。
二次選考は、異動の直前に中国出張を言い渡される設定です。異動日には日本にいないので、前任者から渡された引き継ぎ資料を見ながら、新しい部署のメンバーに指示を残していくというものです。
いずれの選考でも、どこを評価されているのか正確には分かりませんが、少なくともエントリーシートでは分からないリアルな「人」を見てくれているはずだろうと感じてうれしかったですね。
サークル運営などを通して、「個」を大事にしないと今後の社会で生き残れないという実感があったので、個、すなわち人を大事にしてくれる会社に入りたいと思っていました。
──それが入社の決め手になったわけですね。
本郷 それに加えて、選考日のうちに結果連絡があったのも理由です。記事には自律的なメンバーによって進化する「ティール組織」であり、意思決定のスピードが速いと書かれていたのですが、それが本当なのだという一面を垣間見ました。よほど軸が決まっていて自走する組織でないとできないはずの判断だと思いますので。
手探りで自分の型を作りあげる楽しさ
──本郷さんは入社を決めた後、インターンを経験しています。
本郷 販売促進を担当したのですが、ポスターやWebサイトの作成、展示会の設営など、かなり多岐にわたる役割が求められました。やるべきことに360度囲まれているなかで、今は少しずつでも、これが一日の仕事だったら限られた時間でどのように働けばいいのかと想像しています。
自分の型を試行錯誤で作っていくしかなさそうなので、苦労はすると思います(笑)。ただ、自分で考えて形にしていくことこそが、自分を成長させると思っているので、不安と同時にやりがいもあると期待しています。
──まったく指示がない状況から、藤村さんはどのように仕事を進めましたか。
藤村 私の場合は上司や先輩の行動を参考にしつつ、自分の希望と合わせて判断し手探りで進めてきました。本郷さんが感じている試行錯誤ですね。それを楽しめるか苦しいと感じるかで適性が分かると思います。
自分で動かないと何も始まらないので、指示待ちでは非常に苦しくなると思います。与えられた仕事を進めたい人には向きません。質問すれば答えてくれるので、そこは安心して「やりたい」「やっていくべきだ」を考え出せる人なら向いています。
本郷 職場のメンバーは、ちょっとしたことで声をかけたときも、時間がないのに自分の仕事は置いておいて、すぐ話を聞いてくれる。その心の余裕はすごいなって感じます。
藤村 メーカーにありがちなのが、営業と技術の距離が離れていて意思決定がかみ合わない状況です。例えば営業は多くの製品で売り上げを伸ばしたいと考え、一方で技術はラインアップを絞って生産効率を上げたいから壁ができやすいわけです。
私も以前は営業と技術者が数駅離れているという中で仕事をしていましたが、今は各部門のメンバーがすぐ隣にいるので、声を掛けたらすぐに打ち合わせができます。スピードが全然違うので、意思疎通もしやすいし動きやすいです。
──いいことばかり聞いてきましたが、これだけマルチスキルで飛び回っていたら激務では。不満はないですか。
藤村 自由に有給も取れるし、休日もあるし、長時間残業ということもないんです……。ただ、海外出張はどうしても移動が多いので、休日のうちに移動を始めないといけない日もありますね。これも指示はないので、最近は帰国を夜行便にして移動の負担を減らしています。
──5年後、10年後にどうなっていたいか、理想の姿を教えてください。
藤村 ASEAN担当でスキルを積んだら、いずれは欧米も担当したいですね。それから、製造業にはIoTも入ってきますから、営業ではありますがITと絡めた仕事を創っていきたいと考えています。
本郷 私の周りでは、製造業よりも商社や広告などに華を感じている若い人が多いようです。日本の製造業 Made in Japanが再びフィーチャーされるためには、こんな働き方があって、こんなに楽しいものだという業界にしていく必要があると思うんです。
製造業の多くは中小規模の会社です。メトロールの組織をブラッシュアップしてまねしたくなるモデルケースにできれば、それは大きな社会貢献です。その状態を目指して、まずは自分の働き方の軸を作り、胸を張って「仕事が好き」と言えるようになりたいですね。
(取材・編集:木村剛士 構成:加藤学宏 撮影:森カズシゲ デザイン:國弘朋佳)