【石角友愛】AIで努力不足は補えない、シリコンバレー流英語力

2019/4/1
シリコンバレーでAIベンチャーを立ち上げた石角友愛氏。16歳で単身アメリカに渡った時はたどたどしい英語しか話せなかったところからアメリカでビジネスを展開できるほどの語学力を身につけた。便利な翻訳ツールに頼りすぎる風潮への危機感を語る。
石角友愛(いしずみ・ともえ)/パロアルトインサイト CEO
2010年にハーバードビ ジネススクールにて MBAを取得後、シリコンバレーの Google 本社に勤務。その後、HRテックや流通 AI ベンチャーを経て、パロアルトインサイトを起業。新刊『いまこそ知りたい AIビジネス』。シリコンバレー在住。
絶賛発売中の「NewsPicks Magazine」第4号では、「ニューエリートの英語」を約100ページにわたり大特集しています。

英語の努力不足はAIでは補えない

「AIがすぐに何とかしてくれる。英語なんて手段にすぎないから時間と労力をかけるよりも、もうちょっと自分らしさを磨いた方がいい」という議論を最近よく聞きます。
正直、「AIが何とかしてくれる」というその形容の仕方自体、危険な思想だと私は思っています。
何だかわからないけれどAIというふわふわした万能なものが、自分の長年のコンプレックスで、努力しなきゃいけないと思っていた英語に対する悩みを解決してくれる都合のよいソリューションであると、努力を放棄する理由づけになってしまっているのではないでしょうか。
携帯型の翻訳機や翻訳アプリは、旅行先で「ルーブル美術館にどうやって行くの?」というようなニーズには便利だと思います。
しかし、Googleで働いていた時もシリコンバレーでも、多国籍のメンバーが集まっている会議で誰もそんなものは使いません。
特にブレインストーミングや付箋を使ったセッションをしている時に1人でもああいったものを使っている人がいたら、会話の流れが止まるので違和感が生まれます。
AI開発のときと同じで、最終的にどう使うのかという超具体的なユースケースやユーザーストーリーを理解しないままに、AIが自分の悩みを助けてくれるらしい、という甘い期待を感じます。AI万能神への信仰です。
翻訳機を使いこなせる人間になるよりも、そこでインパクトを残すことができるか、その会議に参加している意味をちゃんと他者に伝えることができるかの方がよっぽど大事だと私は実感してきました。
Google本社で働いている時は、英語が母国語じゃない人が当たり前にいる環境でした。そういう人たちとミーティングや仕事をするには、小手先の英語力では通用しません。
しかし、外国人でも英語で頑張っているということは評価されます。ハンデがあってもアメリカ本社で仕事をするに至ったという努力や情熱の証だからです。「私はこう思うからみんな聞いてほしい」と伝える姿勢が他者を動かすのです。

16歳で英語も話せず渡米

私がアメリカに留学したのは16歳の時でした。それまでは日本の高校に通っていて、英語も全然ダメでした。英会話学校に通ったこともありますが、それがブレイクスルーにはなりませんでした。
留学するために受けたTOEFLも必要最低点程度で、当初はESL(English as a second language)がある高校に通いました。
現地で入学試験を受けた時も校長先生が“Congratulations”と握手をしてくれた時に初めて自分が受かったと気づいたくらい。
朝礼の時、全校生徒の前で「新入生がいます」と紹介され、挨拶のスピーチをした時もそのエピソードをネタに笑いを取ったほど英語ができなかった(笑)。