松本零士『宇宙戦艦ヤマト』制作時に役立った幻の設計図

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• 土屋 武司

  東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授

  ・2019年03月09日

  呼び捨てを失礼します．松本零士は好きです．子供の頃，宇宙戦艦ヤマト，キャプテンハーロック，銀河鉄道999，1000年女王のアニメに嵌った世代ですので．ただ，宇宙戦艦ヤマトの原作者に関しては松本零士ではないと思っています．
  「宇宙モノ」という程度の最初の提案は西崎義展．それに異星人からの攻撃を受けて汚染された地球を救うため宇宙船が旅をするという，シナプスを考えたのはな豊田有恒（SF作家）と藤川桂介（シナリオライター）．このシナプスは「西遊記」です．乱れた国（放射能汚染の地球）を救うため，天竺（イスカンダル）に経典（コスモクリーナーB）を取りに取りに行く話．
  それを受けて「宇宙戦艦ヤマト」というタイトルと，基本用語を企画書にまとめたのが西崎義展．ただし「ヤマト」はただの名前で「戦艦大和」との関連は無い．西崎はそれをもってテレビ局に売り込む．
  そこから松本零士が登場．ヤマトのメカデザインを担当して，一気にディテールが上がった．（「「宇宙戦艦ヤマト」の真実」（豊田有恒 著） https://amzn.to/2SXB4Ja ）
  
  西崎義展は常に「ヤマト」のオープニングに名前が出てくるので子供の頃から誰かと疑問に思っていたが，「「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気」 http://amzn.to/2CavwUl で分かった．「興行師」「山師」「悪党」．破天荒で，悪いうわさがつきまとうが，それゆえに興味深い人物．覚せい剤取締法違反と銃刀法違反で逮捕され，収監されているときに，宇宙戦艦ヤマトの原作権を巡って，松本零士は裁判を起こすが敗訴．それでも松本零士はヤマトの原作にこだわっているよう．
  
  西崎義展は2010年に死亡．ヤマトの原作権は養子の西崎彰司が相続し，リメイク版にも企画プロデューサーとして参加している．一方で，松本零士の名前はどこにも出てこない．
  
  ちなみに，大和が空を飛ぶというアイデアは，「ヤマト」以前からあった
  「空中軍艦大和」 https://amzn.to/2ToBPjo ．たぶん，松本零士はそれを知っていたのでは．