【山崎万里子】100年時代を生き抜く「干されない力」

2019/3/10
新卒でユナイテッドアローズに入社後、広告宣伝部門、経営企画部門などでマネジメント経験を経て、2010年に最年少執行役員に就任。
2018年4月から人事部門主管となり、未経験の業務エリアでトップマネジメントとして部門統括の指揮を執る山崎さん。
今後のご自身のキャリア形成と時間管理の極意について話を聞いた。
※このインタビューは、「NewsPicksアカデミアゼミ」の佐々木紀彦ゼミ「実践・稼げるコンテンツの創り方」にてゼミ生が課題として実施したものです。

守りに入るリスク

山崎 書籍を執筆した当時は、パーツではないひとつのビジネス全体を預かる仕事がしたいと思っていました。45歳の今、50歳までに転職したいと思っています。転職したいという意味は、社外で通用する力、すなわち干されない力を持っていたいということです。そのように考えが変わっていったのは、「このままいったら、会社にぶら下げるだけの人間になってしまうのではないか」という危機感からです。
私は、現存する最古の創業期メンバーですから会社のことは誰よりも知っています。社員ほぼ全員が自分の後輩で、誰からも何も言われません。権限は120%持っていて、人事規程の変更提案もできます。やりたいことは何でもできる環境にいます。
一方で、私の職務経歴書はというと、社内異動の履歴のみで売りとなる明確なスキルがない。今は完全に会社の中で培ってきた社歴を資産として仕事をしているところがあり、そこに焦りがあります。いまのポジションを守らなきゃ、と守りに入るリスクを感じます。
山崎万里子/ユナイテッドアローズ執行役員
ユナイテッドアローズでブランドマーケティングや経営戦略を担当し、2016年より社名と同じ営業部門ユナイテッドアローズのマネジメント、2018年より人事担当。 2013年12月には、『仕事の不安を一つひとつツブしていくやり方』を出版している

専門性を磨く

昔と違って今後は60代でも普通に仕事をしている時代となるでしょう。一旦小休止して、勉強して強烈なインプットをするか、働く場所を変えるかをしない限り、今の貯金でパフォーマンスできる部分がなくなると思うのです。マネジメントにはまったく不安はありませんが、社外で通用するためには、専門性が足りないと感じています。
ユナイテッドアローズで私は、7〜8年に1回ジョブローテーションの対象となっています。やったことがない部署・部門長をやるというのが私のお決まりです。このような場合、その業務に10年くらい携わっているメンバーの中に、トップマネジメントとして1人で入っていく。そういったスタイルが好きです。
この4月からは人事部門に異動しましたが、採用経験ゼロ、社会保険の知識、人事経験もありません。人事は専門性が必要です。私に期待されていることは人事改革であり、専門性は求められていませんが、人事の担当執行役員として採用からリテンションまでの基本的な知識をしっかり理解しておきたいと考えています。この機会に、社外から人事の責任者のオファーが来るくらい能力を磨きたいですね。
これからの5年間で、働き方改革の追い風に乗って女性人事部執行役員として人事改革を成功させ、人事領域での実績を残すことが直近の目標です。
ユナイテッドアローズ社内の会議風景

余白を創る

時間を有効活用するため、家のことは限りなく時短を目指します。たとえば家事育児を人に頼るか、夫に頼るか。家事の手抜きとして我が家で実践していることは包丁を使いません。手でちぎるかカット野菜を購入しています。服選びは悩みません。トップス4着×ボトムス4着の組み合わせで着まわしできるものをシーズンの頭にまとめて購入しています。どれを着ても合う組み合わせにしているので、毎朝悩む必要がありません。
女性活躍の対になるのは男性の家庭進出です。男性が変わらなくてはいけない。女性が苦労するのは、家事・育児・仕事を丸抱えしているからです。育児家事の分担を減らす、そこです。ユナイテッドアローズでは、男性社員の育児休業取得を推進したいと考えています。
会社の仕事は重要度の高い仕事を行うようにしています。仕事には緊急度と重要度がありますが、人はつい緊急度が高いものに着手してしまいます。そのため、毎週週の頭に重要度の高い仕事を優先順位付けして、1週間のスケジュールの中に入れておくようにしています。緊急度の高い仕事はどんどん割り込んでくるので、半年後・1年後に求められることをあらかじめブロックし、着手する時間がゼロでないようにしています。
重要なのは、やらないことを決めることです。依頼できる仕事は人に任せ、任意出席の会議には出席しません。重要度の高いものもトップ3程度に絞る。課題リストをいかに減らし、ショートリストにするか。余白があるくくらいでちょうどいいのです。
退職する社員とのランチの光景。退職する優秀社員に門出の表彰状を作るのが山崎が大事にしていることのひとつだそう。
(執筆:松浦明美)