【ゼミ】ファイナンスのプロ・田中慎一氏と徹底議論

2019/3/3
NewsPicksアカデミアでは、春学期ゼミで「コーポレートファイナンス入門」を開講します。
担当するのは、財務戦略アドバイザーとして多数の実績を有する田中慎一氏。
「ファイナンスの世界は、ヒューマンドラマの写し鏡です」
と語る田中氏が、明るくわかりやすくファイナンスの知識をお伝えします。
本ゼミは、財務、経理担当者はもちろん、ファイナンスの知識をより深めたいビジネスパーソンにおすすめです。
ゼミのカリキュラムなど詳細はこちらから
今回はプロフェッサーを務める田中氏によるメッセージをお届けします。

ファイナンスを強みにする中東諸国

私は、2012年、ドバイ、アブダビ、バーレーンを巡る出張で現地企業の経営陣とファイナンス戦略を議論する機会に恵まれました。
交渉相手の現地企業は上場企業ではありません。ところが驚いたことに、交渉した相手の経営陣の話す内容のレベルがとても高いのです。
上場企業でもないのに自社の株主資本コストや理想的な資本構成に関する発言が当たり前のようにポンポン出てきます。
そして、ファイナンスの教科書に登場するような論点に関するやり取りへと発展していくのです。
上場企業のCFOならいざ知らず、社長がファイナンスに関する理論を熟知しています。
さらに、ひっくり返るくらいに驚いたのは、営業マネージャーまでこうした議論についてきたことです。
お世辞にも名の知れた会社ではないし、上場もしていない中東の企業の人たちです。
残念ながら、日本では上場企業のCFOでさえこのような高いレベルの会話にはなかなかならないのが実情です。
Photo by iStock/RobertBreitpaul
中東諸国は資源以外に産業がなく(そもそもドバイでは原油が出ませんし、バーレーンもほぼ枯渇しています)、外資企業を誘致してくる以外、国として生き残っていく道がありません。
そのため、国の指導者から企業経営者まで必死です。
世界中からマネーを集めることができなければ国がシャレにならない状況へ追い込まれるため、ファイナンスに関するリテラシーを武装することで自分の身を守っているのです。
中東出張で感じた彼我の差。実は、このようなファイナンスに関するリテラシーに差が生まれたのはしかたのないことでもあります。

第2次ファイナンスブーム到来

戦後日本の高度成長期において、事業会社のバランスシートの右側、つまり、借入金と資本はいずれも銀行が資金を提供していました。
日本特有の“株の持ち合い”という資本構造により、事業会社にお金を貸すのも銀行、事業会社の株を持っているのも銀行でした。
おまけに、事業会社のお財布を握っている財務部・経理部の担当役員や部長は銀行から出向や転籍の形で送り込まれてきた人たち。
つまり、事業会社のバランスシートの右側は人を付けてまで丸ごと銀行が面倒を見てくれる幸せな時代が長く続いていました。
チコちゃん風に言えば、ボーッと生きてきたわけです。
Photo by iStock/F3al2
しかしながら、1990年代のバブル崩壊にともない、銀行が事業会社を支えきれなくなったことや、金融のグローバル化、会計ビッグバンが進んだことによって、高度成長期を支えた日本型ガバナンスまでが崩れ去ってしまいます。
その結果、2000年代に入ってから日本企業は敵対的買収や物言う株主と対峙するという形でファイナンスの世界で洗礼を浴びることになります。
それまで欧米でしか起きない対岸の火事としか思われていなかっただけに新鮮に映ったんですね。
そんな世間の注目とあいまって、ビジネスパーソンの間では、ちょっとした”ファイナンスブーム“が起きました。
ファイナンスの専門知識に対する関心、学習意欲が高まったのです。
当時のブームは、2008年9月にリーマンショックが発生すると、世界的な大不況と株式市場の低迷により沈静化しました。
そして今、第2次とも呼ぶべき“ファイナンスブーム”が再び到来しています。
朝倉祐介さんの『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社)がベストセラーになり、ビジネス誌でファイナンス特集が頻繁に組まれるなど、私のところに舞い込んでくる企業研修の依頼やM&A案件も明らかに増えました。
その背景には、日本でも時価総額が1,000億円を超えるLINEやメルカリなどのメガベンチャーの上場、ベンチャー企業による高度な資金調達やM&Aなどファイナンス戦略の裾野が広がったこと。
Photo by iStock/GCShutter
そして、大企業によるオープンイノベーションが盛んになり経営企画部門や財務部門だけでなく、主要な事業部門でもファイナンスの知識が必要になったこと。
企業内ベンチャーキャピタルであるCVC(Corporate Venture Capital)を創設しベンチャー企業との資本提携を推進する大企業が増えたこと、などの事情があると推察しています。
勉強することの億劫さなど感じさせないほどに好奇心を掻き立ててくれるケーススタディがあふれる今、ファイナンスの勉強を始めるには絶好のタイミングだと感じています。

もっと早く学べばよかった

私は、大手証券会社、メガバンク、総合商社、戦略系コンサルティングファームを対象とした企業研修の講師も務めているのですが、毎回、受講者アンケートの回答で最も多いコメントはなんだと思いますか?
「楽しかったです」でしょうか?「わかりやすかったです」だと思いますか?
もちろん、そういうコメントは山のようにいただきます(笑)。
でも、一番多いコメントは「もっと早くこの研修を受けたかった」というものです。
ファイナンスは無機質で冷徹な学問ではありません。
いい意味で、曖昧で、正解がなく、いい加減でもあり、それこそファイナンスの魅力でもあります。ファイナンス戦略の裏には恋愛ドラマ顔負けのヒューマンドラマが詰まっています。
私のゼミでは、一方的な講義は行いません。ビシバシ受講者に当てて、考えて答えてもらって、みんなで盛り上げる。
そんなスタイルで終始進行していきます。セクシーで魅力あふれるファイナンスの世界を一緒に堪能していきましょう。
「コーポレートファイナンス入門」は4月10日(水)から開講。カリキュラムなど詳しい内容はこちらをご覧ください。