株式会社ユーザベースは、2019年2月14日に2018年12月期の決算説明会を開催しました。当日の様子をほぼ全文採録でレポートいたします。

ユーザベース連結業績ハイライト

梅田優祐(代表取締役社長(共同経営者)、以下梅田):
おはようございます。朝早い時間からありがとうございます。
まず私から、今期の会社全体と事業別の概要を一通りお話させていただきまして、その後、質疑応答に移らせていただければと思います。
今期からSPEEDAとNewsPicks、さらにQuartzについても章を設けています。我々の事業を見ていただくうえで、SPEEDA、NewsPicks、Quartzが主要事業となっておりますので、この3つを中心にお話させていただきます。
まずユーザベース全体の業績ハイライトからお伝えさせていただきます。
前年対比が可能なSPEEDAとNewsPicks、ともに良い決算をご報告できたのではないかと思っております。
こちらは売上高のグラフになります。SPEEDA、NewsPicks、そしてその上にQuartzが乗ってきております。
Quartzの24.1億円というのは、買収した時点からの売上計上になりますので、5か月間だけになります。ですので2018年のQuartzの数字はイレギュラーであることをご認識いただければと思います。Quartzを入れて105%の成長率になりますが、仮にQuartzがなかったとしても、既存事業だけで成長率 52%になっております。
我々は成長企業でありますので、トップラインの成長率を大切にしており、規模が拡大してもなお成長率を加速度的に伸ばすことができているというのは、良い結果をお見せできたと考えております。
次はEBITDAになります。10億円を超え、11.8億円となりました。我々はM&A等をしておりますので、弊社の実力を見ていく上で、EBITDAを一番大切な数字とお伝えさせていただいております。
Quartzは2.3億円が乗っておりますが、これはお伝えさせていただきましたように3Qから4Qにかけての5か月間の決算となります。Quartzについては後ほど詳細な説明をいたしますが、売上が4Qに偏重する傾向がございます。ですので、利益が大きく乗ってきております。
次に、業績予想に対する実績です。
業績予想につきまして、皆さまとコミュニケーションさせていただく上で、非常に大切な数字だと思っています。この業績予想をしっかり達成していくことが、投資家の皆さまと信頼関係を構築していく上で何より大切なものになりますので、どういう数字であれば必ずお約束できるかということを、しっかり精査して毎回発表しております。
2018年は買収がありましたので変則的になっておりまして、まず買収がない前提で発表した期初計画が、売上67億円になります。そしてQuartz買収を公表したときの数字が90億円。さらにそれが上振れるということが見えてきましたので、今年の1月26日に上方修正し、93億円という数字を発表いたしました。
いずれのタイミングにつきましても、いろんなリスクやファクターを見て、これなら守れるという自信を持てる数字を発表しております。最終的に出てきた数字は93.4億円でしたので、1月の上方修正に対して100%を達成しております。
EBITDAの計画についても同様に103%を達成いたしました。期初で発表した数字が9億円、買収公表時の計画が11.5億円でした。買収したQuartzの業績進捗が想定より良いということが見えてきましたので、1月26日に上方修正を発表し、最終的な結果としては、上方修正を上回る11.8億円で着地いたしました。

SPEEDA事業ハイライト

次は我々の創業事業、SPEEDAの事業ハイライトをご説明します。
SPEEDAの重要KPIはIDになりまして、ID×単価が売上高になるストックビジネスでありまして、しっかりと積み上がってきております。
売上高を見ていただきますと、ストックビジネスとして規模を拡大しながら、成長率も上げてきていることをご理解いただけると思います。
その中でも新規サービス、特にFORCASがしっかりと立ち上がってきております。このBtoBのSaaS事業は、今期はさらに期待できると我々は考えています。
次に利益、EBITDAのスライドになります。
新規サービス、特にFORCASを中心に投資しましたので2億円のマイナスが出ておりますが、SPEEDA単体だけを見ますと、EBITDA率は23%になりました。SPEEDA事業においてはEBITDA率30%が正常収益だと考えておりますので、来期での実現に向けて、階段を順調に上がっております。

NewsPicks事業ハイライト

NewsPicksもSPEEDAと同じように、有料会員数が重要KPIとなっております。2018年の4Qは過去最大の増加を見せ、9.5万人の有料会員数となりました。引き続き強い勢いをキープしております。
こちらが売上高のグラフです。大きく有料課金、広告、その他売上に分かれます。その他売上というのは、我々が作ったオリジナルコンテンツの外部販売等の売上高になります。
2018年の売上は、広告と有料課金が約半々になってきました。これはNewsPicks事業をスタートしたときに理想としたモデルでして、しっかり実ってきております。
成長率に関しても、売上規模が拡大してもペースを落とすことなく、昨年の77%に引き続き、78%の成長率をお見せすることができました。
EBITDAも前年比で125%となりました。上場時、NewsPicksは投資フェーズの事業で赤字でした。その後しっかり黒字化して、SPEEDAと並んで収益の柱となっています。

Quartz事業ハイライト

最後にQuartzについてご説明いたします。Quartzは米国マーケットで展開しておりますので、まず現在の米国のメディア環境がどうなっているかをご説明させていただきます。
米国のメディア業界はこの数か月、特に新興メディアを中心に非常に大きな動きがありました。
これらは全部今年の報道記事になります。皆さんも日本でお聞きになったことがあるかと思いますが、BuzzFeedやVICE、HuffPostのような新興メディアがこの5年くらい成長してきました。
彼らの戦略というのは、FacebookやTwitterなど外のプラットフォームにコンテンツを配信し、拡散してユーザートラフィックを作ることで、広告収益を上げていくというビジネスモデルになっております。
そのビジネスモデルが頭打ちを見せてきておりまして、事業の成長が厳しい状態になっております。その大きな理由は、やはりFacebookやTwitterという巨大プラットフォームが広告収益のほとんどを持っていっており、メディア側に落ちてくる広告収益のパイが拡大してこないというのが1つ。
2つ目が、Facebookのアルゴリズム変更です。これによってトラフィックが大きく下がってしまうことが昨年起こりました。これまでもGoogleの検索アルゴリズム変更などありましたが、外のプラットフォームに依存して、プラットフォームのアルゴリズムに運命を握られてしまうビジネスモデルになっていたということです。
これが影響して、名前を思いつくような新興メディアのほとんどで成長が鈍化してきており、収益が成り立たなくなってきたのでリストラを開始しているという状況です。スライドにあるように報道もされておりますが、この数か月だけで、2000人のメディア業界の職が失われたということです。
そのように米国のメディア業界が逆風の中で、Quartzは順調に業績を拡大しております。
Quartzも既存事業は広告モデルなのですが、なぜ業績を拡大できたかといいますと、外部のトラフィックに依存しないビジネスモデルだったからです。
トラフィックに依存するというのは、例えばトラフィックが30%減ると、広告を見てくれる人が30%減る。広告を見てくれる人が30%減るということは、売上が30%減るという、トラフィックと広告の売上が相関しているビジネスモデルです。影響を受けたメディアのほとんどは、このビジネスモデルなんですね。
ただQuartzはNewsPicksと同じように、トラフィックに依存しないブランド広告をやっております。ブランド広告というのは、コンテンツ力、クリエイティブ力に対価が付いておりますので、大きな影響を受けませんでした。
もう1つは、この広告モデルを発展させて、クライアント企業の奥深くに入っていって、ただの広告ではないソリューション事業に変化させていったところも大きいです。
例えば、これは米国のHBOという会社で実施したことですが、社内のコミュニケーションツールとして、Quartzが「bot」というシステムを構築しました。そのシステムの中で、Quartzがプロデュースした社内向けコンテンツが配信され、社内コミュニケーションを活性化させるような仕組みです。
このテクノロジーとコンテンツプロデュース力を組み合わせて、「この会社には今、どういう問題があるのか」という問題提起からソリューション提供までやる「ソリューション事業」に変化させております。このbotというシステムは現在、HBOだけでなく他の会社にも提供スタートしております。
しっかりと企業の中に入ってソリューションを提案しますので、結果として、クライアント1社あたりの売上高が非常に高くなっております。1億円単位の単価で、年間の契約をいただく形が増えています。広告ビジネスではあるのですが、ソリューション事業として安定事業になってきているところが、Quartzが逆風の中でも影響を受けずに成長をしているポイントの1つです。
ただ、ソリューション・広告事業というのは、季節変動の大きいビジネスでもあります。
この点線が買収前で、黒い色がついているところが買収後の売上になるんですが、見ていただく通り、半分近くの売上が4Qに乗ってきております。
これは今年も同じ傾向となりますので、我々の事業を見ていただくときは、4QにQuartzの半分が乗ってくるという前提で見ていただければと思っております。
以上が、Quartzの既存事業のご説明です。
今後さらに成長するためには、新規事業にも投資していくことが非常に大切だと思っております。そのために我々が今後投資していくのが、まずコミュニティです。
国内のNewsPicksで実現したのと同様に、読者がしっかりとQuartzの中、コミュニティの中に入って、強いつながりを作れるような、そういうコミュニティ作りに投資していきます。
今まではQuartzも、ダイレクトな読者とのつながりがやはり弱かったところがあります。今後、自らコミュニティを運営してQuartzの読者とつながっていこうと、日本でやったモデルを再現してやっております。
投資するポイントの2つ目が、有料課金です。BtoBのソリューション・広告事業だけに依存せず、ちゃんとユーザーから課金してもらえるようにしていきます。日本で我々が成功した有料課金、ストック型のビジネスモデルを作っていこうと話しております。
この2つに今年から投資していき、3年というスパンで育てていこうと思っております。国内のNewsPicksも4〜5年というスパンで育って今、収益の柱になっていますので、それと同じことを米国でも実現しようと考えております。
Quartzに関しましては、2つの事業に分けて今後説明していきたいと思います。
まずは買収前から持っている、広告・ソリューション事業という既存事業です。これに関しましては、今期はしっかり黒字化させ、収益が出る事業にしていくということを計画しています。
それにプラスして、新規事業として有料課金に投資します。
今、米国のメディアは成功モデルがない状態にあります。新興メディアがみんな壁に直面してしまってリストラが行われています。継続性のあるビジネスモデルをどうやって作っていくのかということは、誰もまだ作れていません。結果としてThe Wall Street JournalやThe New York Timesなど、伝統メディアが引続き大きなプレゼンスを持っています
我々はここをチャンスだと思っておりまして、誰も成功モデルがない中で、有料課金モデルをしっかり先行して作っていくことを考えております。
今年、有料課金に投資して、一気に立ち上げていく。
ただし有料課金はストックビジネスになりますので、最初は赤字になります。それが一定程度積み上がった時点で黒字化、収益化していくという、日本のNewsPicksでやったモデルを米国で実現していくことを計画しております。

ユーザベース 2019年の事業計画

最後に2019年、全社でどのような計画を考えているかをご説明いたします。
まず売上高に関しましては、前年比45%の135億円を計画しております。今後もトップラインはしっかり伸ばしていきたいと思っております。
利益に関しまして上場以降しっかりと積み上げてきましたが、今年はもう一度、大きく投資をして、戦略的に赤字としたいと考えております。米国市場はオポチュニティがあり、やるなら今だと思っておりますので、ここに投資をさせていただいて、中長期的な成長につなげていきます。そのための投資として、今年は5億円の赤字を計画しております。
その内訳をご説明します。2018年の利益は11.8億円でしたが、2019年は既存事業だけを見れば17億円を超える収益、20億円近い収益が出るような力がございます。新規事業を全て止めてしまえば、20億円近い収益をお出しできるのが、今の我々の実態だと思っていただければと思います。
ただ、我々のミッションである「経済情報で、世界を変える」を実現するためには、このまま国内事業に留まるのではなく、「世界」への挑戦が、今後10年における最も重要なキーワードになってくると思っております。
国内に加えて今回、米国に20億円の投資をさせていただくことで、今まで日本で10年間かけて作ってきたビジネスモデルと同じように、非常に強固で強いモデルを米国でも作っていきたい。その結果、最終的に利益が出ている事業と投資を差し引きしまして、マイナス5億円のEBITDAを今年計画しております。
今回もそうですが、我々が業績予想を出すときは、必ずどんな状況になろうがお約束できる数字を精査を重ねて出しております。ですので、20億円は投資の最大値だと捉えていただければと思います。
もちろん投資に見合わない、例えばマーケティングにアクセルを踏んでも利益が得られないということになれば、投資を緩める判断もあります。そのため、20億円というのは、投資の最大額であり、この金額を超える事はないとご認識頂けたらと思っております。あとは新規事業の進捗を見ながら、その範囲の中でアクセルの踏み方を決めていきたいと思っております。
2019年の骨子をまとめさせていただきますと、まずSPEEDAとNewsPicks、この2つの事業が引き続き我々の屋台骨になります。
3年前はSPEEDAだけでした。それにNewsPicksが加わって強い2本柱になり、収益を生み出すエンジンになってきているのが現時点です。2019年も引き続き、強い事業として育てていきます。
それにプラスして、新しい芽としてQuartz事業があります。
Quartzに関しては、既存事業をまずしっかりと収益化させることが重要だと思っています。ですので、最悪何かあって、新規事業が立ち上がらなかったとしても、新規事業を止めてしまえば、Quartz単体でちゃんと収益が出るという状態に持っていきます。それを実現することが、永続性のあるビジネスモデルだと思っておりますので、まず既存事業をしっかり黒字化させていきます。一方で新規事業については、中長期の成長に向けて投資を拡大させていきます。
3つ目ですが、SPEEDAとNewsPicksは以前からお伝えさせていただいている通り、2020〜2021年までに正常収益率の30%を目指します。
Quartzも2021年までに、新規事業を含めて会社全体での黒字化を目指します。ユーザベースグループでは、事業づくりに投資する期間は3年というのが1つのディシプリン(規律)としておりますので、Quartzは2021年を目標に設定していきたいと思っております。
最後に、今期は戦略的な赤字にするということがありますので、あらためて説明させていただきます。
過去の我々の歴史でも、2014年に一度大きな赤字を出しました。2014年に何をやっていたかというと、NewsPicksの事業を立ち上げるタイミングでした。当時、他のメディアがこぞって広告モデルをやっているときに、NewsPicksだけが有料課金、ストックビジネスを作るという目的で投資をしていました。
コンテンツやマーケティングへの投資は、どうしてもコストが先にかかってきます。そのコストが最初に出て、3年経って黒字化し、今ではSPEEDAに並ぶ収益貢献事業になっています。
今振り返ってみても、2014年の投資がなければ、この成長カーブは実現できなかったと思っています。
NewsPicksが日本市場で実現してきたことを、Quartzでも世界市場で必ず実現したいと思っております。ですので今後3年、しっかり投資をしていきまして、大きな成長カーブを世界で描いていきたいと思っております。
3年後や5年後、我々の事業を振り返っていただいたときに、「2019年の投資がしっかり実ったね」と言っていただけるように、しっかり誠心誠意頑張って、事業に邁進して参りたいと思います。
以上が私からのご説明になります。

質疑応答1:2019年売上・投資の内訳は

質問者1:
3点質問お願いいたします。
売上計画の135億円の中で、SPEEDAとNewsPicksとQuartzの比率をどのくらい見込まれているのか、内訳をお伺いできますでしょうか。
梅田:
私から回答させていただきます。
まず事業が多岐にわたってきておりますのでいろいろなシナリオを想定しており、この場での開示は控えさせていただければと思います。ただ、1つの事業が想定通りいかなかったとしても他の事業がというように、グループ全体としてお約束できる数字として135億円を発表しています。ですので内訳については、事業のシチュエーションによっても変わってくるとご認識いただければと思います。
ただ全体の比率のイメージだけはお伝えできると思います。こちらは(CFOの)千葉からお伝えさせていただきます。
千葉大輔(執行役員CFO):
まずSPEEDA事業ですが、これまでと同じような伸び率を想定していただければと思います。ですので135億円のだいたい3分の1ぐらいがSPEEDA事業の売上となります。残りもNewsPicksとQuartzでそれぞれ3分の1ずつをイメージしています。
我々の今のサービスはSPEEDA、NewsPicks、Quartzが3本柱となっています。来期はFORCASもかなり伸びてくると見込んでおりますが、この3本柱がメインである状況は大きく変わらないと考えております。
質問者1:
ありがとうございます。3分の1を占めるQuartzの売上の中に、投資による成長はどれくらい織り込まれているのでしょうか。
梅田:
今年から本格的にスタートするストックビジネスですので、今期の売上に占める割合は、それほど大きくないと考えていただければと思います。ただ、これまで日本でやってきたヒストリカルなデータがありますので、日本の成長カーブと比較してどれだけ上回れるかを大事な指標としています。この指標をトラックすることで、将来どのくらいのストックビジネスになるかが予想しやすくなってますので、それを見ながら投資をコントロールしていこうと思っています。
質問者1:
2つ目は、Quartzへの20億の投資についてです。この中身について伺えますでしょうか。人、システム、マーケティングなど様々に投資されると思いますが、どういった分野に重点投資されるのかをお聞きできればと思います。
梅田:
有料課金のためのコンテンツが何より大切になりますので、有料課金チーム組成も含めた、コンテンツへの投資が最大のものになります。それにプラスしてマーケティング。コミュニティとコンテンツが十分なものに達していると判断したときに、しっかりマーケティングするために投資していきます。最後にプラットフォーム。コミュニティの居場所としてのプラットフォームに、エンジニアの採用も含めて投資することを考えています。
質問者1:
来期EBITDA 17.3億の中には、Quartzの赤字改善はどのくらい含まれているのでしょうか。
梅田:
Quartzの既存事業(広告・ソリューション事業)に関しては、しっかり収益化、黒字化させます。こちらはまずブレークイーブン(損益分岐点)に持っていければと考えております。
ですので既存事業に関してはブレークイーブンとしてプラスマイナスゼロ、新規事業で20億の投資を行うと見ていただければと思います。
質問者1:
最後に、Quartzの足元の状況についてお伺いします。以前、Quartzの重要指標として継続率を見られているというお話でしたが、4か月ぐらい経ってどうなっているのか。また今後KPIを開示されるとしたら、どのタイミングでどの指標を公開されていく計画なのでしょうか。
梅田:
まず有料会員については、まずまずの立ち上がりを見せております。ただスタートして数か月ですので、現時点で何かをお伝えするのは早すぎるかなと思っております。スタートアップを起業して数か月で結果を発表するようなものですので、今後自信を持ってお伝えすることができるようになったときに、詳細をお伝えできればと思います。
そのときに公表するKPIとしては、やはり日本と同じ、有料課金ユーザー数だと思っています。ストックビジネスとしての我々の収益を見ていただく上で、新規事業への投資の結果として、何より大切な指標は有料会員ユーザー数です。我々も勝てる根拠なく投資はしませんので、投資をしているということはそれなりの根拠があると思っていただければと思います。

質疑応答2:Quartzへの投資がうまくいかなかった場合の目算は

質問者2:
30ページの見方についてご教示お願いいたします。
2018年度はQuartzも11.8億円に貢献しているかと思いますが、売上が4Qに集中することを考えると、見かけ上黒字になっているという見方もできると思います。だとすると、2018年のEBITDA 2.3億円を大きく超えない、減益要因にもなるかと思います。連結のEBITDAとなった場合にこの要素が織り込まれているのか。織り込まれているという場合、EBITDAの増加率47%というのは国内のSPEEDAやNewsPicksで達成できるとお考えなのか。
またオレンジの国内新規事業投資分につきまして、entrepediaやFORCASだと思いますが、2018年の赤字額である2億円に、2.4億円をさらに上乗せするという解釈で良いのでしょうか。
またQuartzの20億の投資の中に、のれんやNewsPicks USAの赤字が含まれているのか等、内訳について詳しく教えていただければと思います。
梅田:
ご質問ありがとうございます。私から概要お伝えさせていただき、不足している部分を千葉から補足させていただきます。
まず既存事業EBITDA計画の17.3億には、Quartzの業績は一切入っておりません。SPEEDAとNewsPicksだけでございます。
オレンジの国内新規事業投資分は、FORCASとentrepediaです。トップラインの成長が見えておりますので、昨年は2億円投資しましたが、今年は2.4億円を投資いたします。
Quartzの20億円に関しまして、既存事業も含めますと、2018年は確かに赤字でした 。我々が買収して最初にやったのは、コストの徹底的な管理と、必要ないコストの整理です。その結果がすぐ出てきましたので、業績の情報修正を昨年発表いたしました。
Quartzは事業もしっかり伸びているのですが、これまでプライベートカンパニー(非公開会社)でしたので、やはりコスト管理が甘かったり余分なお金を遣っている部分がありました。ここをまず筋肉質にしたというのが、この6か月間、我々がやってきたことです。2019年は既存事業を損益分岐点、ブレークイーブンに持っていきますので、新規事業への投資20億円の中には、既存事業の去年のマイナス分はゼロになっていると考えていただければと思います。20億円については有料会員獲得と、コミュニティ、プラットフォームへの投資に充てる計画です。
またご指摘のあったNewsPicks USAについては、この20億円の中に含まれます。こちらは主にプラットフォームの開発費なのでQuartzとの統合後、新規事業投資という位置づけになります。
千葉:
まず2018年の連結EBITDA 11.8億円ですが、ご指摘のとおり、SPEEDAおよびNewsPicks以外の結果も含まれております。Quartzの5か月分の連結EBITDA 2.3億円がプラスされている一方で、国内の新規事業のマイナス分が約2億円ありましたので、差し引きして0.3億円が計上されています。
ですので、既存事業のEBITDAを単純比較をするためには、上述の0.3億円をマイナスした11.5億円と、2019年の17.3億円を比較していただくのがイメージしやすいかと思います。だいたいSPEEDAとNewsPicks事業だけで考えると50%近い成長を見込んでおります。
オレンジ色で示している国内新規事業につきましては梅田からご説明差し上げたとおりでございます。
質問者2:
Quartzへの新規事業投資20億円について、詳細を開示するのは難しいとのことでしたが、広告宣伝費のようなフローの費用なのか、人件費のような固定費になるのでしょうか。
また来期、2020年については引き続き投資と捉えているのか、何かしらの損益改善の結果を出す年とお考えなのか。梅田さんの考えられている流れをお伺いできればと思います。
梅田:
20億円の中の変動費と固定費の内訳につきまして、大きなイメージという前提ですが、変動費と固定費が約半分(10億円)ずつと思っていただければと思います。ですので10億円については、ストップしようと思えばいつでも止められます。
2020年に関しましては、現時点では引き続きQuartzは赤字にすることを考えております。ただ今年の投資の結果をもってしっかりと改善していくフェーズであり、その際にはKPIとして有料会員ユーザー数も公表し、投資の幅と合わせて、お示ししていきたいと考えております。ちょうど国内でNewsPicksをスタートした2〜3年目と同じような状況まで、来期は持っていければと思います。
質問者2:
最後に、仮に米国でのQuartzの新規事業がうまくいかなかった場合、どうなっていくと想定されているのでしょうか。先ほどソリューション事業が伸びているという説明がありましたが、非常に興味深いビジネスモデルだと思いました。季節要因があるとはいえ、広告とソリューションで米国事業はどの程度伸ばせるとお考えでしょうか。
梅田:
広告・ソリューション事業もある程度伸ばせると見込んでおります。ソリューション事業は昨年立ち上がったものですので、今の段階でこれがどれくらいの事業になるのかというとお答えするのは、タイミングとして早すぎると思っています。
Quartzの強さは、この広告・ソリューション事業を支えているコンテンツ制作力にあると、買収前から考えていました。新規事業がもしうまくいかなかったとしても、既存事業だけで一定のビジネスにはなるという見立てです。ただその時にはSPEEDAやNewsPicksと同じような高収益モデルにしていかないといけませんので、現在、より筋肉質な経営体制・企業体質への改善に取り組んでいます。
質問者2:
ありがとうございました。

質疑応答3:

質問者3:
2点、お伺いさせてください。
まず1点目ですが、米国ビジネスを2018年の初めから約1年間やってこられて、米国ユーザーへの浸透度でいうと、どのような手ごたえを感じておられて、どういう成果を残したと思われているのでしょうか。
2点目は、Quartzは非常に有望なビジネスだと思っているのですが、一応3年ということで2021年までに黒字化をうたわれていますが、事業として継続性を判断するとなると、2020年の半ばくらいに業績が厳しいなと思ったら、ある程度の期限としてどのタイミングでジャッジをするのでしょうか。
梅田:
ありがとうございます。米国事業に関しましては、1年近く向こうにいてやった結果、手ごたえは感じております。ただ1点、短期的なものを犠牲にしても長期的なものを選んだ意思決定として、もともとNewsPicksというブランドを米国版NewsPicksアプリで提供していましたが、Quartzを買収したことで、それを一度手放し、Quartzブランドで新アプリを始めました。
今まで蓄積してきたものを1回捨てて、また新しくすることにした理由は、やはり未来を考えた時にQuartzという1つのブランドでしっかり世界観を作った方が良いだろうと思ったからです。
そのためブランド変更、プラットフォーム変更をしたときに、米国におけるNewsPicksというブランドへの認知は1回落ちております。ただ、そこからまた上がってきていますので、いったんそいういうクッションが入ったというところがあります。
米国版NewsPicksとQuartzを統合した際に、ブランド変更の広告等はやっておりませんので、そこの浸透に関してはまだ浸透しきってないところは一部ございます。ただ、だいぶユーザー様も米国版NewsPicksから新しいQuartzサービスに移ってきていますので、NewsPicksがQuartzに移行したんだと認識してもらえてきているのではと思います。
またQuartzと一緒になって良かったことといたしましては、米国では一定のブランド認知があるメディアですので、以前に比べると、プロピッカーになっていただく際にアポ取りに苦労しないようになりました。参画いただく方も毎月増えております。
Twitterなどを見ていただきましても、Quartzと連携してシェアをするということが広がってきており数値としても拡大してきているので、徐々にソーシャル上での認知度は上がってきているのではないかなと思っております。
2つ目の質問でいただいておりました事業継続の判断のタイミングですが、現段階では、明確に期限を設けて判断をするということは考えておりません。ただ常々、事業作り3年というのは基準とすべき1つの期間、ディシプリン(規律)だと思っておりますので、3年で難しいと思った時は、何かしらの判断をいたします。
それはやはりご指摘いただいたように2020年半ばには一定程度の感触と根拠がなければ逆におかしいので、その時点でこれは行くのか縮小するのかという判断ができる状況にいると思います。
質問者3:
ありがとうございました。

質疑応答4:

質問者4:
Quartzに関して2点、教えてください。
Quartz事業ハイライトでご説明されていたソリューション事業についてうまく呑み込めなかったのですが、去年後半から徐々に立ち上がってきて、収益貢献していくだろうということかと思います。
これを他社がやれなくて、なぜ御社ができたのか、そしてソリューション事業を今後伸ばしていくためには何をしなければいけないのかというところを教えてください。これがまず1点目です。
梅田:
1つ目の理由は、Quartzのクリエイティブチームですね。トラフィック型の広告ではなく、自分たちでクリエイティブを作るチームが内製化されているということが1つです。
2つ目の理由、こちらが大きいのですが、テックチームが社内にいたということです。クリエイティブチームとテックチームが組み合わさってソリューションを提供できた。これは他のメディア企業ではテックチームがないので、実現できない価値です。
例えば社内のコミュニケーション活性化とブランディング構築を目的に、テックチームが社内専用のbotを作り、そこにQuartzクリエイティブチームが社内の広報・コミュニケーション担当者に代わってコンテンツを作成し、配信する。社内に向けたコンテンツだったとしても、おもしろくなければ社内の人達は読んでくれませんので。
テックチームとクリエイティブチーム、この2つを組み合わせることができているのは、他社には真似できない、Quartz独自のものだと思っています。
質問者4:
ソリューション事業を伸ばしていくために今後やるべきことというのは?
梅田:
まず横展開ですね。昨年ソリューション事業を展開できたのは、大企業のユーザーのニーズから、ある程度カスタマイズして作ったことから始まっています。
その中のカスタマイズには、例えば調査事業のようなものもありまして、CMO(Chief Marketing Officer)と呼ばれる人たちがどういったことを考えているのか知りたいというニーズがありました。そこで、CMOの人たちが見たいコンテンツをQuartzが作って、そこでCMOを中心としたマーケティング関連の人たちを集客をして、アンケートを取ったり、イベントを開催したりして実態をレポートとして提供するというようなこともやっています。
昨年はユーザーニーズに立って、一件一件カスタマイズで作ってきたので、今年は仕組み化し、一気に横展開していきたいと考えています。この仕組み化がどこまで出来るかによって、規模拡大のスピードがどこまで広がっていくのかが決まってくるのではないのかなと思っています。
質問者4:
米国メディアの状況についてですが、例えば編集スタッフをさらに採用し、コンテンツを強化していくのが大きなポイントだと思います。ただ、御社が採用したくてもできない可能性もありますし、逆に良い人材を採用できる可能性もあるかと思います。コンテンツ編集者の市場動向など、日本との違いについて教えてください。
最後にマーケティングの手段ですね。日本だとテレビコマーシャルが有効だとか、最近はタクシー広告など色々ありますが、マーケティングにおける日本と米国の違いについて教えてください。
梅田:
人材のところに関しましては、勝ち負けが完全に鮮明になりました。
The New York TimesやDow Jonesグループは引き続き強いです。あとPOLITICOという、BtoBのサービスを持っている政治系のテーマを取り扱っている新興メディア。ジェフ・ベゾスがオーナーになったThe Washington Postも力強い成長をみせています。大きくこの4社が強く、積極的な人員採用、投資もしているという状態になっております。
我々が人材採用する時にも、主にこの4社とバッティングすることが多くなっております。米国と日本と違うのは引き抜き合戦ですね。引き抜き合戦は非常に激しいものがあるというのが実情です。特に広告営業のような直接的に売り上げを立てる部署にいる人材のヘッドハンティングでは、日本では考えられないような高い給与がオファーされている実態があります。
一方で、経営が厳しい会社も鮮明になりましたので、そこから人材を採用しやすくなっている状況もございます。
例えば、MicというQuartzと同じ時期に始まったミレニアム対象にした新興メディアがあるのですが、昨年ほぼ会社を潰すような形でファイヤーセールされました。たまたま私がMicの創業者と知り合いだったので、ファイヤーセールをされるというニュースを見た時に、すぐに連絡をとって彼らが抱えている人材を引継ぎたいという話をしました。我々としてはちょうど、Quartzが今まで親会社に依存していたバックオフィス体制を作らなければならなかったので、メディアのことをわかっている優秀なバックオフィス人材を採用できたということがございます。
ですので、5~6年前のような米国メディア全体がうまくいってきた時に比べると、良い人材を集めやすいフェーズにきているという肌感覚はあります。
また、もう1つのご質問でございましたマーケティングの方法に関しては、仰る通り、日本以上に分散しておりますので、このマーケティングをすれば成功するというような成功パターンはまだ確立してないところがあります。ただ我々の今のフェーズとしては、日本で始めたフェーズと同様に、Facebook広告、LinkedIn広告、Twitter広告やInstagram広告などのSNSのプラットフォーム広告などを使って、費用対効果がしっかりと分析できるマーケティングだけをまずやっていくことかなと思っています。それ以上に拡大していくということは今のところ考えてはいないですね。
質問者4:
ユーザーの動向はどうでしょうか。
梅田:
ユーザーの動向に関しましても、日本以上に分散していると思っております。ただ、プラットフォームを見ていきますと、プラットフォームに関しては日本のようにYahoo!ニュースやLINE NEWSなど、「ニュースを見るならこのプラットフォーム」というところが逆にない状態です。そのため、我々にとっては逆にチャンスだなと思っております。
あと米国特有なものとしては、Eメールですね。Eメールでニュースをチェックするという流通経路は日本ではあまり確立されていませんが、米国では非常に強いです。
QuartzもEメールが読者との1番強いチャネルになっています。ユーザーが最もエンゲージしており、最も反応が得られるものです。それ以外はまだ分散しているのが、今の業界の状況ではないかなと思っております。
質問者4:
すみません、最後に追加で。優秀な編集者が他社ではなく御社で働きたいと考えるインセンティブというのは何でしょうか?
梅田:
1番はやはり、投資をしているということだと思います。有料課金コンテンツに投資することが、米国の新興メディアでは少ない状況です。
今までの新興メディアがやっていたコンテンツ作りは、1日1本、最速でコンテンツを作り、バズらせてトラフィックを得るというものでした。
一方で我々が今やっている有料課金のコンテンツというのは、1人の記者が6週間かけて1つのトピックスを書きます。本物のジャーナリズムを追求して記事を書けますよと。これは長年ジャーナリストが求めていた環境ということもあり、非常に魅力的な場になっているのではないかと考えています。
なおかつ、20~30代といった若手のビジネスパーソンを対象にしているのはQuartzとBusiness Insiderぐらいですので、若い人向けにコンテンツを作っていきたいジャーナリストにとっても、挑戦できる環境が整っているのではないかと思います。
質問者4:
ありがとうございました。
司会者:
それでは、以上をもちまして株式会社ユーザベース 2018年12月期決算説明会を終了させていただきます。
本日はお忙しい中、お越しいただきまして、誠にありがとうございました。