『スター・ウォーズ』の世界観

筆者が初めてロボットに魅了されたのは、小学生時代に『スター・ウォーズ』を見たときだった。R2-D2とC-3POは、単なる「未来のクールなロボット」ではなかった。お互いにボケとツッコミを入れ合うコンビであり、人間の主人公たちの友達であり仲間だった。
彼らには感情があり、思いやりがあり、お互い対して忠実だった。こうした人間的な性質は、人間の生活にロボットを取り入れる可能性とポテンシャルを、幼心にすんなり納得させてくれた。
そして今、完全な自律型ロボットは、もはやSFの世界だけの存在ではなくなった。私たちは、自律型ロボットを海や宇宙へ探索に送り出し、工場で隣り合わせに働き、公道で運転を任せている。
もちろん家庭内でもロボットの存在感は高まっている。
かつてパソコンメーカーは、すべてのオフィスで1人1台コンピューターが導入されることを目指したが、現代のパーソナルロボットのメーカーは、すべての家庭にロボットが1台置かれることを目指している。

人間を「励ましてくれる」ロボット

ある意味で、その目標はすでに達成されている。『スター・ウォーズ』のロボットとは違うけれど、掃除機をかけたり(ルンバ)、音楽をかけたり(ソノス)、買い物をしたり(アレクサ)できるロボットがある家庭は増えている。
そして今、用事をこなしてくれるロボットだけでなく、人間と交流し、家族の新しいメンバーになってくれる「ソーシャルロボット」への期待がこれまで以上に高まっている。
なかには、ロボットなんて人間と人間のつながりを希薄にするツールだとか、人間から仕事を奪う存在だと考える人もいる。
でも、ソーシャルロボットは、人間関係を強化する助けにもなれるし、人を元気づけることもできる。人間に取って代わるものではなく、人間の生活を豊かにしてくれるように設計することができるのだ。
ソーシャルロボットは、高度にパーソナライズされるだろう。幼児からその親や高齢者まで、あらゆる人に恩恵をもたらすように設計され、家庭で使われるうちに「家族」それぞれの好みを学習して、それぞれのニーズに応える振る舞いができるようになるだろう。

プライバシーやデータに関する課題

家庭用ソーシャルロボットは、多くの問題を解決するだろう。1970年、両親が揃っていて共働きの家庭は31%しかなかった。それが今は46%に達しており、今後も上昇する可能性が高い。
いわゆる主婦(または主夫)が減るなかで、ソーシャルロボットは子どもの宿題や学校の復習を手伝うことができる。料理のレシピを見つけたり、材料を注文したりするだけでなく、料理を手伝ったり、料理の先生になってくれる。
ソーシャルロボットは、医者や専門家が勧める栄養補給やエクササイズの実践を助けるパーソナルコーチにもなれる。
ベビーブーム世代が高齢化するなか、仕事を引退した人たちが友だちや家族との連絡を維持し、世の中とのつながりを維持するのを助け、病院の予約をとり、薬を飲む時間を知らせたりもできる。
もちろんロボットと聞くと、映画『ターミネーター』に出てくるような軍事ロボット「スカイネット」を思い浮かべる人もいるかもしれない。プライバシーの侵害やなりすまし、スパイ活動の道具になることを恐れる人もいるだろう。
あらゆる知的テクノロジーと同じように、ソーシャルロボットでもプライバシーとデータは倫理的かつ責任ある方法で守るべき重要な課題だ。
その最大の責任はソーシャルロボットを作る企業にあり、開発のあらゆる段階で考慮に入れる必要がある。そのとき初めて、ユーザーは安心してソーシャルロボットを家庭に迎え入れられるようになるだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Cynthia Breazeal/Director of the Personal Robots Group at the MIT Media Lab、翻訳:藤原朝子、写真:gremlin/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.