【佐々木俊尚】コストをかけず豊かな「家飲み」を実現するには

2019/2/15
夕食と楽しむビールは、頑張った一日を締めくくるささやかな楽しみだ。毎日のことだから、おいしくて簡単にできる手料理と合わせて、手軽に楽しみたい。

「家めし」と「家飲み」に一家言持つジャーナリストの佐々木俊尚氏とサントリービール株式会社 マーケティング本部の佐藤勇介氏が、同社の新商品「金麦〈ゴールド・ラガー〉」をサシ飲みしながら「コストをかけずに豊かな家飲みを楽しむ極意」を語り合った。
1961年、兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部を経て、毎日新聞社入社。12年にわたり事件記者として活躍。99年から月刊アスキー編集部、2003年にフリージャーナリストとして独立。ネットとリアルの衝突と融合といったテーマで主に執筆するほか、シンプルな素材と調理を提唱する料理本も出版。主な著書に『家めしこそ、最高のごちそうである。』『広く弱くつながって生きる』などがある。

クラフトビールでは重く、軽いビールでは物足りないときがある

佐々木 クラフトビールやプレミアムビールが人気を呼ぶ一方で、価格の安い新ジャンルも目移りするほどたくさん売られている。ビール類市場は実に多様化していますね。
佐藤 最近はビール類の楽しみ方として平日は新ジャンルで週末はビールと、日によって飲み分けている人たちが増えてきています。
 毎日気兼ねなく飲める新ジャンルは多くのお客様に支持されておりますが、本音は毎日ビールを飲めたらいいのに、という人が結構いると思っています。
佐々木 そうでしょうね。でも家計を考えると、そうもいかない。
佐藤 そうなんです。毎日気軽に飲める新ジャンルでも、ビールのような本格的な飲みごたえを楽しめることができたら、こうしたニーズにお応えできるのではないか、と考えました。 
 その想いから誕生したのが、当社のビール事業の総力を結集してつくった「金麦〈ゴールド・ラガー〉」です。ぜひ、佐々木さんに試していただきたくてご用意しました。
佐々木 (グラスからゆっくりと味わって)若いころ、よく大瓶で飲んでいた伝統的なラガービールを彷彿(ほうふつ)とさせる味ですね。
 麦のコクがしっかり感じられて、飲み終わった後にホップの苦みが鼻からスーッと抜けていく。新ジャンルは価格が安い分、味もそれなりという印象がありましたが、イメージが変わりました。

特別な日のビールと、毎日飲むビールは違う

佐藤 まさに、ビールならではの麦のコクや飲みごたえと、飲み続けられる“のどごし”の良さを両立させることにこだわり抜いた商品なので、そう言っていただけてうれしいです。
佐々木 僕はフリーランスなので、夕方5時ぐらいに仕事を終えて心地よい疲れを感じた時、「ちょっと一杯飲もうかな」と晩めしを待たずにその場で冷蔵庫を開けちゃうことがよくあります。
 冷蔵庫にはいろんな種類のビールを用意しているんだけど、最近人気のクラフトビールだと「今飲むにはちょっと重そうだな」と躊躇(ちゅうちょ)しちゃうし、軽すぎるビールだとなんとなく物足りない。そんな時に選ぶのにも、ぴったりな気がしますね。
佐藤 おっしゃる通りです。コクがありすぎると毎日飲みたいという気になれないし、のどごしやキレに偏りすぎるとビールに求める満足感が得られにくいので、このコクとのどごしやキレのバランスが難しいんです。
 開発当時は、なかなか理想とする味ができず、何度も試作・試飲テストを繰り返しました。
 試飲テストでも普段家で飲むことを考え350ml缶1本をしっかり飲んで、満足できる中味になっているか?明日もまた飲みたいと思える中味になっているか?とテストし、理想とする味わいを目指してきました。
佐々木 麦とホップの味わいをしっかり楽しめて、それでも飽きない程度の軽さが残っているというのは日本人が求めるビールのど真ん中な感じがします。

ビール類の楽しみ方が多様化している

佐々木 ビール類は種類だけでなく、楽しみ方も広がっていますよね。振り返ると、1980年代には焼き肉店や居酒屋で脂っこいものを食べて、キレのよいビールで洗い流すように飲むスタイルが一世を風靡(ふうび)したのを思い出します。
 今日は飲むぞと決めて、浴びるように飲んで語らう。これはこれで爽快な楽しみ方で、今でも定番のひとつではあります。
 ただ、リーマン・ショックと東日本大震災以降、別のスタイルも見直されてきたように思います。一番リラックスできる場所である自宅で、ゆったりと味わう日常の飲み方です。
 一日の疲れをいやし、明日への英気を養う。時には気の置けない仲間を呼んで、うまい酒と料理がある空間を共有する。そんなときは、しっかりした飲みごたえがある本格派で、毎日飽きずに飲める、こういう味わいのビール類が合うんです。
佐藤 わかります。今日一日頑張った自分をねぎらい、明日も頑張ろうと思わせてくれる。それがビールに求められる価値の一つだと思っています。毎日飲めて、力強い満足感・充足感があってこそ価値がある。
 家計は気になるけれど、うまいビールを毎日飲みたいという人に、「金麦〈ゴールド・ラガー〉」は満足していただける商品だと自負しています。

凝った調理や高い食材は必要ない

佐藤 佐々木さんは普段、どういうビールの楽しみ方をなさいますか。
佐々木 日常的に飲むので、ビールと日本酒とワインは常にストックしていますね。ビールも新ジャンルもあまり区別せず、店頭で気になった新商品はとりあえず買ってみます。
 冷蔵庫をざっと見渡して、その日の料理に合いそうなものをチョイスするという感じですが、冬は比較的ビール類の出番が多いですね。
佐藤 夏よりも冬によくビールを飲まれるんですか。
佐々木 夏もいいですが、冬に飲むビールも格別です。寒さで冷え切った体で暖かい家に帰ったら、鍋みたいなアツアツの料理をさっと用意する。そこへ冷蔵庫でキンと冷やしたビールをグラスに注ぐわけです。
 最高の組み合わせですよ。空気が乾燥しているのも、おいしく感じる理由かもしれないなあ。
佐藤 佐々木さんは料理の著書を出されているほどですから、「家飲み」も充実しているのでしょうね。
佐々木 料理は毎日しますが、凝った調理はしませんよ。調味料もごく基本的なものしか持っていませんし。スーパーで安く手に入る食材で、サッと作る料理が多いです。
 特に野菜なんかはできるだけ旬のものを選べば、調理も味付けもシンプルで十分おいしいですから。
 たとえば、小松菜やほうれん草など青菜は熱湯にさっとくぐらせ、醤油を少し垂らすだけ。根菜なら塩をまぶして蒸すだけ、そういう食べ方が実は一番うまいし、酒にもすごく合うんです。
 今はこんなに本格的な新ジャンルもあるし、お金をかけなくても毎日の家飲みは豊かにできるんですよね。

会社を出た瞬間から、「家飲み」のカウントダウンが始まる

佐藤 僕も家飲み、大好きです。仕事を終えて会社を出た瞬間から、家飲みに向けたカウントダウンを始めちゃうんですよ。
 自宅の近所のコンビニの前を通過したあたりから、「ようし、もうすぐ家に着くぞ、うまいビールを飲むぞ」と、いよいよ心が高揚してきます。
 帰宅したら冷蔵庫から1本を取り出して、ささやかな幸せを感じながらプシュッと缶を開ける。ゆっくりとグラスに注いだら、いよいよ待ちに待ったご褒美の時間です。
 のどがゴクゴク鳴るのを感じながら、ああ、おいしいな、今日も一日よく頑張ったなと満たされた気分になります。
 そして、飲み干した後には、明日も頑張ろうと自然に自分を鼓舞できる。こんなに長い時間楽しめて、翌日への活力までもらえるんだから、ビールってすごいなと心底思います。
サントリービール株式会社 マーケティング本部 ブランド戦略部 佐藤勇介氏
佐々木 それ、すごくいいですね。幸せな気分で一日を終えるための儀式みたいだ。昔は一気飲みなんかもはやったけれど、そうやって一つひとつのプロセスを丁寧に楽しむことで家飲みの満足感は格段に上がりますよ。
 さかなになる料理だって同じです。豆腐を冷ややっこにするとき、食べる前にキッチンペーパーにくるんで15分ほど置いておくだけで、ほどよく水分が切れて味わいが引き立ちます。このひと手間をかけることで、普通の豆腐がごちそうになるんです。

「ザ・プレミアム・モルツ」で培った製法を採用

佐藤 「金麦〈ゴールド・ラガー〉」も、手間暇かけて丁寧につくっています。
 麦芽本来の豊かな味わいを引き出すため、「ザ・プレミアム・モルツ」で培った「ダブルデコクション」という製法の技術を生かし、新ジャンルに最適な条件を探索し完成した「本格二段仕込製法」を採用しました。
 麦芽由来のコクを引き出す糖化という工程で、通常1度しか麦汁を煮出さないところを、2度行うことで、濃厚な麦汁を作り出しているんです。
佐々木 ひと手間加えて、おいしくしているんですね。
佐藤 力強いコクに加えて、毎日飲み続けたいと思えるのどごしの良さを実現するために、常温・常圧では引き出せない香味成分を引き出す当社独自の「HHS※製法」を採用しました。
 使用している主な麦芽はもちろん、金麦ブランドのこだわりでもある「旨味麦芽(RICH MALT)」です。醸造家と試行錯誤を繰り返しながら、最後の最後まで粘って作り上げた自信作です。
 ※HHSとは、High temperature(高温)、High pressur(高圧)、Steam(蒸気)の略。

ビールと相性抜群の意外な料理とは?

佐藤 佐々木さんなら、「金麦〈ゴールド・ラガー〉」にどんな料理を合わせますか?
佐々木 「金麦〈ゴールド・ラガー〉」って食事のお供というより、主役を張れる味だから何にでも合わせやすいと思います。あえて言うならトマトソースと卵を使った料理かな。
 「シャクシュカ」って料理をご存じですか。意外に思われるかもしれませんが、ビール類との相性は抜群なんです。
佐藤 初めて聞く料理です。
佐々木 昔、エジプトに長期出張していた時に出会った、中東の料理です。小さいフライパンにトマトソースを入れてぐつぐつ煮ながら、そっと生卵を何個か割り入れる。黄身の表面にうっすら膜が張って、半熟になったら出来上がり。
 そのまま食卓に出して、お玉で取り分けてスプーンですくって食べます。取り皿の中で熱々の卵とトマトソースを混ぜて、ハフハフしながらどうぞ。
 口の中が濃厚な風味で満たされたら、冷えた「金麦〈ゴールド・ラガー〉」で引き締めます。鍋はスキレットを使うと、そのまま食卓に出しても見栄えしますよ。
(写真:tbralnina/iStock)
佐藤 色合いがゴールド・ラガーのデザインみたいですね! おいしそうだなあ。トマト缶と卵があればすぐ作れそうですし、さっそく試してみます。
 今日は佐々木さんとお話しできて、家飲みの価値を改めて実感することができました。
佐々木 消費者のニーズはどんどん多様化していてメーカーさんも大変でしょうが、これからもうまいビールや新ジャンルで日本を元気づけてほしいな、期待していますよ。
(執筆:森田悦子 編集:奈良岡崇子 撮影:大畑陽子 デザイン:砂田優花)