【栗山英樹】プロにこそ伝えたい、結果より大切なもの

2019/2/10
プロ野球球団の春季キャンプがスタートした。新人選手や移籍してきたベテラン選手の入団、既存選手たちの成長を見ながら指揮官はチームをどう編成していくのか。その組織論とチーム哲学に迫る
一流選手がしのぎを削るプロスポーツは、常に「勝者」と「敗者」が決まり、「エース」と「エース以外」が生まれる世界だ。ほんの一握りしか勝利の栄光を手にすることができないプロの世界において選手の「幸福」とは何か、そして選手が成長するために指導者ができることとは──。
選手が壁にぶつかったときのコミュニケーションから引退後のキャリアの考え方まで、指揮官としての哲学を北海道日本ハムファイターズ監督の栗山英樹氏に聞いた。

プロの指導は「一燈照隅」

──プロ野球選手は小さい頃からエースとして育った人が多いイメージなのですが、入団後に周りのレベルの高さに直面して心くじける人もいるのではないでしょうか?
栗山 実はアマチュアとプロの差よりも、プロ野球選手になってから、同じチーム内で感じる実力差の方が大きいんです。すごい選手は本当にすごすぎるので、入団してまずそこにぶつかったままだと先に進めない。
だからまずは、選手それぞれが持っている本質的な大義を確認しますね。
プロ野球選手になることがゴールじゃないだろう、活躍することがゴールだろう、と。
栗山英樹 (くりやま・ひでき)/1961年生まれ。84年に内野手としてヤクルトスワローズに入団。90年のシーズン終了後、引退。引退後は解説者、スポーツジャーナリストとして活躍。2011年オフ、北海道日本ハムファイターズ監督に就任。
──その場合の「活躍」はどのように定義されているのでしょう?
栗山 それは「一燈照隅、萬燈照国」(意味:最初は一隅を照らすような小さな灯火でも、その灯火が十、百、万となれば、国中をも明るく照らすことになる)という言葉に尽きます。要するに、まずは自分が何か1つのことに対して、少しでも良いので一生懸命にやっていけば、それがどんどんつながっていくはず。そんなふうに捉えています。
──それぞれに役割があるということですね。
栗山 もちろん最初から4番バッターを諦めてはいけません。自分で諦めた瞬間に物事は達成されませんから。他人が馬鹿げていると言っても、やるときはやらないといけない。
大谷翔平の二刀流への挑戦がいい例ですよね。
メジャー移籍後もピッチャーとバッターの「二刀流」に挑戦し続けるエンゼルスの大谷翔平選手(写真:AP/アフロ)
誰もが無理だと言った。でも、その声に惑わされることなく大谷は結果を出しました。
だから選手それぞれの夢は捨てさせないように、でも現実的にその選手の歩いている道が本当に合っているか。それを確認していくのが、監督である私やコーチ陣の仕事だと思っています。

判断基準は「選手のため」

──選手の成長をサポートする一方で、チームとして勝つことも監督としての重要なミッションだと思います。チーム事情で選手の役割を変えなければならないときはどのように決断されているのでしょうか?