23andMeがAIを使った減量コーチングサービスとの提携を発表。DNAデータがあることでアドバイスの説得力が増すとしている。

パーソナライズされた健康情報

一般消費者向けDNA検査サービス大手の23andMeが、新しい健康サービスの提供を計画している。同社は、顧客が体重を数ポンド減量するのに役立つと期待しているが、一部の遺伝学専門家らは、このサービスの裏付けとされる科学研究についてまだ結論が出ていないとしている。
カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く23andMeは1月8日、ラーク・ヘルス(Lark Health)との提携を発表した。
ラーク・ヘルスの人工知能コーチングサービスは、減量や糖尿病予防に役立つパーソナライズされたアドバイスを、アプリを使って提供するものだ。ラーク・ヘルスでは、顧客が23andMeから得た体重に関連する遺伝子データを、同社のサービスに組み込めるようにするという。
23andMeの事業開発担当バイスプレジデント、エミリー・ドラバント=コンリーは「これは、顧客に遺伝子情報をもっと役立ててもらいたいという願いから生まれたサービスだ」と述べた。
今回の提携により、23andMeは遺伝子情報の分析結果を利用して、健康や家族の歴史についてパーソナライズされたアドバイスを提供する企業がひしめく市場に進出することになる。
ただし、この市場は批判されることも多い。
この技術を信じる人たちは、パーソナライズされた健康情報という革命的進歩の到来だとして歓迎している。しかし、こうしたツールが本当に有用なのかはまだ証明されていないと批判的な声も上がっている。
スクリプス研究所の遺伝学研究者エリック・トポルは「アイディアとしては良いと思うが、前向き研究(prospective study、NP注:研究開始から新たに生じる事象について調査する研究)を行い、査読を受けた論文という裏付けなしには、こうしたアルゴリズムに何か有用な点があるのかはわからない」と語る。
23andMeは今回の提携について、同社のデータはすでに人気があり効果もありそうなサービスを、よりスマートにするために使われているだけだと主張している。

AIが食事、運動、睡眠の記録を支援

ラーク・ヘルスが提供するウェルネスおよび糖尿病予防プログラムでは、AIコーチが食事や運動、睡眠といった項目の記録を手伝い、健康に関する目標を達成できるようアドバイスを表示してくれる。
ユーザーはAIコーチにメッセージを送り、ハンバーガーは夕食のメニューとして正しい選択かどうか相談するといった具合だ。
そのユーザーについて、23andMeの体重関係の遺伝子レポートが牛肉や羊肉といった赤肉を制限するようにと提案していたら、AIコーチは「ハンバーガーはやめておきましょう」とアドバイスすることになる。
「遺伝子情報は非常にやる気を与えてくれる」と、ドラバント=コンリーは言う。「一人ひとり内容が異なるので、提案をより真剣に受け止めてもらえる」
23andMeは、自社のレポートを実用的なアドバイスとして活用することに、長らく関心を抱いてきた。同社は2018年1月、DNAとダイエット成功の関連性を解明するため、10万人を対象とした研究を開始した。ゆくゆくはパーソナライズされた減量アドバイスを提供したいという狙いがあってのことだ。
ラーク・ヘルスが提供するAIヘルスコーチのユーザー数は200万人以上にのぼる。同社の糖尿病予防プログラムは米国疾病予防管理センターにも認められており、このAIコーチには少なくとも人間のコーチと同じくらいの効果があると示唆する査読付き論文もある。
ラーク・ヘルスのジュリア・フーCEOは「23andMeのレポートで、事実としてのデータはわかるが、現実の行動を変えることは難しい」と語る。「我々がしたことはデータを使って、単に指標だけではなく、その人に最も適した介入という形で適切なタイミングに表示するということだ」

効果検証にはさらなる研究が必要

ラーク・ヘルスによるこのサービスの月額使用料は19.99ドルだ。遺伝子データの共有を選択したユーザーについては、23andMeのレポートから8種類のデータがラーク・ヘルスのアプリに取り込まれる。
具体的には、似たような遺伝子を持つ人々の体重プロファイルや、苦味のある食べ物に対する感覚が鋭敏かどうか、深い睡眠に関連する傾向といったものだ。
DNAデータをもとにラーク・ヘルスが行う提案は「もっと睡眠を取りましょう」「健康な食生活をしましょう」といった、ダイエットをしている人なら誰でも聞かされるであろうタイプのアドバイスだ。だが、それをパーソナライズすることで提案の効果が高まると期待されている。
一方でスクリプス研究所のトポルは、こうしたパーソナライズされた健康アドバイスの効果については、さらなる研究結果を確認しなければ賛同できないと述べる。
「それまでは、こうしたサービスの価値はまったく不明で不確実だ。このコーチングが一人ひとりに合わせたものでなく、誰に対してもまったく同じアドバイスをしているという結果になる可能性もある」と、トポルは述べている。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Kristen V Brown記者、翻訳:半井明里/ガリレオ、写真:©2019 Bloomberg L.P)
©2019 Bloomberg L.P
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.