起業家機構(EO)プエルトリコのメンバーであるカルロス・メレンデスは、ウォーヴンウェア(Wovenware)の共同創業者兼最高執行責任者(COO)を務めている。同社は、ビジネス上の問題を解決するスマートなカスタムソリューションを開発する人工知能・ソフトウェア開発会社だ。

2019年に人工知能がビジネス機能にどのような影響をもたらすのか、メレンデスに話を聞いた。

さらに飛躍的な進歩を遂げる年に

人工知能(AI)は2018年にも前進してきたが、2019年には飛躍的に進歩する態勢が整っている。さまざまな業界の企業がAI技術に頼り、より多くの情報を集め、顧客と結びつき、より確かな情報にもとづいてビジネス上の決断を下している。
IDC、フォレスター・リサーチ、ガートナーといった大手調査会社は、AI技術を2019年の最重要戦略的イニシアチブと見なしている。
・IDCによれば、デジタル変革は今後数年にわたってビジネスの必須項目であり、AIがその中心的な役割を担うという。AIアプリは企業全体のアプリケーションに欠かせない要素となり、全世界の売上は2021年までに520億ドルを超えるとIDCは予測している。

・ガートナーによれば、データにもとづく科学的仮説構築のほか、ロボット、ドローン、自律走行車を含むモノのインターネット(IoT)デバイスに対するインテリジェンスの提供に関して、AIの果たす役割が大きくなっているという。

・フォレスターの予測によれば、より迅速にビジネスから利益を得たい企業が実用的なアプリケーションを導入していることから、2019年には実用的なAIに大きな注目が集まるという。
いずれの調査会社も、AIが今後、ビジネス慣行に確固とした根をはり、その役割も拡大していくと見ている。
ウォーヴンウェアも同じ見解だ。企業がAIの性能を知り、何ができるか気づけば(もしくは競合会社がどんな恩恵を受けているかを知ったら)、もう元に戻ることはできないと認識している。
ではここから、2019年に大きな影響を及ぼすと予想される4つのAIトレンドを具体的に紹介していこう。

1. 画像認識、物体検出、顔認識

1枚の写真は1000語あるいはそれ以上の価値がある。衛星画像のデータが増加し、調達価格が下落するのに伴い──さまざまな目的に応じて画像を特定する必要性も相まって──画像認識、物体検出、顔認識に対する関心も高まるだろう。
画像認識と物体検出は、セキュリティや詐欺防止という点で重要性を増している。というのも、静止画像や動画からパターンや情報を見つけ出したいと考える組織がAIアプリを頼みにしているからだ。
AI技術の進歩によって「動き」を分析することができるようになり、医療や法執行といった分野で新たなアプリケーションが生まれる可能性がある。
たとえば、パーキンソン病などの神経疾患患者について、その歩き方や歩行能力がどのように変化するかを分析できるかもしれない。また、センサー技術やカメラとAIを組み合わせれば、壁の向こうにいる人の行動(たとえば、武器に手をのばすなどの行動)を認識するのに役立つ可能性がある。

2. 静的インテリジェンスだけでは不十分

企業は長年にわたり、ビジネスインテリジェンスに重点を置き、過去のデータから競争に関する重要な情報を集め、それをダッシュボードやグラフで閲覧してきた。
だが、情報にもとづいて決断を下すためには、もはや静的な情報だけでは不十分だ。競争の激しい現代の市場では、昨日や今日の結果を見るだけでなく、将来に起こると思われることを把握し、変化に備えて計画を立てておくことが求められる。
2019年はビジネスインテリジェンスに代わって、ビジネスインサイトが注目されるようになるだろう。
ビジネスインサイトでは、成果指向型の分析をもとにパフォーマンスを判断する。つまり、成果を基準に分析項目を測定し、過去データをもとに成果を予測するのだ。レポートやダッシュボードではなく、情報からユーザーのためにどのような価値を生み出せるかが重要となる。

3. 次なるAIの最前線は「エッジ」

センサーなどのモノのインターネット(IoT)デバイスの利用拡大に伴い、企業は「エッジ」で情報を集めるようになるだろう。エッジとはつまり、データセンターのクラウドではなく、データソースやその近くという意味だ。
どうすれば最も効率的にエッジでデータを収集し、処理し、精製することができるのか。企業はその点に目を向けるようになるだろう。
そうしたアルゴリズムには膨大な演算力が求められることから、エッジで収集したデータをどのように高速処理するかが最重要課題になる。

4. データサイエンティストは依然として不足

AIアプリの需要は拡大を続けているが、高度な能力を持つデータサイエンティストに対するニーズも同様だ。
AIプロジェクトでは、データサイエンティストが絶えず注意を払い、情報をフィードすることが求められる。一度で終わりというものではないのだ。データサイエンティスはアルゴリズムの開発に加え、AIアプリを訓練し、アルゴリズムを継続的に改良して、新たなデータやインサイトを反映させなければならない。
大学を卒業するデータサイエンティスだけで現在のニーズをまかなうことはできないため、AIの需要拡大に伴い、人材不足はますます悪化するはずだ。
汎用ソリューションに対応するセルフサービス型AIを導入するにしても、より複雑な問題に対応するカスタムメイドの予測分析アルゴリズムを使うにしても、企業は提携企業に頼らざるをえないだろう。
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AIが医療や金融サービス、セキュリティといったさまざまな企業や市場を変えつつあることに、疑いの余地はない。だが、かなり進歩してきたとはいえ、われわれはまだ出走ゲートに立っている段階だ。
技術がさらに進歩すれば、新たなニーズが出現する。われわれは今後も、IoTなどの他のイノベーションとAIを組み合わせる方法を模索していくことになるだろう。それはわくわくするような冒険だ。しかも、お楽しみはまだこれからなのだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Entrepreneurs' Organization、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:karpenko_ilia/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.