[ワシントン 10日 ロイター] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は10日、当局者が今年の米経済の動向を見守る中でFRBは追加利上げの判断を忍耐強く行うことができるとの認識をあらためて示した。

議長は首都ワシントンのエコノミック・クラブで、「とりわけインフレが低く抑制されている中で、われわれは忍耐強くなれるし、根気よく注意して見守ることが可能だ」と言明。好調な経済指標と市場のリスク懸念という2つの側面を見極める考えを明らかにした。

S&P総合500種<.SPX>はこの日、0.45%高と小幅上昇し、米国債利回りはほぼ横ばいとなった。一方、11月下旬以降の3回の議長発言後には、株価は平均で2.4%変動していた。昨年2月の就任後、議長が公の場で行った17回の発言の中で、今月4日は市場の反応が最も大きく、S&P500は3.43%上昇、米10年債利回り<US10YT=RR>は11ベーシスポイント(bp)上昇した。

10日の市場の反応が控えめだったことは、パウエル議長が投資家を驚かせることなくFRBの政策を伝達する感触をつかんだことを反映している可能性がある。

こうした中、セントルイス地区連銀のブラード総裁は10日の講演で、FRBの利上げサイクルは「終わり」に達していると言明した。

一方、パウエル議長や他の当局者はより控えめな発言にとどめており、とりわけ12月の非農業部門雇用者数が大きく増加したことを受け、経済指標は引き続き力強いとの認識を示している。

パウエル議長は10日、金利の道筋とは別に、FRBのバランスシートを現状より「かなり小さい」規模に縮小する取り組みを継続する考えも示した。

それでも、PGIMフィクスト・インカムの首席投資ストラテジスト、ロバート・ティップ氏は「パウエル議長や他の当局者のコメントは新たな語り口となっている。大局的に見れば、(追加利上げ)余地はそれほど大きくなく、(利上げを)急ぐ必要もない」と指摘した。

当局者らのメッセージには、FRBが3カ月ごとに公表している金利見通しを過度に重要視しない姿勢を示す狙いもある。12月に公表されたFRB当局者の今年の利上げ予想は中央値で2回となったが、パウエル議長はこれについて、公式予想や「計画」と捉えるのは誤りだとし、「そうした計画は存在しない」と指摘。「それは今年の見通しが非常に好調だった場合の話だ」とした上で、状況に応じてFRBとして政策を調整する考えを示した。

市場では貿易摩擦や海外の成長減速を巡る懸念も出ているが、パウエル議長は、現在のところ米景気後退の可能性が強まったことを示す材料はないと指摘。

「特に現時点では、あらかじめ決められた金利の道筋があるわけでない」とし、「(世界経済が一段と鈍化すれば)柔軟、迅速に政策を展開することは可能だと約束できる」と述べた。

米政府機関の一部閉鎖については、長引けば経済指標に影響が「非常に早く」表れるほか、統計を発表する一部機関が閉鎖しているため、景気が認識しにくくなるとした。

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