[ブリュッセル 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)高官によると、EUは英国の離脱延期に応じる用意があり、その方法について協議している。

延期の期間については数週間から1年まで様々なシナリオが考えられているが、延期によって無秩序な離脱を回避できるか疑問視する声もあるという。

事情に詳しいEU加盟国やEU機関の高官はロイターに対し、英国のメイ首相が離脱案に対する議会の支持獲得に苦慮する中、3月29日の離脱日が延期される可能性が高まっていると明らかにした。

ある高官は、離脱案が来週の英議会採決で否決されるか、もしくは採決が再延期されるとEU首脳は予想しているとし、「延期がおそらく最も可能性の高い結果だろう」と話した。

別の高官は「延期はもちろん可能だ。合意なき離脱は誰も望んでいない」とした上で、「ただ、何のための延期かという疑問が残る。総選挙のためか、国民投票再実施のためか」と指摘。英国が問題を解決できるか不透明なため、EU首脳は延期の意味を疑問視するだろうと述べた。

メイ首相が離脱案への支持を得られなければ、離脱手続きは未知の領域に入る。EU当局者によると、そうした事態への対応を巡る英国とEUの協議は非常に限られた範囲でしか行われておらず、各国首脳の最側近しか関与していない。当局者の1人によると、EUの専門家は様々なシナリオを用意しており、英政府は離脱延期の仕組みについて探っているという。

英国とEUが離脱延期の可能性を協議しているとの報道を受け、メイ政権は8日、延期の計画はないと強調した。[nL3N1Z75GG][nL3N1Z83QE]

EUが検討しているシナリオには以下が含まれている。

─ 英国がEU基本条約(リスボン条約)50条に基づく離脱の延期を要請。英国を除くEU加盟27カ国による全会一致の承認が必要になる。EU当局者によると、27カ国はこれを承認する可能性が高い。

─ 英国が離脱通知を撤回する一方、英国内の離脱支持派の反発を回避するため、短期間で再通知する意向を示す。EU司法裁判所の12月の判断によると、離脱撤回にはEU側の承認は不要で、比較的容易な手続きとなる可能性がある。

─ 英国が離脱の方法もしくは是非を問う国民投票、または選挙を実施するまで離脱通知を撤回。

─ 欧州議会への影響を回避するため、離脱を最長3カ月延期。欧州議会は5月下旬の選挙を経て7月に新議会が開会する。

─ 最長1年の延期。このシナリオでは新欧州議会の法的位置付けが微妙になる。英国は向こう1年以内の離脱を予定しながら5月に新たな欧州議会議員を選出することが必要になる可能性がある。

*9日配信の記事で9段落目の「EU基本条約は最長1年の延期を認めている」を削除しました。