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注目のコメント
何が問題かというと、日本側に外国人材に対する要望があるのだけど、外国人はその要望通りに動いてはくれない、ということです。日本側の要望というのは、国の要望と企業の要望があり、以下のようなものです。
①人手不足の産業(特に地方の農漁業や観光業)に従事してほしい(国と企業双方の要望)
②永住はしてほしくない。国籍付与は考えていない。数年で出て行ってほしい。そのため、家族は連れてこないでほしい
(国の要望)
①については、外国人材は高収入の仕事につきたいために首都圏に移動するので、要望通りに動いてくれません。そもそもそんなに高い給料が払えるなら、地方であっても日本人が働きに来るでしょう。労働法と最低賃金を適用せずに外国人を地方の低給与産業に縛り付けようとすれば、国の強制的な介入なしには不可能です。
②については、人口減少対策のためには外国人に移住してもらうのが有効なはずですが、世論としても移民が人口の何割かを占めるようにしてまで人口を維持しようという意見は少数でしょうから、政府与党も行政も、永住や子供の世代までの定住は阻止しようとするでしょう。外国人労働者は受け入れても彼らの定住は阻止している国、というのはあって、シンガポールやUAEなどです。収容と監視を徹底して、不法滞留すれば大変な罰則がある(雇用者にも罰則があるのが重要です)と知らしめれば、移民労働者の定住は阻止できます。これまた、相当な国の介入が必要です。
①地方で低給与労働に縛り付ける、②永住は阻止する、というのが、企業を中心に政府与党、省庁も含めた日本人の世論の大勢ではないかと思われますが、もちろんこれは、「選ばれる国」とは見られないでしょう。
新しい在留制度は、①と②についてどうするのか、確かに中途半端です。もはや先進国とは見られなくなるような違反外国人の巨大な収容所を用意して①と②の目的を完遂するのか、そうでなければ、外国人材が定住していくと考えた方がいいでしょう。西ヨーロッパや北米、マレーシアで起きていることです。外国人材というのは、そんな都合のいい人たちではないです。高給を用意して働きに来てもらうか商売をたたむか、家族連れで永住してもらうか日本企業の方から出かけていくか、自らもコストを払って妥協点を探すしかないでしょう。元日経新聞記者で、2014年よりアカデミズムの世界で「移民研究」をされている藤巻秀樹先生に寄稿していただきました。原稿内で指摘がある、
「法務省は、出入国管理政策には詳しいものの、外国人の社会統合政策には精通していない」
「 欧州の移民大国であるドイツもフランスも、初めは移民政策のつもりはなかった。(略)日本もいずれ「移民国家」宣言をするという事態になるかもしれない」
という指摘は、その通りだと思います。私自身、リーマン・ショック前後に、ブラジルやペルー出身の日系人の取材をずっとしていました。当時からあまり状況は変わっていないなという印象です。外国人労働者については、景気が良い時には良く報じられ、景気が悪くなると悪く報じられます。次の景気悪化局面でも、社会の矛先が彼らに向くと思います。そういう時に、今回の「外国人材の受け入れ」のホンネが出てくると思います。政府だけでなく、企業・自治体・住民を巻き込んで、「いかに外国人労働者を受け入れていくか」という議論が必要だと思います。先秋の議論では「いかに外国人労働者を制限するか」ばかりに費やされ、外国人側の視点がすっぽり抜け落ちていたと思います。