[東京 27日 ロイター] - 野村ホールディングス<8604.T>の永井浩二グループCEO(最高経営責任者)はロイターとのインタビューで、リテール部門のうち、口座数の7割近くを占めるマス層に対してはオンラインサービスを強化し、収益を改善していく方針を示した。

野村の預かり資産123兆円のうち、超富裕層・富裕層を除くマス層の顧客の預かり資産は約38兆円。永井CEOは「膨大なネット証券のプラットフォームがあるが、優れたサービスを提供できていない。今後改善を図り、収益化していく」と語った。

さらに、リテール部門の経費構造改革のために、年間コスト約3000億円の10%を3年で削減すると説明した。

インタビューの詳細は次の通り。

――リテール部門(営業部門)の収益をどのように伸ばしていくのか。

「特にこの6年、力を入れたのは530万口座の上位を占める富裕層向けサービスの拡充だ。実績も上がっており、今後は専門的に取り組むチームを倍増させる。コンサルティング・プラットフォームをさらに広めることによって、ここの収益を拡大させていく」

「一方で少しおろそかになっていたのが、富裕層の下位にいるマス層だ。350万口座ぐらいあり、預かり資産も38兆円程度ある。この顧客層はオンラインサービスの契約を結んでもらっており、一定程度は利用してもらっている。ところが、あまり力を入れてこなかったため、はっきり言ってサービスが充実していない。ある意味、日本最大規模のオンライン証券なので、もう1度見直して注力していく。マス層に対しては(営業職員という)人手をかけるのではなく、オンラインも含めたデジタライゼーションをどうやって利用していくのかという議論になっていく」

――LINE<3938.T>との提携も打ち出している。

「収益よりもどうやったら間口を広げられるだろうと考えた。メガバンクは3000―4000万口座を持っているが、うちは頑張ってもせいぜい530万口座だ。若い人は基本的に証券口座を持たない。退職金が入ったり、親の相続などをきっかけにして初めて口座を作る。それではやっぱり遅い。1つの方法として、LINEのような7800万ユーザー持っているところと組んで、将来を見据えて裾野を広げていく」

――リテール部門の年間コスト3000億円を3年で10%削減することを打ち出した。

「リテールの1番大きな問題点は、預かり資産は順調に増えてきているものの、トップラインが上がっていないことと、コストが硬直的になってしまっていること。トップラインはそう簡単には上がらないと覚悟している。従って、コストに手を付けざるを得ない。店舗の統廃合による不動産経費、人件費では給与の業績連動の割合を高める。そのほかはシステム経費などで3分の1ずつのイメージだ」

――海外事業をどのように安定的、持続的に成長させるのか。

「グローバルのプラットフォームは、日本やアジアの顧客のニーズに応えるために必要だ。そのために絶対に維持する。しかし、効率性も必要で、そのために不採算ビジネス、顧客から求められていない競争力のないビジネスはやめている。ただ、グローバルのフィープール(投資銀行業務の市場規模)が縮小しているのが現実だ。目標としている一定のシェアを確保するしかない」

――米国はじめ海外では企業向けの取り組みを強化している。

「米国では収益の源泉なのでバランスシートを使ったセカンダリー・トレーディング業務をやめるつもりはないが、さらに広げる考えもない。一定のシェアが確保できればいい」

「それよりも今後拡大させるのは、マーケット・リスクを取らず、バランスシートもあまり使わない、アドバイザリーやプライマリー系のビジネスだ。それに加えて、たとえば、企業のM&Aアドバイザーをした時に生じる買収ファイナンスや、あるいは為替ヘッジなどを提供するさまざまなソリューション・ビジネスだ。機関投資家向けよりも、企業向けのビジネスを強化する。ここで収益を出していく」

*このインタビューは21日に行いました。

(布施太郎)