「答えは現場にある」Oisix流、顧客を裏切る体験の作り方
オイシックス・ラ・大地株式会社 | NewsPicks Brand Design
2018/12/29
消費者ニーズの細分化やデジタル化による顧客接点の多様化などから、多くの企業で「優れた顧客体験」の必要性が認識されている。しかし、本当にユーザーファーストで顧客体験を生み出せる企業は少ないのではないだろうか。
顧客すら気づかない価値の創造や、期待値の低い部分でもいかに体験価値を上げ、良い意味で「お客様を裏切る」体験をつくっていけるかに重きを置いてきたOisix。オンライン・オフラインでのタッチポイントを増やしながら、徹底した顧客目線で新しい体験を創出している。
オイシックス・ラ・大地の執行役員・COCO奥谷孝司氏と、EC事業本部 副本部長・CX室 室長の白石夏樹氏に、顧客体験の作り方について話を聞いた。
顧客すら気づかない価値の創造や、期待値の低い部分でもいかに体験価値を上げ、良い意味で「お客様を裏切る」体験をつくっていけるかに重きを置いてきたOisix。オンライン・オフラインでのタッチポイントを増やしながら、徹底した顧客目線で新しい体験を創出している。
オイシックス・ラ・大地の執行役員・COCO奥谷孝司氏と、EC事業本部 副本部長・CX室 室長の白石夏樹氏に、顧客体験の作り方について話を聞いた。
ゼロからプラスの体験を生み出すCX室
──白石さんが室長を務める、顧客体験を生むために新設したCX室では、具体的にどのようなことをしているのでしょうか?
白石 もともとオイシックスには、社長の高島を委員長にした「お客様満足度向上委員会」があります。多い時で週に1000件以上も寄せられるお客様からの改善要望の声を毎週全て読み込んで集計して改善するのですが、これは“マイナスをゼロ”にする活動。
これに加えてCX室で取り組んでいるのは、“ゼロをプラス”にして期待値を超えるサービスを作る活動です。弊社では、お客様がもともと期待していなかったところに優れた体験を生み出すことを、良い意味で「お客様を裏切る」と呼んでいます。
たとえば、入会後に継続するかしないかを決めるターニングポイントは5〜6週目に訪れるため、入会からの1カ月間でいかにお客様のニーズや期待を超える体験をしてもらうかが大切なんですね。
そこで、入会時に期待していることや、Oisixで食べたいものなどをヒアリングし、その期待値に沿った商品の提案や、期待を超える体験を考えてサービスに組み込みました。
もちろん、継続しなかったお客様にも、その理由は何だったのか、どんな商品の提案があれば良かったのかなど電話でインタビューを実施。
定量的なデータと定性的なリアルの声から検証を重ねた結果、活動を始めて半年が経った今、継続率は1.5倍にまで増やせました。
日常の行動を聞く、徹底したお客様インタビュー
──顧客体験を作るために、こだわっていることはありますか?
奥谷 この会社にジョインして面白いなと思うのは、日々お客様とリアルに対面しているオフラインの会社以上に、お客様の声をきちんと聞いていること。インタビューも漠然と話を聞くのではなく、仮説を持ってやっているんです。しかも、その数がとても多い。
白石 そうですね。検証したいことは何かを明確にしてインタビューをしています。自分たちはどのような仮説を持ち、その実態はどうなのかを深掘りする。そのため、商品やサービスに対しての「意見」を求めるのではなく、「日々の行動を聞く」ことが多いです。
何時に起きて何時に家を出て、通勤時間はどれくらいで、何時に帰ってくるのか。料理はいつ誰が作り、誰と一緒に食べるのかなど、寝るまでの行動を家族全員分、徹底的に聞いてお客様と向き合います。
また、創業時は「安心安全な野菜や果物を食べたい」ニーズが中心でしたが、今はお客様層もニーズも変化しているため、それに向き合った商品・事業づくりをしています。
特に「時短をしながらより豊かな食卓を実現する“プレミアム時短”」にはこだわっており、そのひとつとして形になっているのが「20分で主菜と副菜を作れるミールキット・Kit Oisix」。
Kit Oisixは会員の半数以上が購買している人気商品ですが、最初はインタビューを徹底しました。
そのなかで、特にお客様が気にしていたのが、子どもや家族が苦手な食材が入っていないか、面倒な工程はないかということ。だから、最初のタッチポイントとなる商品名やビジュアルで「嫌い・面倒」を取り除くようにしたんです。
たとえば、少ない油で揚げ物を作れる「揚げ焼き」という商品。「揚げる」工程は嫌がられる傾向にあるので、写真を見て「揚げ物だ」と認識されてしまうと選ばれません。
「揚げ物は面倒だけど本当は子どもが好きだから食べさせたい」という実態があるのは分かっていたので、商品名の最初に「揚げ焼き」というワードを入れて、購入体験のハードルを下げました。
こうした、さまざまな声に応えられるような見せ方や商品開発をした結果、Kit Oisixは不動の人気商品に成長したのです。
ネットでは人気でも、リアルでは売れない
──白石さんは会員に向けての顧客体験を創出されていますが、奥谷さんはオフラインでのタッチポイントを作ることで会員につながるような体験を生み出していると伺いました。
奥谷 私はオイシックス、らでぃっしゅぼーや、大地を守る会の3ブランドの統合マーケティングを担っており、主にオフラインでのタッチポイントを増やす活動をしています。
なかでも、試行錯誤を続けているのが店舗販売。そもそも、ECとリアル店舗はビジネスモデルが違うから、成功体験をそのまま持ってきてもうまくいかないんですね。実際、ECでは人気のKit Oisixも、店舗で初めて目にした人が手に取ることは少ない。
ただ、一度でも食べてもらえれば簡単に美味しい料理が作れることをわかってもらえるので、今は有人でいかに出来上がりをイメージできるかを工夫しながら、販売方法を模索しているところです。
オフラインの店舗で知ったKit Oisixをきっかけにオイシックスのファンになり、オンラインのEC サイトでお買い物をする人を増やしたいなと思っています。
もう一つ、リアルのタッチポイントとして保育園の給食用に食材を提供する事業も注力しています。
家で出す野菜は残すのに、保育園で出る野菜は美味しそうに食べるとなれば、お母さんへのタッチポイントにつながるはず。現在は関東を中心に約300園へ提供しています。
──ネットでは買いやすくても、リアル店舗になると買いにくくなるんですね。
奥谷 ミールキットを試す前は、どうしても下処理された食材を使った時短料理への後ろめたさがあるんです。
EC は、野菜や肉、魚など1週間分まとめて購入することが多いから、他の商品と一緒にKit Oisixも買いやすいので、心理的ハードルが低いんですね。
一方、店舗でKit Oisixを知らない人に買ってもらうには、手に取ったときのお得感やワクワク感、買う価値を実感してもらうことが大切になるんです。手に取りやすい、買いたくなるパッケージを検証するのも必要。
でも、成功への答えは全て現場にあります。
たとえば、Kit Oisixがスーパーの野菜売り場に並んでいたら「今日は自分で作ろう」と思って買わないけれど、調理時間ゼロの惣菜売り場に並んでいれば「20分で作れるならKit Oisixを買ってみよう」と考えるかもしれない。
そういった仮説を持って売り場づくりをすれば、おのずと答えが見えてきます。
店舗の場所も同じです。現在、仮説検証を繰り返している、埼玉県・新越谷に作った小型店舗があるのですが、これは都内で開催したKit Oisixの移動販売や、社員食堂での販売実験がきっかけで生まれた店舗。
新越谷にある小型店舗
都内で何度か販売実験を行ううちに、自宅近くや駅前にKit Oisixの店舗があれば買うのではないかという仮説が生まれたんですね。
たまたま会社の近くでイベントをしていたから買ったかもしれないけれど、日常的にそこでKit Oisixを買って満員電車に揺られて帰りたくない。そこで新越谷に店舗を作りました。
日常的に立ち寄れるお店で、「今日は簡単に美味しいものを作りたいな」「献立を考えるのは面倒だな」といった、お客様ニーズの仮説を持って検証した結果が、今少しずつ良い兆しを見せ始めています。
食に対する潜在的なストレスまで解決する
──より良い顧客体験を創出するためにこれから取り組みたいことや、実現させたい世界観を教えてください。
白石 お客様の潜在的なニーズに対応したいと思っています。たとえばスーパーに行くと、「今日は何を作ろうかな」と冷蔵庫の中身や家族のリクエスト、子どもの給食などを考慮しながら、ちょうどいい献立を探しますよね。
冷蔵庫の使わないといけない食材と、自分が作れるレパートリーの掛け合わせで献立が決まるわけですが、「使わないといけない」「作らないといけない」行動はストレスですし大変なこと。
でも、Kit Oisixなら献立を考える必要はないし、食材も余りません。レストランで自分が食べたいものを注文して食べるように、普段の食卓もストレスなく純粋に食を楽しめるように変えていきたいと思っています。
それから僕自身、子どもが生まれたことで、子育てしながらの毎日の料理は本当に大変だということを実感しているんです。保育園から帰宅後、30分くらいでご飯をあげないとぐずり始めるけれど、お菓子はなるべくあげたくない。
同じような思いを持ったお客様の声から、Kit Oisixには「お子さんにおやつチーズをあげる」を調理工程のStep1に入れた商品が生まれました。こうした「ご飯を作る背景にあるストレス」をなくしたいと思っています。
奥谷 私はKit OisixをECでの流行りで終わらせるのではなく、オフラインの店舗でもKit Oisixを買うのが当たり前の世界観を作りたいと思っています。本当に価値ある商品は当然オフラインでも売れます。そのために売り方や伝え方を進化させていきたい。
ネット企業がオフラインに出たときのタッチポイントの作り方、顧客体験の作り方を確立させたいですね。
机上ではない、現場を見て事業をつくる
──オンラインとオフラインの両方でタッチポイントを増やし、顧客体験を創出しているオイシックス。どのような人が活躍できますか?
白石 恋人や家族、友達に喜んでもらうために何か企画するのが好きな人は向いていると思います。
入社後は、まずお客様に会って理解することに時間を存分に割いてもらうので、社歴が浅くても「お客様に喜んでもらうためには何をしたらいいのか」を的確に考えられるようになります。
また、時代や環境の変化でお客様の声やニーズが少しずつ変わっていくからこそ、現場を理解する時間の多い若手は新規事業の立ち上げなど、チャレンジする機会は多いと思います。
奥谷 まだまだベンチャー気質の残る、挑戦を続ける会社ですから、自発性のあるメンバーが多く、抜擢人事もよくあります。若手に限らず、キャリアを積んだ転職組も働きやすい。タブーはないので、何でも提案して実現しやすいから仕事の領域は広がりますね。
私は前職の良品計画で、家具や衣類・日用雑貨などを販売していましたが、在庫を持てる商品と腐ってしまう野菜とでは、売り方が全然違います。
野菜は突然仕入れられるものではないし、不作のときは価格も変動します。それを、いかにロスなく売ればいいのか、ネット企業のオフライン販売は何が正解なのかなど、まだ誰も解決していない問題に仮説を持って検証・実証したい、人の心を射止めたいと思う人なら、非常に面白い会社だと思いますよ。
(取材・文:田村朋美、写真:岡村大輔、イラスト:星野美緒)
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