自宅から仮想現実レースに参加

家にいるサイクリストたちを対象に、仮想現実レースで競い合う場を提供するZwiftが、1億2000万ドル(約132.3億円)を調達した。eスポーツリーグを設立し、サイクリングだけでなくローイングなどに拡大するための資金だ。
カリフォルニア州ロングビーチを拠点とするZwiftは、リビングルームにいながらヒルクライムなどの屋外トレーニングをシミュレーションできるサイクリスト向けソフトの開発を手がけてきた。ユーザーはこのソフトを使ってトレーニングすることもできるし、ユーザー同士で競い合うこともできる。
レースの模様は、タブレットやノートパソコン、あるいはスマホの画面に表示される。屋内バイクやトレッドミルなどのトレーニング器具から採取される、自身のパフォーマンスに関するデータも一緒だ。
Zwiftの共同創業者でもあるエリック・ミン最高経営責任者(CEO)はインタビューで、今回調達した資金は「KISS Super League」の設立に役立てられると語った。Zwiftは12月14日、プロ・サイクリングチーム4組が参加する競技大会の発足について発表した。
eスポーツは、いままさに急成長している産業だ。
アマゾン傘下のTwitchは2018年に入り、ゲームソフト会社のActivision Blizzardと推定9000万ドル(約100億円)で2年契約を結び、同社のアクション・シューティングゲーム『オーバーウォッチ』のリーグ戦をストリーミング配信すると発表した。
ソフトウェア大手のSAPもまた、人材の発掘を目的としてeスポーツを支援している。
オンライン対戦ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』世界大会の2018年の決勝戦は、韓国・仁川にある座席数5万の文鶴競技場で行われ、2チームが優勝をかけて激しい戦いを繰り広げた。

eスポーツ創設はプロにもメリット

ロンドンにもオフィスを持つZwiftの資金調達をリードしたのは、やはりロンドンを拠点とするベンチャーキャピタルのHighland Europeだ。
今回のラウンドには、小売・消費者ブランドの支援を専門とするロンドンの投資会社Trueと、シリコンバレーとボストンを拠点にスポーツ関連の技術・メディアへの投資を行うCauseway Media Partnersも参加した。
Zwiftはeスポーツリーグ設立のほかにも、現行サービスをローイングマシンにも拡大することや、現地言語での製品展開も計画しているとミンCEOは語る。世界150カ国にユーザーを持つZwiftだが、現在のところサービスは英語のみで提供されている。
Zwiftのプラットフォームを使ったeスポーツシーズンの創設は、プロサイクリングにとってプラスになるはずだと、ミンCEOは話す。
スポンサーにとっては、メディアに露出する機会が増える。アスリートにとっても、屋外でのロードレースがほとんど行われない晩冬から早春にかけて、トレーニングを行ったり、レースに参加したりする場が得られるからだ。
ミンCEOは、以前はJPモルガンのインベストメントバンカーだった。コモディティートレーダー向けの電子取引・リスク管理プラットフォーム「Sakonnet Technology」を立ち上げた人物でもある。
ミンCEOによると、2014年にZwiftを設立したきっかけはサイクリングに対する情熱と、1990年代後半にニューヨークからロンドンに引っ越してからずっと感じていたフラストレーションだったという。
ニューヨークにいたころはセントラルパークでいっしょにトレーニングするサイクリスト仲間がいたが、ロンドンではそのようなネットワークが見つけられなかったというのだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jeremy Kahn記者、翻訳:阪本博希/ガリレオ、写真:www.zwift.com)
©2018 Bloomberg L.P
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.