一流知識人による、20分間の知性あふれるTEDスピーチを見て2018年を締めくくろう。
天文学から社会的正義、人工知能まで
「TED」のスピーカーはどうやって選ばれているのか、疑問に思ったことはないだろうか。
選んでいるのは、TED代表でキュレーターを務めるクリス・アンダーソンだ。彼は無数のスピーカー候補のなかから、名誉あるメインステージに立つ人を厳選する。優れた知識人と、そうでない知識人を見分けるのがとてもうまいのは明らかだ。
だからこそTEDファンは(あるいは、20分という短い時間で知識や気づきを得たいと思っている人はみな)アンダーソンが選りすぐった「2018年TEDトーク10選」に注目すべきだ。
テーマは天文学から社会的正義、人工知能まで多岐にわたる。世界の見方がきっと変わるだろう。
1. ジャロン・ラニアー
「インターネットをどうやって作り直すべきか(How we need to remake the internet)」
「コンピューター科学者でアーティストでもあるラニアーは、ビジョンあふれるこのスピーチで『デジタル文化の基盤が築かれた時期にグーグルやフェイスブックなどの企業が犯した、地球全体にとって悲劇的で驚くほど深刻な過ちとは何か、そしてそれをどう正すべきか』を述べている」とTEDは説明する。
2. ケイト・ラワース
「健全な経済は、成長ではなく繁栄のためにデザインされるべきだ(A healthy economy should be designed to thrive, not grow)」
持続可能で理想的な経済とはどのようなものか。「それはドーナツのようなもの」。オックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワースは、興味深いスピーチのなかでそう答えている。
3. スティーヴン・ピンカー
「データで見ると、世界は良くなっているのか、悪くなっているのか?(Is the world better better or worse? A look at the numbers)」
ビル・ゲイツが「大好きな著者」として名前をあげる心理学者のピンカーは、データをもとにしながら、よくある報道とは違い、世界は良くなっていると主張する。そして、問題に正しく対処すれば、私たちは世界をより良い場所にできると説く。
4. ウィル・マッカスキル
「現代において最も重要な倫理的問題とは何か?(What are the most important moral problems of our time?)」
人類が抱える問題は尽きることがない。オックスフォード大学で哲学を研究し、「効果的な利他主義」を唱えるマッカスキルが「どの問題から取りかかればいいのか」という重要な問いかけについて熟考する。
5. ロビー・スタインバーグ
「不平等な保釈制度をやめたらどうなるか?(What if we ended the injustice of bail?)」
TEDによれば、「アメリカでは来る日も来る日も、45万人以上の人が、単に保釈金が払えないという理由で刑務所に拘禁されている」という。それは公正だと言えるのだろうか。
6. ウズレム・ケキック
「ヘイトメールを送ってくる人と、私が一緒にコーヒーを飲む理由(Why I have coffee with people who send me hate mail)」
2007年、女性イスラム教徒として初めてデンマークの国会議員に当選したウズレム・ケキックのもとには、膨大な数のヘイトメールが送られてきた。
ケキックは最初のうちは見て見ぬふりをしていたものの、ある日ふと過激なアイデアを思いついた。ヘイトメールを送ってきた人に連絡して、一緒にコーヒーを飲んだらいいのではないか、と。
7. ザッカリー・R・ウッド
「自分と相反する意見を持つ人に耳を傾けるべき理由(Why it's worth listening to people you disagree with)」
二極化の時代にうってつけのテーマを取り上げたウッドは「意見が対立する人は、無視したところで、いなくなるわけではない」と指摘する。「逆境に直面しても前進するためには、人類についての理解を深めるべく、真摯な姿勢で取り組まなくてはならない」
8. スティーヴン・ウェッブ
「宇宙人たちはどこにいるのか?(Where are all the aliens?)」
このスピーチのおもしろさは、タイトルに凝縮されている。空には無数の星が瞬いているのに、地球を頻繁に訪れる宇宙人はなぜいないのだろうと不思議に思ったことがある人にとって、物理学者スティーヴン・ウェッブの答えは衝撃的だ。宇宙では、人類は孤独な存在なのだという。
9. カレン・J・ミーチ
「オウムアムアの物語:太陽系の外からやってきた初の訪問者(The story of ‘Oumuamua, the first visitor from another star system)」
天文学ファンや、星空を眺めるのが好きな人のためのスピーチをもうひとつ。ハワイ大学天文学研究所のカレン・J・ミーチ率いるチームが、2017年10月に太陽系の外から飛来して通過していった初の天体「オウムアムア」について理解すべく必死に取り組む様子が語られる。
あれはエイリアンが乗った宇宙船だったのか。超新星のかけらか。あるいはまったく別の物体だったのだろうか。
10. 李開復
「人工知能はどのようにして人類を救えるのか(How AI can save our humanity)」
「コンピューター科学者の李開復(Kai-Fu Lee)は、未来を見通すこのスピーチで、アメリカと中国が深層学習(ディープ・ラーニング)革命を牽引している様子を詳しく述べる。そして、人工知能の時代に共感や創造性を活かしながら人類が繁栄していくためにはどうすればいいのか、青写真を描き出している」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman/Contributor, Inc.com、翻訳:遠藤康子/ガリレオ、写真:fatido/iStock)
©2018 Mansueto Ventures LLC; Distributed by Tribune Content Agency, LLC
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.