「平凡な起業」で成功する方法

2018/12/10
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「AMERICAN EXPRESS PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。 今週は「ベンチャー起業家WEEK」として、有識者が選ぶ経営者が読むべきニュースをお届けします。
10日は、インテグリティ代表の田中 慎一(たなか・しんいち)さんが出演。
凡人の起業法 40カ月でKDDIグループに事業売却できた社長の秘密」(ITmedia ビジネスオンライン)を切り口に、天才型でない起業家の成功への道筋についてお話いただきました。

「恐竜」の真似をしない

サッシャ 「凡人の企業法」というのは印象的な言葉ですよね。
田中 起業家というと自信に満ちていて、華々しい感じがありますもんね。
でも、しばしば世間を賑わせるような、ビジョナリーな起業家……例えば、Amazonのジェフ・ベゾスやFacebookのザッカーバーグ。日本だと、孫さんやメルカリの山田さんといった面々がいますが、彼らって「ジュラシックパークの恐竜みたいな人たち」なんですよ。
ああいうカリスマ的な人たちは、起業家全体で見ると0.01%ぐらいしかいない。特殊なケースなわけです。
サッシャ 誤解を恐れずに言うと、ちょっと変人的な起業家ということですね。
田中 要するに世の中の起業家は、0.01%の変人起業家と、残り99.9%の凡人起業家で成り立っています。
サッシャ 天才は一握りしかいないけど、起業している人はもっといるわけだから、起業している人の多くは別に尖った存在ではない、ということですか?
田中 そうですね。そして、凡人には凡人なりの起業の型があるということです。
寺岡 その、凡人なりの起業の型というのは、具体的には?
田中 変人起業家は、とにかく自分のやりたいビジョンが明確にあるんですね。「こういう世の中を実現するんだ!」という大きな目標に向かって、エネルギーを費やしてどんどん突き進んでいきます。天才はそれでいいのですが、凡人起業家の場合は、自分の欲望よりも、目の前のお客さんやマーケットを大事にすることが重要です。
つまり、目の前のお客さんが気づいていない、まだ顕在化されていないニーズについて真剣に向きあうこと。自分が周囲に求められていることをやっていくという方法がベストではないでしょうか。
記事中で小原さんはこういう表現を使っています。「まず、自分に会ってくれる人、目の前の人に対して感謝をする」。私は、この考え方がひとつのヒントになると思っています。
サッシャ そのために起業する必要があれば起業するし、そうでなければ、例えば会社員という立場でやってもいい、という。
田中 これも記事中にあった話ですが、「起業の可能性についてしっかり検討した結果、今は起業しないでおいて、起業したい人を支えるほうに回ることもアリだ」ということですね。私もそのとおりだと思っています。
サッシャ 大概の人は天才ではないので、凡人だと思って起業したほうが成功に近いんですかね?
田中 起業において、こっちの道が絶対に正解だと断言はできませんが、何もない凡人のほうがかえって成功するというケースをよく見てきました。
メディアなどで起業の成功例として、「カネなし・コネなし・技術なし。何にもない私だけど成功しました!」なんてサクセスストーリーが取り上げられますよね。最初から何かすごい武器を持っているよりも、何もないほうがその差を補うため、創意工夫と知恵でもって起業家として必要な努力をするんですね。
逆に、すごく強いコネがある人は最初から多くのお金が集められたり、信じられないようなメンバーが事業を応援してくれたりするわけですが、これが自分の実力である、と自身を過大評価してしまって努力を怠った結果、鳴かず飛ばずで終わってしまうケースも少なくないんです。
サッシャ すごい飛び道具だけがあって、地固めがされていなかったんですね。
田中 事業は、お金やコネがあればうまくいくなんて単純なものではないんです。創意工夫と知恵と、とにかくひたすらやることが重要。その点、自分は凡人だと思っている人のほうがコツコツと地道な努力を続けられる、という部分はあると思いますね。
サッシャ お話を聞いていると、きっかけは起業家に向けた話ではあるけども、ビジネスパーソン全般にあてはまる内容と言ってもいいような気がします。

選択よりも両方達成

田中 起業家や経営者のあり方について、こんな事例もあります。
「10年前にベンチャーとしてスタートしたけど、次の成長ステージになかなか行けない」というときに、赤字覚悟で将来のために新規事業を始めるのか、将来の利益は捨てて、まずは堅実に今の利益を求めるか。
成功した起業家がエンジェル投資家になったりと、スタートアップ黎明期に比べて昨今は資金調達をしやすい環境にあるといえます。その影響か、10〜20年目の会社が新規事業をやるときに、これは将来の黒字のための投資なんだ、ともっともらしい理屈で赤字を垂れ流す事態が起こりがちなんですよね。
経営者は本来、赤字を出しつつ将来への投資をするのと現在やっていくための利益の優先のどちらを選ぶかではなくて、この矛盾した二つの道を同時に達成することをミッションとして課せられているはずです。
サッシャ 将来のために攻めもするが、赤字も出し続けないようにする?
田中 はい、二律背反の選択をするだけならば経営者って必要ないんです。単純に従業員に多数決を採ったり、極端な話、じゃんけんやあみだくじで決めてもいいわけですよ。
しんどい話ですが、経営者というのは矛盾したふたつを何とか両方とも達成してこそ、だと思うんですよね。お金を調達しやすい環境にあると、簡単にお金を集めて、簡単に溶かしてしまいがちなんですが、でも、お金ってもっと大切なものなわけで。
サッシャ それは日ごろの自分の立場でも言えますよね。
田中 そう思います。会社のお金だと思うか、予算を会社からぶんどってくると考えるわけですが、それじゃあダメ。
自分の懐のお金を出すときって、どう使うべきか、すごく慎重に考えますよね。慎重になりすぎて動けなくなるのも問題ですが、やはり自分ごとだと思ってお金を扱える感覚というのは、どんなビジネスに携わってる人にとっても必要だと思います。
サッシャ いち社員であっても経営感覚は重要だということですね。
今回のニュースをはじめとした田中さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
12月11日は、ビジョナリーホールディングス 執行役員の川添 隆さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】
放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: AMERICAN EXPRESS  PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
提供:アメリカン・エキスプレス
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