【2018リポート】日本初開催! コトラーが認めるマーケティングアワード

2018/12/10
“マーケティングの神様”と評されるフィリップ・コトラー教授。そのコトラー教授が、全世界で開催する「コトラーアワード」。その日本初となる「コトラーアワードジャパン2018」がNewsPicks主催で行われた。10月29日には、創造性、独自性に優れた日本のトップマーケティング企業を表彰する授賞式も開催。エントリー企業はもちろん、各界の著名マーケター、NewsPicksプロピッカーら約100人が参加。これからのマーケティングの行方を占う、華やかな舞台となった。
 マーケティングの第一人者として、マーケターはもとより経営者からも厚い支持を得ているフィリップ・コトラー教授。「コトラーアワード」とは、そのコトラー教授が、世界各国で優れたマーケティング、経営を表彰するものだ。
 冒頭ではコトラー教授のビデオメッセージが流れ、初の日本開催への期待を語った。
 2018年度はアメリカ、カナダ、イタリア、インドなど9カ国で開催され、日本でも「経営にマーケティングの力を」をコンセプトに初のアワードが華々しく行われた。各国のコトラーアワード受賞者は、ワールドマーケティングサミットに進出。グローバルで最も優れたマーケティングを選出する場にエントリーする。
会場には約100人が集まり、華やかに開催された「コトラーアワードジャパン2018」
マーケティング4.0最前線
 授賞式に先立ち、コトラー教授との共著もあるダートマス大学ケビン・レーン・ケラー教授から、「テクノロジー、グローバル、社会的貢献とマーケティングの関係」についてスピーチが行われた。
 続いて、コトラーインパクトCMOのファヒム・キブリア氏が、コトラー教授との最新刊の内容に触れつつ、最新のマーケティング4.0におけるテクノロジー、グローバリゼーション、そして社会貢献との関わりについて解説。マーケティングで最も重要なことについて以下のように語った。
キブリア 我々はテクノロジーと共生する時代を生きています。テクノロジーをどう活用し、それを即戦力としていくかを考えていかなくてはいけません。しかし、テクノロジーを信奉し、データ至上主義になってしまっている危険性もあります。ともするとテクノロジーそのものが目的となっているケースもあります。

 テクノロジー自体はよいことなのは明らかです。大事なのは、目的意識を持ったマーケティングでデータを活用していくということです。 我々にはよりよい世界を紡ぎ出す責任があります。それにはテクノロジーとブランディングが必要です。そのためには、マーケティング活動に力を入れていかなくてはいけないし、優れたマーケティングを評価していかなくてはいけません。コトラーアワードを開催している理由がそこにあります。
独自の試みにもチャレンジした日本開催
 続いて「コトラーアワードジャパン2018」開催について、コトラーアワードのグローバル審査員を務めるネスレ日本専務執行役員CMOの石橋昌文氏が語った。
石橋 コトラーアワードは昨年からグローバルで実施してきました。日本にはすでにいろいろなマーケティングの賞がある中で、独自性を打ち出したいということで、新しいメディアとして注目されているNewsPicksに運営パートナーをお願いすることになりました。
 今回の「スタートアップ・アワード」は日本独自のもので、こういう新しい試みも、NewsPicksと組んだ成果の一つだと思います。
 初年度にあたる今回は60社からの応募がありましたが、今後、さらに応募が増えていくことでしょう。コトラー先生の「マーケティングでよりよい世界を」という理念のもと、マーケティングが活性化してよりよい事業活動や社会につながるよう、みなさんと一緒に活動していきたいと思います。
コトラーアワード受賞はヤッホーブルーイング
 授賞式では、マーケティング4.0時代にふさわしい最も優れたマーケティングにより価値を生み出した企業・団体に贈られる「コトラーアワード」、創業5年以内で最も優れたマーケティングを行いビジネスを大きく発展させた「スタートアップ・アワード」を発表。
最優秀賞、優秀賞合わせて、合計5社が表彰された。
「2010年からリアルのファンイベント『よなよなエールの超宴』をスタートしました。このイベントでは『学び・交流・共創を意識したコンテンツ作り』を追求。スタート当初は40人だったイベント参加者も5000人規模にまで広がっています。
 また、新商品開発では、宣伝販促予算をかけるのではなく、徹底的にとがったネーミング、パッケージデザイン、味に注力するようにしました。ローソン限定販売の『僕ビール、君ビール。』のプロモーションではSNSを駆使し、その結果、発売初週で大手ビールを上回る販売実績を記録する大ヒットとなりました。
 コトラーアワード受賞は、こういったファンとの関わりを重視したマーケティングを評価していただいたのだと思います。お客様とつながるすばらしさを今後も弊社のマーケティング戦略の核として展開していきます」(ヤッホーブルーイング 代表 井手直行氏)
「SmartHRというサービスは人事の中でも労務という限られた領域のサービスです。これまで労務担当者向けのサービスはほとんどありませんでした。ソリューションがないということは、マーケティングの手法も確立していないということです。そういう中で、どうやって弊社の優れたサービスについて認知していただくかが最初の課題でした。
 認知さえしてもらえたら必ずその価値を理解してもらえるという自信がありましたので、リスクを取りながらもデータを活用した投資をすることで現在の成長を達成できたと思っています。
 クラウドサービスとしてはまだまだ知名度が足りないので、今回の受賞に慢心せず、攻めのマーケティングをこれからも行っていきたいと思います」(SmartHR COO 倉橋隆文氏)
 なお、最優秀賞のヤッホーブルーイングとSmartHRは、コトラーツアーに招かれ、コトラー氏との会談がセッティングされる。
マーケティングマインドが日本を活性化
 今回の選評について、審査員を努めた日産自動車専務執行役員の星野朝子氏、ナイアンティックアジアパシフィック プロダクトマーケティング シニアディレクターの足立光氏、早稲田大学商学学術院教授の内田和成氏から、次のようなコメントが送られた。
星野 私は、直接コトラー教授から教えを受けたひとりです。現在は、日産自動車でマーケティングマインドを持つ、さまざまな職種のメンバーと一緒に仕事をしています。組織の中にマーケティングマインドが広がることで、組織が、そして日本がどんどん面白くなっていくと確信しています。
 今回の審査でも、マーケティングマインドの力を改めて実感しました。マーケティングの力を信じることで、もっと日本が面白くなると確信しています。
足立 コトラーアワードジャパンは、BtoB、BtoCの両方のマーケティングを対象とするなど、ユニークな点が多い賞です。審査にあたっては、そのどちらもバランスが取れるようにという点と、ある程度の規模感に留意しました。
 コトラー氏のマーケティングは1.0、2.0、3.0、そして4.0とあります。社会への貢献、企業の姿勢といった3.0の要素があるもの、さらに自己実現である4.0が反映されたマーケティングであることが評価の大きなポイントでした。
内田 私は自分の経験から、戦略、経営、マーケティングというのは、同じことだと考えています。今回の審査では、婚活アプリの企業がエントリーしていたのですが、実は私の周りで実際にそのアプリを使って結婚を決めたカップルが3組もいます。そういう事実からも、新しいテクノロジーが社会を進化させていることを日々実感しています。
 今回、受賞された企業も、テクノロジーで社会を大きく変えていく存在だと思います。私もこの進化の波から落ちこぼれないように、みなさんと一緒に、勉強を続けていきたいと思います。
「第2回」開催へ大きな期待
 会の中盤では、データを活用して顧客の解像度をあげることで、マーケティング4.0を推し進めているプレイド代表の倉橋健太氏が登壇。同社のプロダクトKARTEのコンセプトとマーケティングについてプレゼンも行われた。
「大多数が販促の域を出ていないデジタルマーケティングですが、我々は事業者がユーザーを把握する目を持てるサービスを提供。もっとデジタルな体験、もしくはデジタルとリアルが混じった体験が実現します」と倉橋氏。データを単なる数字としてみるのではなく、人としてみる。そんな新しいデジタルマーケティングのあり方を、デモを交えながら披露した。
 最後に、コトラー教授からのメッセージがキブリア氏によって代読された。
「マーケットを動かすのは常に人間の行動です。マーケターはそれを理解することが最も重要です。21世紀はマーケティング・ディスラプション(革新)の時代です。今までの成功の方程式にとらわれず、弱点や事業機会を分析し、シナリオを描いていかなくてはいけません。
 コトラーアワードジャパンから、新しいマーケティングのアイデアやトレンドが生まれていくはずです。それによって、より多くの企業がマーケティングを通じて、たくさんの人々によりよい世界をもたらすことを期待します」(コトラー教授)
華やかな授賞式の後は、参加者同士で交流を深める時間に
 授賞式終了後は、参加者が軽食をとりながら交流を深める機会が設けられた。「マーケティングがよりよい世界を」というコトラー教授が語るマーケティングの力について、それぞれが語り合い、第2回開催への期待が盛り上がった。
(編集:久川桃子 撮影:北山宏一 デザイン:星野美緒)