アマゾン時代に生き残れるか。秘密企業「CCC」の全て

2018/11/26

中国に資金を「ぶっ込む」

この男は、もう一山当てられるのか。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭社長が、大勝負に出ようとしている。
「俺は今、とびっきり面白い“企画”を用意してんねん」
2018年になり、CCCの創業者である増田社長はよく海外出張に出かけるようになった。行き先は、14億人のマーケットを抱える中国だ。
世界最先端のテクノロジー大国として注目を集めるこの国は、今や米国や日本と比べても遜色ないほど、生活水準が豊かになりつつある。
(写真:Feng Li/Gettyimages)
しかし増田社長の目には、急速な経済成長の代償として、中国社会に「ひずみ」が生まれていると映っているようだ。
「中国の富裕層って、ブランド志向以外に、ライフスタイルがないねん。しかも、それに飽き飽きしてる。だからこれは、蔦屋書店の出番やなって」
蔦屋書店。
日本で15店舗を展開するこのブックストアは、2011年に代官山にオープンされるや否や、書店業界の話題を一気にさらった。
「ライフスタイルの提案」をコンセプトにした店舗には、アートや写真関連の雑誌がずらりと並ぶ。
オシャレなカフェを併設した居心地の良い空間は、「わざわざ足を運びたくなる書店」として、リアル店舗の可能性を示している。
そして、こうしたデジタル時代のリアル書店を、ライフスタイルの選択肢が限られた中国で、一気に展開していくのだという。
「中国の人に、ブランド主義以外のライフスタイルを提案したい。店舗数のイメージは無印良品なんてもんやないで。経営資源の大半を、ぶっこんでいく」
中国を蔦屋書店で埋めつくす──。
今年で67歳。総資産は1000億円を超えるとも言われる増田社長の表情には、まだまだ野心がみなぎっていた。

「TSUTAYA」は生き残れるか

1983年。大阪府の枚方市で、CCCは誕生した。当時、32歳だった増田社長が始めたのは、街中にあるレンタルショップの焼き直しではなかった。
お店に並べるのはレコードやビデオだけでなく、本やゲームソフトも販売。店舗を文化情報の発信地と定義して「TSUTAYA」をオープンした。
会社を設立する直前の1982年、増田社長は手書きでこんな文章を残している。
創業前から今まで、増田社長のコンセプトはブレていない(写真:CCC)
その2年後には、TSUTAYAをフランチャイズ展開。CDなどのレンタルを中心に、TSUTAYAは一気に巨大チェーンへと駆け上がっていった。
しかし、一世を風靡したコンセプトも、社会環境の変化とともに、古くなっていくものだ。
テクノロジーの進化によってコンテンツがデジタル化され、消費者はわざわざ店舗に足を運ばなくなった。大型化こそ進めるものの、店舗数は2012年の1470店をピークに減少し、現在は海外を含めて1362店舗に落ち込んでいる。
アマゾンやネットフリックスの登場が、TSUTAYAを苦境に追い込んでいる。
だからこそCCCは、従来型のTSUTAYAから、蔦屋書店への転換を急いでいる。冒頭の野心的な中国進出も、国内のTSUTAYAが苦しいことの裏返しなのかもしれない。
また、危機が訪れているのは、TSUTAYAだけではない。
2003年から始まった共通ポイントのTカードにも、ネガティブな噂が広がっている。Tカード最大の提携先であったファミリーマートの撤退観測が広がっているのだ。
仮に、Tカードの利用数の7割以上を占めるといわれるファミマが抜ければ、ビジネスの根幹が揺らぐことになり、存続そのものが疑問視されかねない。
CCCは足元の国内ビジネスで、正念場を迎えているのだ。
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
果たして、CCCは国内ビジネスを立て直し、グローバルにさらなる成長を遂げられるのか。それとも、国内ビジネスでつまずいてしまうのか。
NewsPicks編集部は、これまで秘密のベールに包まれてきたCCCの実像を、徹底取材でレポートしていく。

創業者「増田宗昭」の初告白

まず初回は、増田社長に証言してもらう。ここ数年間、増田社長は、トレンド系のメディアには登場するものの、経営戦略については一切、口を閉ざしていた。
「CCCを一言で表現するならBtoBの“企画会社”。Bを支援する会社だから、あえて前面に出ずに、戦略を語らないようにしてきたの」
ビジネスについて多くを語らない増田社長に、たっぷりと経営戦略を聞いた。
「もう、ぶっちゃけて話すわ」
インタビュー開始直後から、今まで語られなかったCCCの秘密が明かされた。スクープも盛り込まれた極めて貴重な内容を、NewsPicksの独占取材でお届けする。
CCCは不思議な会社だ。
蔦屋書店やTカードなど、消費者とのタッチポイントが多いにもかかわらず、非上場企業であることから、その業績やビジネスモデルが深く謎に包まれている。
一体、CCCは誰からお金をもらい、どの事業で稼いでいるのか。
特集の2回目は、謎に包まれたCCCの「儲けの仕組み」をインフォグラフィックで解説する。
あまり公開されることのないCCCの業績はもちろん、独自取材によってTSUTAYAやTカードのビジネスモデル、そして経営リスクまでを解き明かした。この図解を読むだけで、CCCの全貌を理解できるはずだ。
特集の後半では、TSUTAYAやTカード事業について、詳しく現状を解説していく。
TSUTAYAから蔦屋書店への転換を進めるCCCだが、FCオーナーの協力なくして達成は不可能だ。リスクを取るFCサイドは、蔦屋書店をどう見ているのか。ここに蔦屋書店の可能性とリスクが眠っている。
またTカードについては、事業を統括するCCCマーケティングの北村和彦社長に、単刀直入に質問をぶつけた。
CCCは、ファミマ撤退の噂についてどう答えたのか。ポイント経済圏の未来を占う、必見のコンテンツだ。
また、3年前に話題になった図書館問題についてもレポートする。佐賀県の武雄市から委託を受けたCCCは、2012年に指定管理者として武雄市図書館をリニューアルした。
しかし、独自の分類や郷土資料館の閉鎖が問題視され、世間から批判の目に晒された。
当時の批判は妥当だったのか。また、それから図書館運営はどうなったのか。そもそも図書館事業はCCCにとって「オイシイ」のか。気になる疑問を投げかけた。
非上場企業のCCCは、その知名度とは裏腹に、日本で最も実像の掴みにくい企業の1つかもしれない。
だからこそNewsPicksは、その本質を解き明かすべく、難解なテーマにチャレンジした。特集を読み終わった後に、あなたのCCCへの理解が深まっていれば幸いだ。