[サンフランシスコ 14日 ロイター] - 米アップル<AAPL.O>のサプライヤー各社による業績見通しの下方修正が相次いだことで、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売台数が頭打ちになったとの懸念が広がった。クラウドなどのサービス事業を成長の柱に据える同社の戦略にも影を落とす可能性がある。

過去1年間、アイフォーンの平均販売価格は上昇を続けていたため、投資家は販売台数の不振をあまり気にかけてこなかった。しかしこのところ、同社は中国の小米科技(シャオミ)<1810.HK>など、中間価格帯のスマホメーカーによる攻勢にさらされている。

アップルは「アップル・ミュージック」や「iCloud(アイクラウド)」などの有料サービスの収入を増やしていく計画を何度も表明してきた。そのためには、アイフォーンを筆頭にアップル機器の保有者を増やす必要がある。

アナリストによると、世界中で使われているアップル機器13億台の約3分の2を占めるのがアイフォーンだ。

スマホ全体の販売が減速し、他社製品に比べて高価格のアイフォーンを敬遠する人々も多いため、アップルがシェアを保つのは難しくなるとアナリストはみている。この結果、バーンスタインのトニ・サッコナギ氏によると、サービス収入の伸びも圧迫されかねない。

インド、ブラジル、ロシアといった有望市場で販売台数を伸ばせないのであれば、ブランド力と、高級機種で1000ドル超という価格に力点を置き過ぎるアップルの戦略は、少なくとも一部が間違っているのではないか、と専門家は懸念している。

キャピタル・インベストメント・カウンセルの首席エコノミスト、ハル・エディンス氏によると、中国の高級スマートフォンメーカー、一加手机(ワンプラス)の「ワンプラス 6T」といった製品は、アイフォーンの約半分の価格でアイフォーンとほぼ同じ性能だ。

「ずっと安い価格で買えるスマホがたくさんある。スマホの世界は急速に変化しており、1000ドル路線を行くメーカーは好機を逃すだろう」という。

クリエイティブ・ストラテジーズのアナリスト、ベン・バジャリン氏によると、アップルは顧客満足度が高く、スマホ市場で随一のリピート率を誇る。

とはいえ、調査会社IDCのデータによると、今年上半期にはシャオミ、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)の中国3大スマホメーカーで世界市場の約25%を占めた。シェアは昨年の20%、2014年の8.9%から急拡大した。

一方で、アップルは2015年度を除きシェアが伸びていない。今年上半期の世界シェアは13.6%と、2014年の14.8%から縮小した。

アップルのサービス事業の収入は直近年度で371億ドルで、その顧客基盤を提供するのがアイフォーンやタブレット端末「iPad(アイパッド)」、パソコンの「Mac(マック)」だ。

サービス事業の収入が売上高全体に占める割合は14%と、アイフォーンの販売台数が過去最高を記録した2015年度の8.5%から増えている。

しかしIDCの見通しでは、世界のスマホ市場は2022年まで「複利」ベースで2.4%しか増えず、16億台にとどまる見通し。アップルは飽和市場の中でライバルとの戦いを強いられることになる。

特にシャオミはファン層を急拡大しており、IDCによるとインドでは今年第1、第2・四半期に販売台数トップ。シェアは30.3%と29.7%だった。アップルはインド市場でマイナーな存在でしかない。

IDCによると、シャオミはスペインなどの欧州市場にも進出中だ。

アップルの牙城である米国市場にも、同社と同じく高価格帯のスマホを作る中国のワンプラスが忍び寄っている。過去数年、米国ではオンラインでしか買えなかったが、ハイテクに詳しい層の支持を増やし、「ワンプラス 6T」は現在、TモバイルUSの店舗で販売されている。

半導体調査会社ギークベンチによると、「アイフォーン7」のプロセッサは一部の処理速度テストで「ワンプラス 6T」を凌ぐが、後者はアイフォーン新機種に似た近代的なデザインを備えている。

「ワンプラス 6T」の価格は549ドルで、「アイフォーン7」と「アイフォーン 8」の中間だ。 

(Stephen Nellis記者)