韓国、仁川(インチョン)にある収容人数5万人超のスタジアムで、決勝戦に残った2チームが死闘を演じた。

熱狂するeスポーツの発祥地

11月3日、eスポーツの発祥地、韓国で伝説がつくられた。毎年、数千万人が観戦する「リーグ・オブ・レジェンド」ワールドチャンピオンシップの決勝戦は、仁川にある収容人数5万人超のスタジアムで開催された。
決勝戦は中国の「Invictus Gaming」とヨーロッパの「Fnatic」によって争われ、中国のチームとして初めて、Invictusが世界大会を制した。
「LoL」の愛称を持つリーグ・オブ・レジェンドは、ライアットゲームズが2009年にリリースしたPCゲームであり、130億ドル規模を誇るゲーム市場で最も愛される作品のひとつだ。
戦略ゲームとロールプレイングゲーム(RPG)の要素を併せ持ち、中世の民話から抜け出してきたようなモンスターや魔法使い、戦士が登場する。本から服、おもちゃ、アクセサリーまで、さまざまなビジネスが生まれているのも不思議ではない。
eスポーツファンたちは、LoLのワールドチャンピオンシップをサッカーのワールドカップに喩える。あらゆるゲームトーナメントのうちで最も長く、最も大規模に視聴された記録を持つためだ。
2017年の世界大会は中国の北京で開催され、6000万人が決勝戦を視聴した。勝者は韓国の「Samsung Galaxy」で、過去3度の優勝を誇る同じく韓国の「SK Telecom T1」を下した。

会場周辺にコスプレのファンも

今回の大会は2011年以来初めて、開催国である韓国のチームが出場しない決勝戦となった。Fnaticは、スウェーデンで開催された第1回大会を制したヨーロッパのチームだ。中国のInvictusは「Dota 2」や「StarCraft」の大会でも実力を発揮している。
決勝戦は3回勝負で「ネクサス」と呼ばれる敵の本拠地を破壊したほうが勝つ。もちろん、口で言うほど簡単ではない。
どのチームも膨大な時間を練習に費やしており、さらにガッツと素早い判断、チームワークが要求される。これらすべてがそろって初めて、誰もがほしがる「サモナーズカップ」を掲げることができるのだ。
開会式には「グリッチ・モブ」「マコ」「マディソン・ビア」などのスターが集結。会場となった「文鶴(ムナク)競技場」の外では、一部のファンが大会への愛をコスプレで表現していた。
このイベントはファンたちにとって、ゲームからインスピレーションを得た衣装をまとい、創造的な表現を行う手段でもあるのだ。

「eスポーツ界のブラジルだ」

韓国のチームは決勝戦に進出できなかったが、人口5000万のこの国では、かつてないほどeスポーツ熱が高まっている。どの都市に行っても、ほぼすべての大通りにゲームカフェがある。
現代自動車やサムスン重工業などのメーカーが過去の栄光を取り戻すのに苦労している一方で、ゲーム開発会社は利益を伸ばしている。たとえば、モバイルゲームを専門とするネットマーブルの時価総額は、LGエレクトロニクスに匹敵する。
有名人の仲間入りを果たしたゲーマーもいる。「SK Telecom T1」の「フェイカー」ことリー・サンヒョクは年収数百万ドルで、バスケットボール選手やサッカー選手もうらやむほどファンが多いと伝えられている。
「StarCraft」の伝説的プレイヤー、イ・ミョファンは女優と結婚し、テレビ番組にもよく出演している。
韓国では優れたゲーマーが次々と成功を収め、世界を股にかける逸材も現れている。後に続こうとして「eスポーツの塾」に通う10代も増えている。
「SK Telecom T1」のゼネラルマネージャー、ソン・チョンホは「韓国は才能あるプレイヤーを数多く輩出している」と話す。「今や韓国は、eスポーツ界のブラジルだ」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Sam Kim記者、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:©2018 Bloomberg L.P)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.