【解説】サウジ記者は皇太子に殺されたのか。深まる謎を読み解く

2018/10/18

世界が騒然、記者「失踪」の真相は

サウジアラビア人のジャーナリスト、ジャマル・カショギ(59)が、イスタンブールのサウジアラビア総領事館に入るところを目撃されたのを最後に消息を断ったのは10月2日のこと。
事件はトルコとサウジアラビアだけでなく、多くの国を巻き込む騒動に発展している。
ドナルド・トランプ米大統領はサウジアラビアのサルマン国王とこの問題について話し、マイク・ポンペイオ国務長官を同国に派遣した。さらに報道陣に対し、サルマン国王との会話から、「ならず者集団による殺人だという印象を受けた。わからんがね」と語った。
サウジ当局によって殺害されたとされるカショギ氏をめぐる疑惑は国際問題へと発展(写真:AFP/アフロ)
サウジアラビアがカショギ死亡を認めるとすれば、あくまで「ならず者集団が勝手にやったことであり、王室や政府高官の命令はなかった」と主張するはず──。米政府高官らはこう考えている。
だが、トルコ政府は、カショギはサウジアラビアの工作員に殺され、その遺体は処分のために解体されたと主張してきた。しかもその殺害は、サウジアラビアのムハンマド皇太子(33)が命じたという。
サウジ記者の拘束を命じたのはムハンマド皇太子か(Stephen Crowley/The New York Times)
真偽は明らかになっていないが、この事件が「サウジアラビアの改革の旗手」というムハンマドのイメージを大きく傷つけたのは間違いない。ムハンマドは昨年皇太子に即位して以来、欧米のテクノロジー企業や投資家をサウジアラビアに誘致して、石油依存からの脱却を図ろうとしてきた。
いくつもの謎が絡み合った事件を、ここで整理しておこう。