[東京 11日 ロイター] - ファーストリテイリング<9983.T>が中国事業について強気の戦略を崩していない。2018年8月期の台湾、香港を含めた「グレーターチャイナ」の売上高は前年比26.9%増の4398億円、営業利益は同47.1%増の737億円と大きく伸びた。中国景気減速の影響が懸念される今期も大幅な増収増益を見込んでいる。

「中国や東南アジアはまだ出店によって伸ばしていく余地がある」。岡崎健グループ上席執行役員・CFO(最高財務責任者)は11日の決算会見でこう述べ、中国での事業拡大に自信を示した。

ユニクロが中国で伸びているのは、ブランドの浸透に加え、地域に合わせた商品投入などきめ細かい販売施策がうまく機能していることが背景にある。同社はグレーターチャイナで年間100店舗の出店を計画しており、今期もこのペースを維持する方針だ。

しかし、ここにきて中国は景気減速が鮮明になっている。1─8月の固定資産投資は前年同期比5.3%増と、伸びが過去最低だった1─7月から一段と鈍化した。政府はここ数カ月、道路や鉄道などのインフラ事業の承認を加速しているが、減速に歯止めをかけるまでには至っていない。

さらに11日の上海総合指数<.SSEC>は2014年11月以来の安値をつけた。今年高値の1月から3割近く下落し、2015年6月の直近高値からは半値まで落ち込んでいる。個人消費への悪影響を懸念する声も少なくない。

成長の核となってきた中国市場の変容にどう向き合うかは日本企業に共通する課題だ。安川電機<6506.T>は10日、2019年2月期の業績予想を下方修正した。半導体投資の減速に加え、米中貿易摩擦の影響で工場の自動化投資を手控える動きが広がっていることを反映させた。

会見した村上周二・安川電機専務は米中貿易摩擦について「方向性が決まれば、投資は動き出す」と楽観的な見方を示したが、着地点がいまだ見えない中で、思惑通りことが運ぶかどうかは未知数だ。

ファーストリテイリングにとっても、中国景気に漂う不透明感は無視できない。しかし、柳井正会長兼社長は会見で「われわれは世界中で作って世界中で売る。当初は多少影響があるかもしれないが、他の国・地域で生産することも可能で、十分対応できる」と、米中貿易摩擦などによる先行き懸念を否定した。

中国リスクを押さえ込み、計画通りに「大幅な増収増益」を実現できるのか。強気の事業展開とともに、慎重な舵取りが求められる局面も予想される。

(志田義寧 編集:北松克朗)