[東京 4日 ロイター] - 「クルマは究極のIoT(インターネット・オブ・シングス)だ」──。4日午後、トヨタ自動車<7203.T>との初の本格提携を発表したソフトバンクの宮川潤一副社長は、提携に至った背景についてこう説明した。

すべてのモノがインターネットにつながるIoTはさまざまな可能性を秘める成長市場。自動車産業はIoTの重要なプラットフォームとして、新たな有望ビジネスと収益が広がる舞台となる。トヨタとの協業に踏み切ったソフトバンクには、そのプラットフォームを手中に収めようという野心がうかがえる。

両社が2018年度内に設立する共同出資会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」は、自動運転車でライドシェアや飲食、医療、物流などのサービスを提供する予定で、まずは全国100地区でのサービス展開を目指している。さまざまなサービスの会社と自動運転車とを結びつけ「新しいモビリティーの世界をつくっていく」(宮川副社長)という構想だ。

ソフトバンクグループは現在、各業界でトップのユニコーン企業(企業価値の高い未上場企業)に投資して、緩やかなグループを構成する「群戦略」を推し進めている。そこで重視しているのがプラットフォーム戦略だ。

「自動車はひとつの部品に過ぎない。むしろプラットフォームのほうがより大きな価値を持つ」──。ソフトバンクグループの孫正義社長は今年2月の決算会見でこう強調した。

孫社長が人生をかけてきたインターネットの世界では、パソコンがコモディティー化(陳腐化)する一方で、グーグルやアマゾンなどの独自のビジネス・プラットフォームを持つ巨大企業が市場支配力を強めている。孫社長は自動車の世界でも同じことが起きると予想しており、ライドシェアへの出資を強化。現在は米ウーバー、中国の滴滴出行(ディディ・チューシン)、東南アジアのグラブ、インドのオラの筆頭株主となっている。

「ウーバー、ディディ、グラブ、オラの4社で世界の90%くらいのマーケットシェアを持っている」。孫社長は同日の会見で世界最大の交通機関プラットフォームを手中に収めたことをあらためて強調した。

トヨタとの協業で自動運転車を確保できれば、出資先のライドシェア会社に融通することもできる。「自動運転の最大の顧客はライドシェア会社だ」と孫社長は新会社とライドシェア会社との連携強化に含みを持たせた。

ソフトバンクにとっては、トヨタとの提携もひとつのピースにすぎないと言える。「今回の提携は第一弾だ。これから第2弾、第3弾と提携が進むことを願っている」(同氏)。

(志田義寧 編集:北松克朗)