【厚切りジェイソン】日本人の働き方をアップデートする時間と場所の使い方

2018/9/25
職場以外で働くリモートワーカーに加え、副業解禁の流れで増え始めているパラレルワーカー。限られた時間で個人のパフォーマンスを最大限発揮できるワークプレイスの条件とは? 

複線キャリア形成に成功したIT企業役員兼芸人の厚切りジェイソン氏に日本企業の働き方を見てきて感じた「Why?」と、ワークプレイスの効果的な活用方法を聞いた。

厚切りジェイソンが見た、日本企業の「Why?」

僕が日本企業の働き方を見てきて「Why?」を感じていることは幾つかあります。
まず、定時を過ぎていても上司が席にいれば、帰りづらいという遠慮。仕事が終わったら帰るのは当然。
帰る際も、別に失礼なことをしているわけでもないのに、なぜ「お先に失礼します」と声がけをするのでしょうか? 「仕事が終わったので帰ります」ではダメなのか。
そもそも、会社で遅くまで仕事することや、在社時間の長さで仕事への貢献度を測ること自体も、「Why?」。
僕から見れば、毎晩終電まで残っている人は仕事ができない人です。それなのに、結果を出している人に対してでさえ「あいつはまた、5時で帰っている」と非難めいたことを言うのはまったく理解できない。
そして一番もったいないと思うのは、いついかなる時でも出社し、会社の決められた席で仕事をすることにこだわっていること。
台風や大雪などで交通の便が乱れている日でも長い間電車を待って、わざわざ時間をかけて出社していますよね。帰る時も同じ状況で……。
僕だったら、そういうときは間違いなく出社しない。出勤せず、自宅や最寄りのカフェ、シェアオフィスなどで仕事をする。そうすることで、仕事を片付ける時間が何時間も増やせますから。
働く場所を1カ所にこだわり過ぎるのは非効率。出社や在社が目的の一つになっている風習は見直すべきですね。

移動しながら同時並行で仕事をこなす

僕はかつて芸人になる前、IT企業の業務がメインだったとき、よくシェアオフィスを活用していました。
集中したい時は個室にこもり、打ち合わせは会議室を使い、電話が必要な時はテレフォンブースで誰に遠慮することもなく電話ができて、便利でしたね。
今はIT企業の役員業務に加えてお笑い芸人としても活動しているので、日米間や日本国内でも移動の多い毎日。1カ所で長時間集中して作業ができる日は多くない。
そこで僕は、パソコンは持ち歩かず、タブレットをポケットに入れて気軽に作業できるようにしています。芸人活動の合間、楽屋やホテルで仕事をすることが多いですが、新幹線や飛行機の移動も多いので、乗り物内でも簡単な作業はします。
今日、ここに向かう途中は、タクシーでハスキーボイスの運転手さんに話しかけられて仕事ができませんでしたけどね(笑)。
もちろん、電車を待つ時間も無駄にしません。5分もあれば、メールの対応が1~2本はできます。
僕は重要なメールはタスクボックスに振り分けるようにしていますが、そのタスクが常に空でないと気持ち悪いんです。わざわざ仕事の時間を作ることはせず、移動しながら同時並行で仕事をこなします。
こんな僕だけど、いつもあくせくしているわけではないんですよ。都内の移動なら、タクシーや電車を使わず歩きたいタイプ。
実際、よく歩いています。歩いている時はPodcastを聞いたり、考え事をしたりしてインプットや何かを生み出す時間にしています。

「時間がない」という人ほど時間を無駄にしている

そもそも僕はよく「IT会社役員とお笑い芸人の二足のわらじ」「パラレルワーカー」と言われますが、別に大したことじゃない。ただ、好きなことを適当にやっているだけ。
すごくテキトーですよ。何をやっているかは自分でも把握できていないくらい。やりたいことを自分で決めて、それに向けて一つひとつこなしていく生き方ですね。
こういうと必ず、「僕もそうしたいけど時間がないから……」という人がいます。でも、「時間がない」と言っている人ほど時間を無駄にしていると思うんですよ。何かを削れるはず。
例えば、好きでもない同僚との飲み会なんて毎日参加しなくてもいいでしょ? 電車の中でゲームのハイスコアを更新しなくてもいいでしょ?
飛行機を待っている間も、ビールを飲むか、仕事を一つ済ませるのか。その違いですよ。もういくらでも時間は作れるんです。
僕自身、無駄な時間はガンガン削っています。まず今日一日のタスクと段取り、優先順位を決めたら、それをただひたすら行います。決めていないことはやりません。
先輩芸人に突然に飲み会に誘われても「このあと用事があります」などといって辞退します。相手も、僕がいろいろなことをしているのは分かっているから、そこまで無理に誘ってきませんしね(笑)。

シェアオフィスやコワーキングスペースはどう使い分ける?

今、日本の都心部にはシェアオフィスやコワーキングスペースが次々とできています。自宅からわざわざ30分以上かけて行くことはないですが、もしシェアオフィスが僕の職場や出先の近くにあれば、立ち寄るでしょう。
そこで、集中して取り組みたい仕事を、個室か1人用ブースにこもって一気呵成(かせい)に仕上げたいですね。
コワーキングスペースやシェアオフィスの最大のメリットは、あちこちにサテライト的に存在するため、利用する場所を選べること。
例えば、営業をされている方なら、本社に戻らなくても、営業先の近くにシェアオフィスがあるなら寄って仕事を済ませてそのまま帰れます。通勤時間の短縮になる。
一方、起業を考えている人はおおいにシェアオフィスやコワーキングスペースを活用すべき。
よく、何かをしたくても「完璧に環境を整えてからやるべきだ!」と考える人がいますが、僕に言わせれば完璧という状況は存在しない。つまり、完璧な環境が整うまで待っている人は、永遠に動き出せないっていうこと。
やりたいことがあるなら、今この瞬間から第一歩を踏み出すべき。やってみて違ってみたら、軌道修正すればいい。トライ&エラーを繰り返していくことです。
そんなとき、近くに同志、あるいは同志になれそうな人がいれば、一歩を踏み出しやすいかもしれません。コワーキングスペースやそこで行われるイベント等に参加すれば、同志を見つけやすいのではないでしょうか。
僕の場合、すでにスタートアップは終わっているので、コワーキングスペースは素通りして個室か1人用ブースに直行すると思いますが。

時間を無駄にしたくない僕でも立ち寄れる場所

ビジネスエアポートが素晴らしいのは、目的によってスペースを使い分けることができるところ。
集中して作業できる個室やブースが一定数用意されていますし、その個室やブースも、人の出入りがある受付エリアとは分かれています。
ですから、例えば今日は集中して作業したいという時はブースにずっとこもり、「新しい人に出会いたい」という日は、シェアワークプレイス(コワーキングスペース)で軽い仕事をすることもできるでしょう。
その個室やブースも、プチオフィス仕様で比較的ゆったりした空間もいくつか用意されていた点でも、僕的には合格です。
僕は1分たりとも時間を無駄にしたくないので基本的に個室から出ることはないと思いますが、そうでない人にとっては、本格的に爽やかな空気を吸いたくなればビジネスエアポート六本木にあるようなテラス席を利用すればいい。
ビジネスエアポート六本木(写真:Business-Airport)
汗をかいたらビジネスエアポート品川ビジネスエアポート東京のシャワーブースはリフレッシュできるので利用価値が高いでしょう。ライブラリースペースも気分転換になりそうですね。
より理想形のシェアオフィスは、「集中作業」と「出会い」の場が明確に分けられていて、それが利用者の共通認識であること。
シェアワークプレイス(コワーキングスペース)であれば共通認識として話しかけてもOK、個室やブースであればあえて話しかけない。
そんなシェアオフィスがよく行く仕事場の至近距離にあれば、時間を無駄にしたくない僕でも気軽に立ち寄れるだろうと思います。
(執筆:桜田容子 編集:奈良岡崇子 撮影:北山宏一 デザイン:國弘朋佳)