子どもを、才能豊かで優秀な人間に育てたいと思わない親はいない。長年の研究から得られた知見をご紹介しよう。

5000人の子どものキャリアを追跡

人生に成功する子どもを育てる方法や子どもをコーチングする方法についてのアドバイスは、世にあふれかえっている。あるいは、子ども本人に向けたアドバイスさえある。
しかし、子どもの発達分野の著名な研究者が手がける、47年間も続く研究の成果となると、注目しないわけにはいかない。
ヴァンダービルト大学の研究者、カミラ・P・ベンボウとデヴィッド・ルビンスキが継続しているこの研究は、ジョンズ・ホプキンス大学のジュリアン・スタンレーが1971年に始めたものだ。
研究の名称は「Study of Mathematically Precocious Youth」(SMPY:早熟な数学的才能を示す子どもの研究)だが、実際には数学的才能だけでなく、子どもの言語能力や空間能力も評価対象としている(ここでいう空間能力とは、物体間の空間的な位置関係を把握し、記憶する能力のことで、工学や建築、外科学などの分野で重要だ)。
研究では、知的な才能を示した約5000人の子どものキャリアを追跡。そうした子どもの能力を伸ばし、支援するための適切な方法を明らかにしようとしている。
研究で得られる知見を実践に移すため、スタンレーは1979年に「ジョンズ・ホプキンス・センター・フォー・タレンティッド・ユース」を開設した。大学進学試験でトップクラスの成績を収めた生徒を受け入れ、教育を提供する機関だ。
このセンターは、のちに先駆的な仕事をする数学者や科学者を多く輩出していて、誰もが知る著名人も含まれる。たとえば、グーグルの創設者サーゲイ・ブリンやフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO、ミュージシャンのレディー・ガガ(本名ステファニー・ジャーマノッタ)などだ。
しかし、ここで「わが子には関係ない」と落胆してはいけない。今からご紹介するのは、エリート養成マニュアルではないのだ。
研究で得られた知見に基づき、すべての子どもに対して何かを成し遂げることを促すための7つの方法がまとめられている。筆者は、起業家かつリーダー、そして子どもの親として、その内容におおいに共感を覚えた。

1. 子どもには多様な経験をさせよう

視野が広くなれば、それだけ人は自由になれる。より多くのものを見ることで、興味の対象が増え、理解できるものが増え、恐れる気持ちが減る。
起業家である筆者は、生活に柔軟性があるので(妻と協力して)娘に新しい経験をさせるようにしている。たとえば、バケーションで海外に長期滞在したり、昼間から新しい冒険に挑んだり、週末にしばしばミュージアムや映画に出かけたりといったことだ。

2. 知的なリスクをとり、失敗から学ぶことを促そう

子どもがもつ「失敗を恐れる気持ち」の枠組みを変えよう。憧れのチームに入るテストを受けたり、重要な役のオーディションを受けたりするように背中を押すのだ。
私が、リーダーや起業家たちの背中を押す際の指導法は、子どもにも応用できる。彼らに教えるのは、本当の失敗には3つの種類しかないこと。挑戦をやめるか、向上することをやめるか、最初から挑戦しないかのいずれかだ。そして失敗とは、人間自身を指して言うものではなく、ひとつの出来事に過ぎないということも。
また、不安で胸がつぶれそうになっても恐れる必要はないと教えよう。不安に感じるのは、きっとそれだけの価値があるからだ(価値のないことには、何も感じないだろう)。失敗は、その人にふりかかるものではない。その人の糧になるために起こるのだ。

3. 能力ではなく、努力を評価しよう

これは娘の子育てに関して、私が繰り返し自分に言って聞かせている何より重要なことだ。娘は誰に似たのかわからないのだが、とても頭がいい。しかし私はつねづね、優れた能力をもっていることを評価するのでなく、どんな努力をどれだけしているかを評価するよう心がけている。
同じことが、起業家にも当てはまる。成功する起業家がやるべきことをすべてこなせる能力を、生まれつき備えている人はいない。私はときとして、何かに懸命に打ち込む自分を楽しむ。また、努力すれば、それに見合った能力が身につくと信じている。

4. 才能より成長が大事

「天才児」というのは、一種のレッテルだ。それでその子のすべてを決めつけたり、それらしい生き方を押しつけるようなことがあってはならない。
「おまえは頭がいいのだから」と、わが子に言い続けるのはやめよう。代わりに、子どもが自分の「最良バージョン」に成長できるよう、またそのバージョンをつねに更新して、1つのレッテルではくくれない人間になれるように手助けしよう。

5. 子どもの興味を伸ばそう

子どもが何かに興味や才能を示したら、その興味やスキルを伸ばす機会を与えよう。物事を探求し、腕を磨く機会をもつことは、自信と能力を育む。それらはしばしば、子どもが成長するにつれて失われていくものだ。
そうした機会を与えることは、とくに意図しなくても、たやすくできる。私が起業家として構築したビジネスモデルは、さまざまな収入源を試してみて、その中から自分の興味を引いたものを発展させ、それらを組み合わせることで十分な収入を得る手段にするというものだ。
同じような方法で、子どもの興味を伸ばすことができる。

6. 賢い子どもにも、導きは必要

知性と情緒の両面で、われわれはみな、誰かに導き、育んでもらうことが必要だ。過干渉になってはいけないが、この点では子どもに十分すぎるほどの手をかけよう。
しかし、起業も同じだが、それは親だけでできることではない。子どもに必要な指導や育成を提供できるよう、メンターや支援者ネットワークの力を借りよう。

7. 教師と協力してプランを立てよう

子どもの担任教師に相談すれば、特別にレベルの高い課題を与えてくれたり、特別な注意を払ってくれたり、年長の子ども向けの教育にアクセスさせてくれたりするかもしれない。
すべての子どもは、素晴らしい能力にあふれた存在として扱われるべきだ。子どもの才能を見つけ出し、それを伸ばす手助けをしよう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Scott Mautz/Author, 'Find the Fire: Ignite Your Inspiration and Make Work Exciting Again'、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:leolintang/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.