【最終話・菅義偉】私の半生、3つのターニングポイント
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実は、官房長官になってからの菅さんは渓流を訪れることもないそうです。
官邸から離れることのない日常にあって、趣味の釣りは、菅さんの心の中にだけあるのでしょう。
インタビューの最後、私は菅さんの知られざるプライベートに切り込みました。
「青春時代のことは、あまり話したくないんだよ」
と笑った菅さんは、それでも記憶を蘇らせながら、
成功とはかけ離れた日々のことを丁寧に言葉にしてくれました。
秋田でイチゴや米を作っていたはずの一人の青年は、
家出同然で東京に出て、挫折し、自分の人生を繰り返し考えるのです。
その中で「政治」に興味を持ちます。
知り合いもないまま代議士の秘書となり、
妥協が許されない日々を送る菅さんは、
馬車馬のように働きながら、政治の世界を垣間見ていきました。
それでも、自分が政治に身を投じることなど想像もしていなかったというのです。
なぜなら、やがて田舎へ帰り農家を継ぐ日を思い描いていたからでした。
「両親が長男の私を待っていることを、知っていましたから」
菅さんの胸には望郷の念もあったに違いありません。
ところが、ある出来事をきっかけに、突如政治家を志すのです。37歳の時でした。
孤立無援のまま横浜市会議員選挙に立候補した、その時の気持ちを伺うと、菅さんはこう言いました。
「理屈ではなかった。あの時には、ここで政治家になるのは自分の運命かもしれない、と思えたんです。回り道をし、挫折を知ったのも、この日のためだったのか、と考えてほどです。そうしたら、あとは真っしぐら。何があっても政治家になり、人々のために働くんだと、決めていたんですよ」
当時、自民党から「立候補を取り下げろ」と言われ、受けた仕打ちを、忘れることはない、と語った菅さん。
だからそこ、若い人の志には全身全霊で声援を送る、と決めているのだそうです。
37歳で旋回した自分の人生を一度も悔いたことがなく、国民との約束を守る、という気持ちを抱き走り続けている菅さんの人間性は、この最終回にこそ、色濃く写し出されてている、と思っています。
「NewsPicks Premium 小松成美Talk」では、あらゆるジャンルの人たちにご登場いただき、熱のある言葉を伝えるべくインタビューを重ねていきたいと思っています。
ご期待ください。芯の強さと愛嬌を兼ね備えた菅義偉官房長官。今回の連載を通してより身近に感じることができ、より好きになってしまいました。これからも体に気を付けて頑張って欲しいです。ありがとうございました。