トルコショック、市場を揺らす
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ターンアラウンドマネージャーとして再建にあたっていた会社が銀行から「要注意先」の債務者区分とされていたため、毎月のように銀行から「返せ~、返せ~」とせっつかれていたんですね。
過剰な借入だったのでゼロにすべく、銀行には「1年後にぜんぶまとめて繰上返済します。毎月きちんと財務内容をレポートしますので、ご理解、ご協力をお願いします」と伝えました。
そして、1年後。きっちり耳をそろえて全額返済したわけです。そしたら、翌日、銀行の管轄支店の法人部長さんから電話がかかってきたんですね。
部長さん「昨日、返済を確認しました。ご協力ありがとうございます。ところで、返済も済んだことですし、トルコ国債を1億円買いませんか?」と営業してくるではありませんか。
別に銀行に協力するために返済したわけじゃなく無駄な借入を自社のためになくしただけ。そして、あんなに「返せ~」って言ってたのに舌の根の乾かぬうちに今度は「トルコ国債を買え」と来ましたか。
いろいろとこみ上げてくる気持ちをグッと抑えて「いい商品ですよね。でも、ウチは買いません」とニッコリ大人の対応をしました。
前置きがだいぶ長くなりましたが、いま部長さんにトルコショックについて聞いてみたいですね~。記事中コメントさせて頂いております。今回のトルコショックではFT記事に端を発しスペイン、フランス、イタリアの大手銀行の名前が具体的に挙げられており、これがユーロ売りはもちろん、世界的な株安に繋がった格好です。確かに国際決済銀行(BIS)の国際与信統計を元に数字をチェックしてみると、それらの国々の名前は目につきます。例えば、18年3月末時点でトルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務は合計2232億ドルですが、上記3か国だけでその合計額の約6割を占めることになります。こうしたデータを元に金融市場が懸念するのは「トルコ発、スペイン・フランス・イタリア経由、ユーロ圏行き」という危機の波及経路でしょう。
とはいえ、それら3か国が世界向けに有する国際与信残高にとってトルコがそこまで大きい訳でもありませんから、事態がそこまでクリティカルなものになるとも思えません。
しかし、心配がないわけではありません。キーワードは難民です。根本的な解決が済んでいないとは言え、2015年に勃発した欧州難民危機をEUが抑え込めているのはトルコとの間で2016年3月に妥結した「EU-トルコ合意」によるところが大きいのです。具体的に今、EUはトルコにお金を払って難民を堰き止めて貰っています。
言い換えれば、欧州難民危機は「エルドアン政権がトルコ沿岸の警備にどの程度真剣にコミットしてくれるのか」という点に依存しています。ここに至るまでのエルドアン大統領の言動を見る限り、故意的に難民管理を杜撰なものにするリスクは無いとは言えないでしょう。いや、故意ではなくともトルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も考えられます。率直に言ってイタリアやドイツの正常性に鑑みれば、今、EU域内に難民流入が再開するのは非常に不味い話です。
現状、金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されていますが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより強い脅威であるように思われます。スペインの銀行はトルコのみならず南米向けへ債権も最大ですから、こういう時には影響が大きいですね。あと、ユーロももともと通貨先物ポジションでもロングが積み上がり気味でしたので、こういう局面では大きく下がりやすい環境にあったといえるでしょう。