[東京 3日 ロイター] - 茂木敏充・経済財政政策担当相は3日、2018年度の年次経済財政報告(経済白書)を閣議に提出した。今年の副題は「白書:今、Society5.0の経済へ」で、世界的な第4次産業革命の動きが広がる中で、日本が国際的にイノベーションの優位性を保つための課題について考察している。

白書では、日本はイノベーションの源泉となる基礎力は有しているものの、それを効果的に活用する適合力が弱いと分析している。

日本は、情報通信ネットワークの発達や、人工知能(AI)・ロボットの新技術の導入といったインフラ・技術面などでは各国をリードしている。AI関連の特許シェアは世界第1位(12─14年)、製造業の付加価値に対するロボット比率は韓国に次ぎ第2位(15年)にランクするなど、技術力は高い。

一方で、その利用においては、インターネット販売の利用率は経済協力開発機構(OECD)平均の60%を下回っているほか、家計消費に対する電子決済の割合は2割前後と他国に比べ極めて低い。

また、サービスの自動提供や無人自動走行の実用化が遅れがちとなってきた背景には、人材不足や雇用面での流動性の低さ、従来のシステムの切り替えが進んでいないことなどがあると説明。安全面、人材育成、雇用面等での対応を図りつつ、実用化へ向けた動きを加速していくことが課題になるとしている。

新しいデジタル時代に対応した「適合力」も相対的に弱いと分析。

IT化に対応した企業組織の体制面が遅れており、最高情報責任者(CIO)を専任で設置している企業の割合は米国の半数以下にとどまっている。人材への投資の水準も国際的にみて低く、起業の意志がある人の割合は米国の3分の1以下、ドイツの半分程度となっている。研究開発での国際連携を伴う割合も米中独に比べて極端に少ないなど、「自前主義」の傾向があると指摘している。

さらに、イノベーションや生産性向上の成果を、賃金や教育訓練といった形で再び人材育成に還元することで、労働分配率の低下にも歯止めをかける効果が期待されるとしている。

(中川泉 編集:田中志保)