日銀、金融政策を修正 長期金利の上振れを容認
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「めど」の柔軟化、ETF買い入れ構成の修正、政策金利残高の修正が決定されました。ファインチューニングを見込んでいた向きにとっては満額回答と言える内容でしょう。為替市場は乱高下したものの、ほぼフラットな反応だったと言えます。
今回、色々な観測がありましたし、今後も同様の展開はあるでしょう。重要なことは、こうした「緩和ではない方向」の措置は欧米の経済・金融情勢が堅調で、これに応じてFRBないしECBが相応に正常化プロセスを進捗させている状況でしかできないということです。景気は循環するものです。米国もユーロ圏も史上最長の拡大局面が視野に入る中で、政策当局としては「次の局面で何が出来るか?」という想定は相応に重要であることは論を待たないでしょう。言い換えれば、「このまま空手で不況に突っ込むことは避けたい」という一種の恐怖感は為政者として当然、備えるべき視点となります。
賃金や物価情勢が加速していないにもかかわらずFRBやECBが正常化プロセスに固執するのは、結局はそうした糊代論であり、「出来るときにやっておきたい」、「溜められるカードは1枚でも多い方が良い」という発想があると考えられます。特にECBの正常化プロセスには大いに疑問点もあり、見切り発車的な部分も含まれているように感じられます。
BOJの現行政策の有効性やこれに伴う副作用の有無に関しては(少なくとも実務の世界では)議論が尽くされていると私は思いますが、それ自体はいろいろな議論があって良いでしょう。それは自由です。しかし、「次の不況(日本の場合は円高)局面で何ができるか」という視点を欠きつつ、現行政策の継続可能性すら議論させないムードはやはり危ういと思います。もっとも、為政者から糊代論を明示するわけにもいかないでしょうから、ある程度は為政者と市場参加者の間の阿吽の呼吸が必要になってくるテーマかと思われます。長期金利の上振れを容認となってますが、むしろ政策金利のフォワードガイダンス強化の印象のほうが強いですね。
具体的には「2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持」ですから、長期金利のボラは上がるかもしれませんが、水準は少なくとも来年の秋以降まで当面上がらないということですよね。
そう考えれば「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」のタイトルもしっくりきます。事前の大方の見方通り、想定の範囲内ですね。
「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」(2018年7月31日、日本銀行)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/k180731a.pdf
「経済・物価情勢の展望(2018年7月)ー賃金・物価に関する分析資料ー」(2018年7月31日、日本銀行)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180731f.pdf
「日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて」(2018年7月31日、日本銀行金融市場局)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180731g.pdf
「今後の ETF の買入れの運営について」(2018年7月31日、日本銀行金融市場局)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180731h.pdf
「当面の長期国債等の買入れの運営について」(2018年7月31日、日本銀行金融市場局)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180731i.pdf
「2019 年の金融政策決定会合等の日程」(2018年7月31日、日本銀行)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180731b.pdf