脳のリラックス状態による効果

従業員たちが大声で笑っているそばを通り過ぎたとしよう。
あなたは面白い猫の動画でも見ているのかと考えて、こっそりコンピューターの画面をのぞき込みながら「仕事に戻りなさい」と伝える厳しい視線を向けるだろうか。それとも足を止めて、笑いの輪に参加するだろうか。
生産性を重視する上司の多くは、後者ではなく前者に近い答えを選ぶだろう。従業員は悪ふざけではなく、仕事の対価として給与を受け取っているからだ。
しかし、あなたが笑い声を静めるリーダーだとしたら、BBCのジャーナリスト、ブルース・デイズリーの記事が教訓になるはずだ。笑いの科学に深く切り込んだ魅力的な内容であり、あなたの大真面目な険しい表情は、従業員の生産性と創造性に悪影響を及ぼすと述べている。
デイズリーの記事では、人はなぜ笑うのか、笑いは脳にどのような影響を及ぼすかについて、いくつもの研究結果がまとめられている。メッセージは非常に明確だ。人は一緒に笑うと互いを心地良く感じるようになり、このリラックス状態は創造性を発揮するのに最高の環境だという。
ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのソフィー・スコット教授によれば「笑いは、リラックスした安全な状態にあるという潜在意識の信号」だという。
「複数の人が一緒に笑うことは、警戒が解けたことを示唆する。脳がリラックスすると、自由にアイデアを出し合うことが容易になり、これが創造性につながるという研究結果もある」
別の研究では、被験者にスタンドアップコメディーを見せてから、難しいパズルをさせると、アイデアをひらめきやすくなり、パズルの正解率が最大20%上昇するという結果が出ている。
日常生活では実感されていることだと思うが、笑いはストレスを軽減し、人々を団結させるという研究結果もある。

笑いが起きやすい職場環境をつくる

これらを総合すると、上司へのメッセージは明白だ。笑いは仕事を楽しくする可能性が高いだけでなく、生産性と創造性も高まるということだ。従業員たちがくだらないことで大笑いする姿を目撃しても、眉をひそめるのではなく、一緒に笑ったほうがいい。
ただし、職場でふざけることを認めるだけでは不十分であり、上司は自ら笑いやすい環境をつくらなければならない。
デイズリーは、笑いに関する研究の第一人者ロバート・プロヴァインの言葉として「楽しさの閾値を下げることで、自発的に笑いを増やすこともできる。笑う準備を整えておくということだ」と述べている。
プロヴァインは『Laughter: A Scientific Investigation』(笑い:科学的探究)の著者でもある。あなたと家族に、毎晩「きょう、いちばんおかしかった時はいつだった?」というシンプルな問いを投げかけるのも効果的だ。
プロヴァインはさらに、チームランチや会社の飲み会など社交の時間を増やすことも提案している。チームメンバーが互いの顔を見ながら話す機会を設けることを勧める科学者もいる。Slackで笑顔の顔文字を送り合っても、一緒にばか笑いするのと同じ効果は得られない。
最後に、一緒に働く従業員をよく知っていて信頼しているのであれば、皮肉な態度で接することを恐れてはいけない。研究によれば、皮肉を考えて言い合うことは脳の訓練になり、創造性を促進するという。
そのため、ドライで切れ味の鋭いユーモアを好む人も、職場には不適切だと思う必要はない。チームメンバーが傷つかず、あなたが大笑いできるのであれば、きっと良いアイデアが次々と出てくるはずだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman/Contributor, Inc.com、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:jacoblund/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.