12年にわたる研究結果を発表

起業家はインスピレーションを得てそれに向かって挑戦していくだけでなく、会社を育てていくという重要な責務を担っている。
多忙な起業家は、時間というものが最も希少で最も価値のあるリソースであることに気づくだろう。そして、その時間を効率的に使えるかどうかが成功と失敗を分けるのだ。
先日、ハーバード大学ビジネススクールのニティン・ノーリア学長とマイケル・ポーター教授が、大企業のCEOの時間の使い方に関する研究結果を発表した。12年に及んだこの研究は、忙しい起業家たちの検証であると同時に、成功したビジネスリーダーたちのマインドを深く探るものでもあった。
研究対象となったのは、年間売上高の平均が130億ドルの上場企業25社のCEOたち(うり女性は2人)。彼らの毎日の行動を15分単位で追跡した。その結果はきわめて詳細で内容の濃いものだった。
たとえ年商数百万ドル規模の会社を経営していなくても、ビジネスリーダーというものは自分の時間の使い方がリーダーシップにどのような影響を及ぼすか理解しておく必要がある。

1日の平均労働時間は9.7時間

部下と過ごす時間があまりに少ないと、お高く留まった思いやりのない人とみなされかねない。一方、部下と一緒に多くの時間を過ごしすぎると、チームのクリエイティビティやモチベーションをなくしてしまうマイクロマネジメントな上司に思われる可能性がある。
結局のところ、創業者あるいはCEOとしての役割を理解し、その時間をどのように業務に振り分けるかが、きわめて重要なのだ。
ポーターとノーリアはこう指摘している。「リーダーのスケジュールは、どのように組織を導いたり、どのようにして組織内に強力なメッセージを送っていったりするかの意思表示である」
ここに、研究結果から得られた最も説得力のあるデータのいくつかを紹介しよう。
・CEOたちは平日、1日平均9.7時間働いていた
・CEOたちの週平均労働時間は62.5時間
・CEOたちは、週末の79%と休暇中の70%の時間も利用して仕事をしていた
・CEOの仕事の半分以上(53%)は本社の外で行われるものだった。支社を訪れたり顧客と会ったりするほか、移動時や自宅での仕事も含まれる。
概して、CEOの時間は起業家のそれと同様に、組織全体を通して必要とされるものである。さらに、CEOも「起業家の呪い」の影響を受けやすい。「仕事モード」をオフすることができず、働き過ぎになってしまうというのだ。
これは驚きではないだろう。だが、組織を率いることはフルタイムで責任を負うことだと考えている人は要注意だ。

業務時間の72%を会議に費やす

CEOが最も時間をとられる仕事のひとつが会議だ。この研究で調査対象となったCEOたちは毎週平均37の会議に出席し、業務時間の72%を会議に費やしていた。1回の会議の長さと質にばらつきはあったが、最終的に費やされた時間に変わりはなかった。結果は概して次のようなものであった。
・CEOたちの職場での時間の61%は直接顔を突き合わせての対面会議に費やされていた。
・15%は、電話をかけたり書類を読んだり、文書を作成したりする時間に使われていた。
・残りの24%はEメールを書く時間に使われていた
この研究ではCEOたちのオフの時間の使い方についても調査された。1日あたり約6時間のオフをどう過ごしているのだろうか。
・約3時間、つまりオフのうちの半分は家族を過ごしていた。
・1日平均約2.1時間は、自分の時間としてテレビや映画などを楽しんだり、趣味に使ったりしていた。
・CEOたちの平均睡眠時間は6.9時間だった。
・運動に費やす時間はオフの9%、だいたい1日45分ほどだった。
CEOたちは仕事に集中しながらも、心身の健康を保つことなど仕事以外のことに使う時間の質と量を最大化しようとしていた。
おそらく、この研究で調査対象となったCEOたちは、自分の心と体のメンテナンスなど、よりバランスのとれた人生のために仕事以外の時間を大切にし、規律ある生活を送っていたのだろう。
この研究から得られた結論は簡単だ。CEO(や起業家)はすべてをこなすことはできない。限られた時間をどれだけ効率的に使うか──タイムマネジメントは会社の健全性だけでなく自分の健康にとっても大事なのだ。
もし、あなたが時間の管理や使い方に悩んでいるなら、これらの結果を参考にしてみてほしい。成功したCEOのタイムマネジメント術がよくわかるはずだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Peter Gasca/Entrepreneur, consultant, and author、翻訳:中村エマ、写真:Lobro78/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.