ブランドは“つくれる”のか? — 新しいブランディングのアプローチを考える
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私の答は「つくれる」です。
若いころ、30代前半まで、「ブランドづくり」に従事して来ました。一からブランドづくりに携わったものもありますし、ブランド再生に携わったものもあります。
そして、その経験から言えるのは、ブランディング=「ブランドをつくること」は、この記事の登壇者のような「マーケティング・コミュニケーション」担当者「だけ」では、不可能ということです。あくまで、彼らが管掌する範囲はブランディングのごく一部にすぎません。
まずは、そのブランドが提供しているプロダクト・サービスから得られる顧客体験が、ブランドづくりの根幹となります。その上で、あらゆるブランドと顧客との接点(タッチポイント)を、ブランドが提供するとして定義した価値(このように価値を定義することが、「ブランドをつくる」上での第一歩となる)の体験の場として設計することが基本です。
私が関わったブランドづくりのうち、ブランド再生に位置付けられますが、マツダがあります。1999年、まず、マツダが行ったのは、自らのブランド価値規定でした。これには大きく二つの要素があります。自らを支持してくれる顧客の価値意識は何か、そしてマツダが提供すべき、マツダならではの価値。その上で、まず行ったのは、その価値規定に沿ったプロダクトの開発です。それが、2002年の初代アテンザでした。そして、その発売とともに、ブランドを体現したコミュニケーションを開始しました。クルマ好きの30代以上なら覚えているかもしれません。Zoom-Zoomという今も使われるタグラインはこのとき生まれました。
しかし、現実には、マツダのブランドづくりが大きな成果を手にするまで、10年近くかかりました。それは、プロダクトを核に、あらゆるタッチポイントが、自らが定義するブランド価値に追いつくまでに、それだけの時間がかかったことを意味します。ブランドづくりというのは、そのブランドに関わる人全てのものです。そして、マツダ自身、今この時も、自らが目指すブランドに向けて、不断の努力を続けています。
最後に、マツダのブランド再生に当たって、1999年、マツダのブランドづくりに関わる全ての人が目にし、涙し、ブランドの再生を誓った「マツダ・ブランド・エッセンス・ビデオ」のリンク先をシェアします。
https://youtu.be/SPV-WatDDxoオムニチャネルに携わる人も必読記事。この界隈でブランドを語らせるならこの2人でしょうというコンビです。
オムニチャネル、OMOで起こり得る課題も、「authenticity(オーセンティシティ)=自分らしさ」を自分たちが認識していないか、市場に合わせすぎてそれが失われているパターン(ブランド・顧客の消費)が多いこと。
ブランド名を単に量的に配信をしてユーザーに買ってもらうことは「ブランドを消費」することでしかないと考えています。一方で、「ブランディングしていく=育成していく」と表面的に言う人が本当に多いですが、そのファーストステップは、「らしさ」を見出し、「らしさ」を強調するために何に対して投資をするか?を決めることだと思います。※その投資は短期的にリターンを求めないブランドはつくれるのか。永遠の課題ですね。
短期間でやってのけた一例に腕時計のHUBLOT(ウブロ)があります。創業から30年も経たないうち、世界の富裕層がつける高級ブランドの仲間入りをしました。ウブロはW杯をうまく利用。2010年から公式タイムキーパーになりました。同時にマラドーナモデルを発表。なぜかマラドーナは両手首に腕時計をつけて登場したことからSNSで話題に。その直後に本田選手も両手首にウブロをつけて登場したので、日本でも本田△の両手付けとして男性陣は騒いでいました。スポーツ、特にサッカーは4年に一度の支出で効率いいブランディングができます。ただ適切な人を捕まえることも条件ですが。
NIKEは、マス広告をうまく使ってブランディングをしてきた典型例です。モノを買わせる前に体を動かすことへの興味を換気せねばいけません。”Just do it"という翻訳の必要ないタグラインは、プリント、コマーシャル、OOHという典型メディアで世界をいい方向に洗脳しました。費用をかけて面白いコンテンツ(Write the Future)を作りSNSで広げてもらうという方程式をやはり2010年のW杯以降踏襲、うまくデジタルに移行しています。
ただ日常に出会うブランドについては、スターバックスの長見さんがおっしゃるように、ビジネスの現場で地道にブランディングしていくのが肝要です。自分が体験することが、ダイレクトに好き嫌いにつながるからです。
あと気にすべきは企業のトップの影響力です。Apple, amazon, Alibaba、Softbankはとても上手い。他方でUber のようなケースもある。
ブランディングは積み重ねということですね。