小売株の長期投資は魅力的です
2014/03/17, Longine
投資家に伝えたい3つのポイント
- 小売株は、長期的な資産形成を考える個人投資家のみなさんにとって、とても魅力的な投資対象だと考えます。
- その理由として、①銘柄への馴染みと理解度の高さ、②良好な長期株価パフォーマンス、③着実な業績拡大が可能な点と業績安定性の高さ、④小売業を取り巻く市場環境の変化の4点を挙げます。
- 例えば、ニトリ、ケーズホールディングス(ケーズデンキ)、ドン・キホーテなどは2001年初に比べ株価がそれぞれ10倍、5倍、4倍程度と、同期間で15%下落しているTOPIXに対して大きくアウトパフォームしています。
小売株の長期投資って魅力的です
読者のみなさん、はじめまして。私は、小売株(専門店株)を中心に担当させていただく廣田千晶です。私は、アナリストとして10年以上小売株の調査をしてきましたが、小売株は個人投資家のみなさんの中長期の資産形成のための投資対象として、とても魅力的だと思っています。これまでは、機関投資家にレポートを書いてきましたが、この度、個人投資家のみなさんに直接お伝えする機会をいただいたことをとても嬉しく思っています。みなさんの資産形成に少しでもお役に立てる情報・アイデアをご提供できるようにがんばりますので、どうぞよろしくお願いします!
小売株投資の4つの長所
小売株は、長期的な資産形成を考える個人投資家のみなさんにとって、①銘柄への馴染みと理解度の高さ、②良好な長期株価パフォーマンス、③着実な業績拡大が可能な点と業績安定性の高さ、④小売業を取り巻く市場環境の変化の4点から、とても魅力的な投資対象だと考えています。
投資対象を理解しやすい小売株
銘柄への馴染みと理解度の高さについてですが、みなさんの住居やオフィスの近隣に店舗を構える上場小売業は多いですよね。そのため、銘柄名を見ても、親近感が湧くとともに、普段から利用されていることで、業態やオペレーションの良し悪しについてご存知のものも多いのではないでしょうか。米国の著名投資家、ウォーレン・バフェットも根幹となる投資哲学のひとつに「自分の知らない企業には投資しない」を挙げていますが、その銘柄の事業内容を理解できることは、長期投資の上でとても重要です。
テクノロジーの会社に変調が起きたとき、あなたはその理由が分かりますか?
仮に、みなさんが全く馴染みのないテクノロジーの会社に投資したとしましょう。ある日、新技術の開発に成功した競合が台頭したことをきっかけに株価が急落したとしても、その競合との技術力の違いを自身で判断することは難しいですし、株価の売り買いの判断もつかない可能性が高いかもしれません。
会社への理解が深ければ、株価が下がっても買い増しする機会がある
身近にある小売店であれば、例えば、前月の既存店売上高が悪かったことで株価が下がったとしても、先月は週末の降雨が多く、みなさん自身が店から足が遠のいていたことを思い出すかもしれません。状況を把握する材料が少しでも手元にあれば、短期的な値動きで狼狽することはありませんし、長期的な成長拡大を期待している銘柄であれば、そのタイミングで買い増す判断もできます。
株式市場のパフォーマンスを大きく上回る小売株
次に、過去の株価パフォーマンスを見てみましょう。図表1は、TOPIXと主要小売業専門店銘柄、図表2は、TOPIXと日本を代表する他セクター銘柄の株価パフォーマンス一覧(2001年1月を100とした指数)ですが、多くの小売株がアウトパフォームしています。
株価が爆騰した小売株群
例えば、ニトリ、ケーズホールディングス(ケーズデンキ)、ドン・キホーテなどは2001年初に比べ、株価がそれぞれ10倍、5倍、4倍程度と、同期間で15%下落したTOPIXに対して大きくアウトパフォームしています。また、ローリーズファーム、グローバルワークでお馴染み、ファッションアパレル企業のポイントは、株価が高騰した2005年末には、2001年初に比べ一時80倍にまで株価が上昇しました。直近は調整しましたが、現在でも株価は2001年初の約40倍の水準です。さらに、近年上場した銘柄の中にも、100円ショップのセリア(2003年9月に比べて約8倍)、九州を基盤とするドラッグストアのコスモス薬品(2004年11月に比べて約8倍)、JINSPCでお馴染みメガネチェーンのジェイアイエヌ(2006年8月に比べて約9倍)など、ご紹介しきれませんが、市場平均を遥かに上回るパフォーマンスを創出する銘柄が小売セクターには数多くあるのです。
小型株が他セクターを圧倒する株価パフォーマンスを生み出せる2つの背景
何故、多くの小売株がこのように他セクター銘柄を凌駕するパフォーマンスを創出することができるのでしょうか?私は、その理由として、①有店舗販売に特有の着実な業績拡大が可能な点と、②業績安定性の高さがあると考えています。
ひとたびビジネスモデルが確立すれば、短期的に事業を拡大することが可能
まず、着実な業績拡大が可能な点について、チェーン小売店の多くは、多店舗展開のために、画一的なフォーマット、オペレーション、マニュアルなどを有しているところが多いため、採算の合うフォーマットが出来れば、人材の育成スピードや資金面等の制約はありますが、比較的早く横展開することが可能となります。特に、ショッピングセンター、駅ビル、ファッションビルなどの商業施設内に展開する小売業の場合、大手ディベロッパーなどが複数施設を運営しているケースが多いことに加え、施設内のテナントの同質化が起きており、新しい有望なテナントであれば、出店の引き合いも多く、軌道に乗ると着実に比較的短期間で拡大することが可能となります。
小売業の業績の振れ幅は思いのほか大きくない
また、製造業では黒字計画が突如赤字へ転落ということもありますが、小売業は、天候の影響こそあれ、通年の売上が計画を1割以上乖離することは珍しく、業績のブレ幅は製造業に比べると比較的軽微といえます。また、月次売上高発表等で業績の進捗や計画との乖離を確認することができることに加え、B-to-Cでは顧客となる消費者の反応が早いことから、状況が悪ければ、それに対し企業側がすぐに打開策を打つこともできます。
事業での現金化のスピードが速いことも事業拡大の鍵
さらに、製造業では、高額な設備施設投資や技術開発投資が必要とされることに加えて、せっかく投資した設備が技術革新によって、使い物にならなくなるリスクがありますが、
小売業の主な設備は売上を生み出す店舗であり、規模によって多少異なりますが、郊外または商業施設内への衣料品系の出店であれば、1店当たりの出店投資が数千万から1億円程度と限られており、多くの企業が必要な出店をキャッシュ・フローの範囲内で賄うことが可能です。しかも、売上の多くが現金回収できるため、資金回収が早く、回転差資金(仕入に対する支払い期限よりも早く現金売上が獲得できることで生まれる余裕資金)を活用して成長のための出店投資に回すこともできるのです。これゆえ、例えば、中京地区を基盤に調剤併設型ドラッグストアを主に展開するスギホールディングスでは、過去10年で売上高が3.9倍、マルチブランドポートフォリオ展開でトレンドリスクを軽減するファッションアパレルのパルでは、同期間で3.7倍など、着実な売上成長が可能となるのです。もちろん、小売であれば、どの企業でも良いというわけではありませんので、これからの私のコメントを通して、その見分け方や各企業の強みについて継続的にお伝えしていきたいと思います。
大手小売企業は依然事業を拡大できる余地は大きい
小売業を取り巻く環境の変化について触れたいと思います。日本では、第2次世界大戦後の戦後復興期に多くの中小小売店が生まれました。日本には未だ100万以上の中小小売店があります。日本の年間小売販売金額は134兆円ですが、うち70兆円がコンビニ以下の小さいお店で販売されているなど、欧米先進諸国に比べて、市場の寡占化率が極めて低くなっています。
大手小売業に有利な競合環境
中小小売店は、大手小売業との競争激化に伴い、店舗数は1982年以降減少傾向にあります。また、中小商店経営者の多くが団塊世代に当たるため、減少ペースは今後加速することが予想されます。これにより、大手小売業の寡占化が進み出すことから、消費全体のパイは伸びなくても、経営力が相対的に高い上場企業においては有利な展開が期待されます。加えて、人口減少になればなるほど、労働力不足や競争環境の激化で、強い企業が市場シェアを上げるチャンスがあるといえるのです。
今後の小売株への期待
アベノミクスへの期待感からTOPIXは、昨年11月から約5割上昇しました。円安に伴う輸出銘柄の業績回復期待もあり、TOPIX小売株指数の同期間のパフォーマンスは35%とマーケットに負けています。小売株は上げ相場のときは出遅れがちなのですが、長期で見た場合には十分にパフォーマンスを上げられる銘柄が多いため、今から物色しても十分間に合う小売銘柄が数多くあると考えています。
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