なぜ創業期のGoogleは、人事部長より先にシェフを採用したか?

2018/6/3
2007年10月、米Googleが、日本オフィスの「社員食堂プロジェクト」を開始した。
Googleと言えば、創業期の1990年代末に、56番目の社員として、ストックオプション付きのシェフを採用したことで知られる。人事部長よりも先に上級シェフを採用したことから、今でも伝説のように語り継がれるエピソードだ。
「社員を会社の敷地内に留めておける、社員の生産性を高める食事を出してほしい」
Google共同創業者のセルゲイ・ブリンは、ヒルトンホテルのシェフだったチャーリー・エアーズに、そう頼み込んだのだという。
創業期の米Googleで専属シェフをつとめたチャーリー・エアーズ。(写真:Kim Kulish/Corbis Historical/GettyImages)
それから約10年後、当時の日本オフィスの社員は150人。オフィスにはキッチンもない。にもかかわらずGoogleの日本での要求は、「フルビュッフェを用意してほしい」というものだった。
あまりの要求レベルの高さに、日本の大手給食会社の誰もが怖気づいて手を挙げない中、これに挑んだ1人の男がいた。
荒井茂太。もともと海外でサッカー選手として活躍し、はからずも社員食堂業界に携わることになった人物だ。
アルバイト4人と荒井の5人で立ち上げた日本の社食チームは、9年後の2016年には総勢80人体制となり、社員2000人以上に提供するまでに成長。売り上げも9倍に拡大した。
いまや、世界中のGoogle社員が出張で日本を訪れると、社食のレベルに驚いて帰っていく。米カリフォルニア州マウンテンビューの本社から、「Mr.荒井に本社の社食もプロデュースしてほしい」と声がかかるほどだ。
荒井は、いかに世界のGoogleの中でもトップレベルの社員食堂を作り上げたのか。そもそも、なぜGoogleは社員食堂を大切にするのか。
全3回にわたり、社員食堂の業界構造から最前線までを紹介する特集「俺の社員食堂」。
最終回は、世界一の社員食堂クオリティと言われる食事を「無料で」提供する米Googleにおいて、チャーリーの薫陶を直接受けたキーマン、荒井茂太のインタビューをお届けする。
いまや大所帯となったGoogle Japanの社員食堂について、これまで語られることのなかった「誕生秘話」をお送りしよう。
荒井茂太(あらい・しげた)/株式会社ノンピ取締役ケータリング事業部長
2007年〜2016年、Google Japanのフードマネジャーを務める。現在はケータリングが主力の会社で、LINEや三菱地所、グラクソ・スミスクラインなどのカフェ事業などを運営

サッカーで培った「社食マネジメント」