設立7年目、登録ユーザー250万人

ピアッツァ・テクノロジーズ(Piazza Technologies Inc.)という名前を聞いて、ピンとくる人はほとんどいないだろう。でも、少し前まで大学でコンピューターサイエンスを学んでいた人なら、この会社を知らない人はほとんどいないはずだ。
ピアッツァは、工学や数学など理系の学生のための無料Q&Aサイト。設立7年目で、登録ユーザーは約250万人にのぼる。トップ50大学のコンピューターサイエンスの学生の98%がピアッツァを利用しているという数字もある。学生たちのアクセス時間は、平均して1日(というか1晩)3時間を超える。
当然ながら、シリコンバレーにピアッツァのファンは多い。「学生時代はピアッツァをめちゃくちゃよく使った」と、スタンフォード大学で電気工学を学んだビクラム・ギドワニは語る。「どの授業のどんなトピックでも、最高のフォーラムが見つかった」
そしてピアッツァは今、ある意味で自明の進化を遂げつつある。その特殊なユーザーグループを武器にマネタイズすることだ。
ひょっとするとピアッツァは、テクノロジー企業と学生にとって理想の「出会いの場」なのかもしれない──。創業者のプージャ・サンカルCEO(37)が、そう思い始めたのは2年ほど前のことだ。
そこで2016年末にピアッツァ・キャリアズをスタート。一定の料金を支払った企業は、学生ユーザー(事前にオプトインしている場合)にアクセスできる。ある学生が特定のトピックのトップコメンテーターか調べたり、「2018年卒の人工知能のクラスの教員補助」など検索条件を狭めたりすることもできる。
ピアッツァによると、企業が学生に送るメッセージの90%は開封されるという。

優秀なテクノロジー系人材の宝庫

ピアッツァのリクルーティング機能をとりわけ重宝しているのは、テクノロジー分野で優秀な人材を探しているが、学生たちにはあまり知られていない企業だろう。これまでにホイールプール、エアビーアンドビー、エヌビディア、バークレイズなど80社が利用しているという。
そんなピアッツァに、投資家もおおいに注目している。これまでにベスマー・ベンチャー・パートナーズ、コスラ・ベンチャーズ、セコイア・キャピタルなどのベンチャーキャピタルなどから計3200万ドルを調達してきた。
「ピアッツァは、テクノロジー系の有望な学生と特別な関係を築いている」と、ホスラ・ベンチャーズのマネジングディレクターであるキース・ラボイスは語る。「学生たちが、ピアッツァに対して本物の愛情を感じているのがわかる。ピアッツァの話をするときは、みんなニコニコしているんだ」
創業者のサンカルにとって、ピアッツァがリクルーティング・プラットフォームとして評判になるのは予想外のことだった。もともと彼女がピアッツァを立ち上げたのは、昔の自分ように、プログラミングを学ぶ女子学生を助けたいという思いからだった。
サンカルの通っていた大学でも、勉強グループは男子学生ばかりで、女子学生は行き場がなかった。「いつも1人で、教室の隅に座っていた。内気だったから、誰かに助けを求めることもできなかった」
ピアッツァは男女の壁も心の壁を取り払ってくれる。匿名で利用することもできる。「自分の経験に基づいてプロダクトをつくった」と、サンカルは語る。

不利な条件を抱える学生の支援も

インド生まれのサンカルは、幼少の頃は家族とともに最貧困州であるビハール州とウッタルプラデシュ州の間を何度も行き来した。2歳のとき、物理学者の父親の仕事で一家はカナダに移住。さらにアメリカに移り、サンカルが11歳のとき再びインドに戻ってきた。
ビハール州の家では、電気も水道も止まってしまうことがしょっちゅうあったから、ローソクの火の下で勉強したことも少なくない。子どもでも、男の子と女の子は厳しくわけて育てられた。
やがてサンカルは、インドでもトップクラスの工学大学であるインド工科大学カーンプル校に合格。だが、コンピューターサイエンス学部の女子学生は3人だけだった。
その後、サンカルは米メリーランド大学カレッジパーク校でコンピューターサイエンスの修士号を取得。オラクル、コズミックス、フェイスブックでソフトウエア開発を担当した後、スタンフォード大学の経営大学院に進学。在学中の2009年にピアッツァを立ち上げた。
現在パロアルトにあるピアッツァは、内気なだけでなく、さまざまな不利な条件を抱える学生たちが問題を乗り超える支援をしている。既存のオンライン学習システムのディスカッション機能に代わる「語り場」も提供している。
ピアッツァのユーザーが増えるほど、人材を探す企業とのマッチングの質は高まると、ホスラ・ベンチャーズのラボイスは語る。また、ピアッツァは今後も高い成長のポテンシャルがあると言う。カギは「あなたのキャリアをスタートする最高の場所」だと学生に売り込むことだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Peter Coy記者、翻訳:藤原朝子、写真:vitranc/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.