【記者座談会】あの企画は、なぜスベったのか、なぜウケたのか

2018/5/15
「どちらが新時代の記者・編集者にとって魅力あるメディアか、公開トークバトルでもやりませんか?」
2018年4月。NewsPicks編集部は、オリジナルコンテンツを取材・執筆できる記者・編集者について、初めて公募を開始した。それに伴い、4月25日に開催されたNewsPicks × BUSINESS INSIDER JAPANの合同採用イベント「ジャーナリスト2.0」。
昨日に続き、当日の現場レポートをお届けする。最終回は、対バントーク3本勝負の大将戦、両編集部を引っ張る中核記者2人同士のバトルロワイヤル。
テーマは、「ウケた企画、スベった企画」だ。
*前回までの記事
#00 BUSINESS INSIDER JAPANを大解剖
記者採用対決。強敵ビジネス・インサイダーを知る7つのルール
#01 NewsPicks×BI 編集長トークバトル
【激論】2人の異端編集長が考える、新しいメディアのカタチ
#02 NP×BI 新人記者トークバトル
斜陽の時代に「記者」を選んだ、ミレニアル女子たちのホンネ

2対2の「バトルロワイヤル」

司会・大室 ここから、今日の最終セッションに入らせていただきます。改めて、まずはお互いに軽く自己紹介を。
BI滝川 BUSINESS INSIDERの滝川です。「働き方」や「キャリア」をテーマに、ずっと追っています。去年の2月までは、新聞社で働いていました。この壇上に、偶然にも元同僚がいます。
滝川麻衣子(たきがわ・まいこ)Business Insider Japan記者
2000年代に産経新聞社入社、経済部記者を経て2017年4月からビジネスインサイダージャパンで「変わる生き方」と「働き方」を担当。
大室 NewsPicksの森川さんが、奇しくも元同僚。
NP森川 そうなんです。私は滝川さんと同じ産経新聞で、6年働いた後に、週刊ダイヤモンドに移りました。
その後、移籍したNewsPicksでは、「ユダヤ」「数学」「テック」「エネルギー」などなど、何でも屋としてやっております。
森川潤(もりかわ・じゅん)NewsPicks記者
米国生まれ。トロント大学留学、京都大学文学部卒業後、産経新聞社入社。東京本社経済本部などを経て、2011年週刊ダイヤモンド編集部に転職。主に、東京電力などエネルギー業界を担当する傍ら、音楽やスポーツなども取材。2016年4月から現職。意識低い系。
BI伊藤 BI副編集長の伊藤です。私は、2000年ぐらいから、アスキーという媒体で、「週刊アスキー」という紙媒体を主にやっていました。その後、週刊アスキーのブログメディアの立ち上げをやって、Webは8年ぐらい。
BIに来てからは、テクノロジーメインで担当しています。出版社の出身としては、ミレニアル世代記者から旧来扱いされて辛いところですが(笑)、旧来メディア出身なりのトークができればと思います。
伊藤有(いとう・たもつ)Business Insider Japan副編集長/テクノロジー統括
2000年代初頭から大手IT出版社の雑誌、およびPC/IT週刊誌で活動。編集長代理を務めた後、現職。近年はAI/ディープラーニングの産業利用の現状と発展に興味持ち取材を続けている。
NP後藤 初めまして。NewsPicks副編集長の後藤です。私は、10年ほど紙メディアにいました。毎日新聞に5年、週刊ダイヤモンドという経済誌に5年。
そして2年前に、同僚たちと3人で、本格的な企業産業記事を書くチームを作るために、NewsPicksに入りました。今、移籍してちょうど2年になります。
後藤直義(ごとう・なおよし)NewsPicks副編集長
1981年東京生まれ。青山学院大学文学部卒業。毎日新聞社を経て、週刊ダイヤモンドにて家電、通信、IT業界を担当。グローバルにハイテク産業を取材し、アップルが日本の電機産業を呑み込む様子を描いたノンフィクション「アップル帝国の正体」(文藝春秋、2013年共著)を執筆。 2016年4月にNewsPicksへ移籍。

伝統メディアから移籍した「理由」

大室 この最後のセッションが、一番、中核で執筆している人たちだと思うんですが、今回はNewsPicksからいきましょうか。
実は2年前に、今日は後ろにいらっしゃる池田さんという記者と、登壇している2人の同僚3人が、週刊ダイヤモンドから同時移籍をしたという「事件」がありました。
本当に、ダイヤモンド社の大ベストセラー「嫌われる勇気」を地でいく3人なんですけれども。その辺り、ぶっちゃけどうなんですか。
NP後藤 ダイヤモンド社でベストセラーって、「もしドラ」とか、もっといろいろあると思うんですけど……。
大室 そうだったかもしれない。
大室 それにしても、3人も同時に辞めるというのは、なかなか衝撃的だったのでは。
NP森川 でも、自然に動きましたという感じです。このあたりで、1度、デジタルに挑戦しようと。その挑戦をさせてくれたのが、NewsPicksだったということですね。
大室 滝川さんは、産経新聞を辞めるときは、どうでしたか。
BI滝川 辞めたときは、BIの存在を、まだ知らなくて。どこかに行くと決めて辞めたわけじゃなかったんですよ。
統括編集長の浜田が、私の知り合いの記者と仲良しだったんです。そのつながりで、辞めた後に何度かお会いして、BIで挑戦してみたいなと。
大室 You来ちゃいなよ、と。伊藤さんはどうですか。
BI伊藤 僕は元々、BIのUSの動向を見ていたんですよね。テクノロジーメディアが、一昨年ぐらいから曲がり角で、再編が進んでいたんです。
そうした中、僕はテクノロジーと、テクノロジー以外のメディアを合体させたような記事を作りたいなと思っていました。そのときに、BI Japanが立ち上がったので、割とパッと辞めて行きましたね。

トランプ大統領の「ウケた記事」

大室 今回のテーマは「ウケた企画、スベった企画」です。BIの場合、スベった記事って何かありますか?
BI伊藤 常にウケない企画の1つは、トランプ大統領の記事ですね。
大室 トランプ、ウケないんですか。
BI伊藤 そうなんです。そうすると、なぜウケないのかと考えるようになる。どんな切り口だったら、みんなトランプの記事を読むのかなと。
あの手この手を試していって、最終的な答えは、「髪型」になっちゃった。
BI滝川 この記事はウケました、すごく伸びた。
BI伊藤 「日本とアメリカ」という切り口の記事は、まだ読まれるんですけど、アメリカだけのことを扱った記事というのは、本当に読まれない。これは、トランプに限らず言えることです。
「髪型」は極端な例としても、読まれる記事ってなんだろうということを、突き詰めて考えるのが、ウェブの特徴だと思いますね。
僕らの場合、リアルタイムの訪問者情報をかなり細かく見ながら、編集部内でフィードバックもしているので、何がウケて、何がウケないか、事前に各々の記者が、ある程度見積もっている、ということがあります。
なので、「めちゃくちゃウケると思ったのに、スベった」という企画は、実は最近はそんなにないと思ってます。
この記事なら5,000PVくらい、これなら3万いかないとおかしいよね、とか。おおむね事前の予想通りの結果が出ます。
大室 晴れると思ったら晴れるし、雨だと思ったら雨が降ると。最新の気象衛星「ひまわり8号」くらいの精度ですね。
となると、NewsPicksの精度はおそらく、「ひまわり2号」くらいですか。晴れると言って、雨のときがありますよね。
NP後藤 ……。
BI滝川 でも私の場合は、結構、絶対当たると思ってスベること、ありますね。
BI伊藤 いやいや、滝川さん、ホームラン飛ばしてますよね。ヤフトピ(ヤフートピックス)にも、かなりの頻度で取り上げられてますし。
BI滝川 そんなことないですよ。
逆にNewsPicksさんが羨ましいと思うのは、課金制だから、PVが伸びなくても、ピック数が伸びなくても、成立している企画があるように見えること。
例えば森川さんがやっていた、「ユダヤ最強説」という企画。
*NewsPicks関連特集ユダヤ最強説
イスラエル沸騰。なぜユダヤ人がイノベーションを生むのか
BI滝川 この特集テーマで、PVはそんなに稼げないはずです。
でも、大事なテーマだし、私は最後まで読みました。この特集企画が実現できる課金モデルは、すごいと思います。

「ウケなかった理由」が大事

大室 実は私、以前、滝川さんに取材されたことがあるんですよ。
朝、そのインタビュー記事を見たら、真面目なタイトルがついていて、おそらくPVが伸びなかったんでしょう。
昼を過ぎたくらいに、「上司はキャバクラ店長だと思え」というタイトルに変わっていたんです。
BI滝川 はい、タイトル変えましたね。そこは、読まれてなんぼなので。
大室 PVに対する、BIの貪欲さが垣間見えましたね。確かに、そう言ったのは事実ですが、しかし産業医としての私のレピューテーションが……。
まあ、いいですけれど。
雑誌はおそらく株のトレーダーに近くて、場が閉まったら、つまり校了したら、それで終わり。ところがネットの場合はFXのように、延々と中毒のように数字を追ってしまう。
BI滝川 そういう側面はありますね。BIの記事って、タイトルのすぐ下に、記者の名前があるんですね。その横に、赤い数字が書いてあります。
これはPV数を示していて、5,000以上になると初めて数字が黒で表示されるんです。そして、1万を超えると赤くなるんですよ。
Yahoo!やSmartNewsなど、ニュース提供先で読まれた数字は反映されないので、あくまで目安ではあります。でも、私自身もやっぱり自分の記事に関しては、この数字を気にして見ちゃう。数字が赤くなっていないと凹むし、結構、心理的に左右されてしまう。
ただ、新聞のときも、心理的に左右される部分はありました。それは、「同業他社に追われるかどうか」が基準だったんですね。
大室 新聞の場合、「抜いた、抜かれた」とか、業界の外の人にはよく分からないことを、いつも言いますもんね。
BI滝川 それが評価基準だし、文化にもなっている。
それに対して今は、PVに囚われ過ぎる自分にも疲れるけど、その向こう側には、「読者がいる」ということでもあります。
私自身は、「ウケる記事」に囚われすぎないようにしています。ただ一方で、「読者にウケなかった記事」には、理由があるとは思います。

人々が「お金を払って読む記事」

大室 なるほど。NewsPicksは、「数字」についてはどうですか。
NP森川 うちだと、「ピック数」がPVに近いかもしれません。確かに、何回も見てしまうんですけど、実はもっと見ているデータがあります。
僕らは有料課金メディアなので、一つ一つの記事が「どれだけお金を払って読まれているか」という数字です。これは、表には出ないものなのですが。
実を言うと、ピック数がそんなに伸びていないのに、めちゃくちゃ課金が伸びている記事というのも、少なくないんですね。
そのパターンの1つは、業界の人がコメントしづらいような記事。分かりやすい例でいうと、元SMAPの3人がジャニーズ事務所を退社したことを機に、昨年11月に組んだジャニーズ特集。
*NewsPicks関連特集ジャニーズ後の世界
芸能✕テレビ。今、日本最後の「ディスラプション」が始まった
NP後藤 そうなんです。例えば、「なぜテレビ業界は、ジャニーズへの「依存症」に罹ったのか?」という座談会。民放キー局の、プロデューサー級の人たちに話を聞いていき、「ジャニーズのタブー」について書いているんですよ。
ピック数はそこそこに、でも、多くの人たちが課金して読んでいる記事なんですね。
おそらく、NewsPicksで記事をピックすると、その記事を読んだことがオープンになってしまうので、業界関係者は「ジャニーズに盾突くの?」となって都合が悪い。
だから全然、ピック数は伸びていないんだと理解しています。そういった記事って、実は意外と多いんですよ。
大室 人前では、何を読んでいるか見せない。いわば、女性がキンドルでボーイズラブのコミックを読むのに近いですね。
NP後藤 特にスマホはパーソナルな端末なので、こっそりお金を払って読みたい記事は、親和性が高いんだと思います。

大企業は、取材を受けるのか?

大室 ジャニーズ特集はウケた企画だと思いますが、「ひまわり2号」もといNewsPicksのスベった企画は、どれですか。
NP後藤 スベったの定義にもよると思うんですけど、スベる以前に、そもそも成立しなかった企画が、結構あるんですよね。
例えば、移籍して最初の頃に実現したかったのが、ユニクロ特集。というのも、NewsPicksは、まだまだ経済メディアとして若かったので、のろしを上げたかったんです。
ところが、取材先企業の経営者が普段、「紙メディア」しか見ていない場合、なかなか取材を受けてくれない。
週刊ダイヤモンドにいるときは、ファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長も、よく取材を受けてくれていたんです。でも、NewsPicksに行った瞬間に、
「スマホは使わないんで、ごめんなさい」
みたいな感じで断られて、すごく苦戦をしましたね。
大室 大企業のトップは、スマホで記事を見ていない。
NP後藤 広報部の方はとてもいい人で、「ぜひ、取材させてください」とお願いし続けて、半年くらい経ったときに、ようやく「分かりました」と。
「NewsPicksの記事を、A4版で紙にプリントして、封筒に入れて、これで柳井にピッチします」
ということになったんです。
大室 プリントアウトするしかないと。
NP後藤 ええ。そこまでしてでも、柳井さんがNewsPicksのインタビューを受けてくれたら、他の経営者も受けてくれる可能性が広がると思って、「これはいいアイデアだ。ついにもらったな」と。
ところが、最後は「やっぱり柳井は、デジタルメディアの取材は受けません」と断られてしまいました。
そういった経営者を、いかに口説いて落としていくか、2年かけて地道な努力を積み重ねてきました。もちろん、これまでに落とせた経営者もいれば、なかなか落とせない経営者もいます。
大室 BIは、どうですか。取材のハードルが高い企業は。
BI滝川 やっぱり、銀行ですね。
BI伊藤 壁が高いですよ、銀行さんは。
BI滝川 私たちとしては、「若者の大手銀行離れ」といった記事を書いて、ヤフトピにも載って、結構読まれていると思っていたんです。
でも、とあるメガバンクの広報に電話をすると、最初は全然、存在を知られていなかった。
大室 まあ、ビジネスインサイダーって、金融の人たちからすると、ちょっと怖いですよね。何しろ、「インサイダー」ですから。
*NewsPicks関連記事みずほFG佐藤CEO独占インタビュー
【独占】みずほグループの総帥が、今、退任を決めた理由

孫正義の記事をめぐる「火花」

大室 とはいえ、企画は成立したのに、スベった記事というのもあるわけですよね。
今日の資料にある、「目に灯った炎」は、実はNewsPicksに元ネタとなった記事があるとか。
NP後藤 この元ネタは、ソフトバンクの孫正義社長の、経営者としての名言をまとめた記事なんです。
記者にとって、ネットメディアの何が残酷でつらいかというと、やっぱりリアルタイムで数字がはっきり出ること。
新聞や雑誌は、印刷してしまったら、泣いても騒いでもおしまいです。ところがNewsPicksの場合、朝の段階で、どれくらいの人が有料記事にお金を払ってくれたか、数字が出てきます。
そうすると、毎朝のようにスマホをひたすら見て、自分の記事がどれくらい伸びているのか、モメンタムを見るんですね。
この記事に関しては、とくに注目を集めたいと思って、孫さんの目に、ちょっと炎を点けたわけなんです。思った通り、朝から結構、伸びていました。
ところが、すぐにソフトバンクの広報の方から、「ちょっと、孫の目に炎は、ないんじゃないか」と連絡がありまして。
大室 ちなみに私、この記事に、朝一でコメントしたので、よく覚えているんですよ。「上場企業の社長写真は、フリー素材である」と。
*NewsPicks関連記事炎を消したバージョン
【インフォグラフィック】孫正義「魂の叫び」ベスト10選
NP後藤 それで、すぐにデザイナーにSlackをカタカタっと飛ばして、目の炎を消したら、ちょっと課金のペースが落ちたんですよ。
なので、ちょっと、午後の2時ぐらいに……
大室 炎を、再稼働した。
NP後藤 はい。そしたらまた、課金は伸び始めたんです。ところが、すぐにソフトバンク広報から電話が鳴りまして。
「なに、また点けてるんですか」と。
大室 上場企業の社長写真は、フリー素材なのに。
NP後藤 何が言いたかったかというと、それくらい僕らも、やはり延々とデータを注視している、ということです。

「話題の人」を記事にする工夫

大室 NewsPicksは最近、「このタイミングで、なぜこの人に取材できるのか」といった話題の記事が多いですね。何か工夫していることがあるんですか?
NP後藤 旬な「ニュース」に、力を入れているということがあります。
僕らは、リソースだけで言えば、何百人も記者を抱えている伝統メディアには敵いません。
だからこそ優先順位をつけるんですが、「トヨタ」とか「SONY」とか「Apple」とか、「企業」に優先順位をつけているわけじゃないんですよ。
企業ではなくて、実は「人」に注目して張っています。なぜなら、本来は「人」にファンが付くからなんですよね。
NP森川 例えば、滝川さんが書いていた、経済産業省若手プロジェクトの記事も、「人」に注目していましたよね。
NP森川 ただ、この経産省の若手プロジェクトについては、どのメディアも「若手」に取材していたんですよ。
本当は経産事務次官が最初に考えたプロジェクトだったので、僕の場合は「次官を取材させてください」と依頼したんです。
*NewsPicks関連記事経産省事務次官インタビュー
【直撃1万字】経産省トップが明かす「若手ペーパー」に秘めた覚悟
NP森川 取材に行ってみると、次官自身も、「実は誰も僕のところには話を聞きに来てくれなくて、寂しかったんだ」と。
新聞記者の場合は、次官にアクセスできて当たり前なので、誰もアプローチしていなかったのかもしれません。
でも本当は、「このタイミングでしゃべりたい」という人たちが結構いるので、そこをちゃんと見ておく、というのは1つありますね。

僕らは「ベンチャー応援団」ではない

大室 大企業はなかなか取材が入りにくいこともあるという話がありましたが、一方で、イマドキのベンチャー企業だったら、取材は入りやすいんですかね。
NP森川 ベンチャーは、基本、受けてくださいますね。
BI伊藤 うちも同じですね。だから、スタートアップの経営者ばかりと会っていると、「うち、売れてるな」と、勘違いしがちなんですけど。
大室 俺ら、いけてるんちゃうかと。
BI伊藤 大手企業に会いに行くと、「あれ、全く知られていない。おかしいな、順調にPVは伸びているはずなのに」となる。
BI滝川 一方で、スタートアップに裏切られたということもありますね。仮想通貨取引所のコインチェック。
うち、すごく早くから取材をしていたんです。それなのに、流出事件直後の記者会見に、入れてもらえなかった。
大室 えっ!入れなかったんですか?
NP森川 僕も現場に駆けつけたんですよ、夜10時くらいに。東京証券取引所内にある、兜の記者クラブで、記者会見をやっていたんですけど。
大室 そこはやはり記者クラブなんですね。
NP森川 そう。記者クラブなんです。最終的に僕はなんとか会見場には入れたんですけど、記者クラブに所属していないメディアで入れたのは、うちとアベマTVくらい。
しかも、質問はさせてもらえなかったんですよね。
兜クラブは証券系の記者たちなので、「記者の質問が的外れ」「記者が何も分かっていない」といったコメントが、NewsPicksでも付きまくっていたんですけど。
NP後藤 事件があった週に、NewsPicksはたまたま、新しい金融の形を追いかけた「お金2.0」という特集の最中でした。
仮想通貨についても、面白いと思ってそれまで深掘りして、こうした新しい動きを歓迎して応援してきたんです。
だからこそ、こういった事件が起きたときに、僕らとしてもある意味、けじめをつけようと。
事件の3日後には、予定していた特集を全部差し替えて、「仮想通貨ショック」という緊急特集を組みました。
*NewsPicks関連特集仮想通貨ショック
仮想通貨の「落とし穴」。コインチェック危機の行方は
NP森川 うちは記者の数は豊富ではないんですが、総力戦で取材して作り上げた特集です。
NP後藤 よく誤解されるんですが、僕らは決して、両手を上げてベンチャーを応援しているメディアではありません。
それだけは、はっきりさせておきたい。そう常々思っています。
*終わり。
(執筆:池田光史、撮影:加藤昌人)