【求人掲載】“住”を民主化する。ツクルバにエンジニアが集まる理由

2018/4/20
リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」が急成長中のツクルバ。オンラインメディアを中心に、独自のデータやテクノロジーを生かして、不動産流通ビジネスの上流から下流まで垂直統合的に手がけている。彼らがテクノロジーによって目指す住環境の課題解決と、それを実現するカルチャーに迫る。
 独創的な不動産領域のベンチャーとして知られるツクルバは、実空間と情報空間を横断した“場づくり”を事業領域とし、コワーキングスペースの先駆けである「co-ba」や、メルカリ社のオフィスなど先鋭的な事業主の空間デザイン事業を手がけてきた。
 2014年からは、新たにリノベーション住宅に特化した流通プラットフォーム事業「cowcamo」をスタートさせた。
cowcamoは昨年11月にiOSアプリをリリース。ユーザー数、掲載物件数ともに増加している。
 cowcamoが特徴的なのは、ユーザーが中古マンションに興味を持ち、あれこれ物件を調べ、実際に見学に出かけ、比較検討して悩み……という一連の購買プロセスに関わるすべての体験を、デザインとテクノロジーの力によってアップデートしている点だ。
 具体的には、物件のリノベーションのプロデュース、物件情報をコンテンツとして発信するメディア運営、そして顧客の物件案内や売買仲介を担うエージェントサービスまで、リアルとオンラインを複合したサービスを展開している。
 cowcamoの利用ユーザーは現時点で年間100万人を超えた。
オンラインメディア「cowcamo MAGAZINE」では、先住者のライフスタイルや街情報まで取材した記事を配信。「買うつもりがなくても、暮らしがイメージできて面白い」とファンが生まれている。
「衣食住という生活の基本要素のうち、東京は“住む”が不自由なままです。テクノロジーの力によってAmazonがモノの流れを変えたように、ツクルバは東京の不動産の流れを変えることを狙っています」
 そう語るのは、代表取締役CEOの村上浩輝氏だ。ツクルバの挑戦の全貌を聞いた。

東京のマンション市場が抱える問題

──ツクルバは創業7年目。cowcamoのローンチ以降、成長が加速しています。
村上:そもそもツクルバは設立以来、社会課題を事業機会として捉え、成長を遂げてきた会社です。時代の流れや社会の変化をとらえ、新たな事業価値を作っていく。それがベンチャー企業の存在意義だとも思っています。
 「一点ものの住まいに出会う」をコンセプトにしたcowcamoは、日本の住宅環境を取り巻く社会課題の解決を目指して生まれたビジネスです。
 日本の不動産、なかでもマンション市場の特性として、“新築がとにかく強い”という点があります。ヨーロッパやアメリカでは、市場に出る物件の8割が中古です。世界的に見ても、日本ほど新築物件の供給量が多く、人気が高い先進国は他にありません。
 以前より、日本の不動産市場の“新築偏重”は指摘されてきた。
 その裏には、地震の多さから耐震基準が頻繁にアップデートされていく物理的要因や、住宅の購入がGDPの成長を支えてきた背景から、国が新築文化を後押ししてきた歴史があります。
 しかし、2016年にいよいよ首都圏の新築マンションと中古マンションの流通量が逆転し、中古の流通量が新築を上回りました。国も「中古住宅流通の促進」を政策に盛り込み、中古住宅の有効利用と向き合う必要性が明確化してきています。
 ただ、中古物件活用の需要を盛り上げようとしても、民間企業にそのノウハウはほとんどないのが実情です。リノベーション物件を手がける企業はあっても、市場に中古物件を適正に評価し、顧客に伝える仕組みがありません。一般的には、築年数など紋切り型の評価が行われています。
  それに対してcowcamoは定量的な評価はもちろん、さらにデザインや管理状態、環境などを含めた“一点もの”として独自の評価を持ち込み、自社の基準に基づいた提案を顧客に提供することで、「今ある物件を活用して都心で自分らしく暮らす」という選択肢を広げ、その流通市場を作ろうとしています。
──cowcamoの方向性をAmazonに例えていましたが、具体的には?
 Amazonが起こした革新は、商流の上流から下流まですべてにテクノロジーを導入し、従来ではありえなかった分野でのスケーラビリティを確立したことです。Amazonのユーザーは、まるでLINEのスタンプを購入するようにクリック一つで買い物ができます。それも、膨大な商品情報の中から自然とレコメンドされたものを。
 つまり、Amazonはインターネット空間やテクノロジーを活用することによって、選択できる商品数の制限をなくしただけでなく、今まで気づかなかったような自分が欲しい商品とのマッチングを創出し、さらに物理的に“モノ”を届けるプロセスがあるのにデジタル商品を扱うかのように買い物ができる世界を作ったわけです。
 cowcamoが目指すのも、住まい探しにおけるそんな世界です。不動産は、高価であり、動かすこともできません。人手がかかるプロセスも膨大です。その商品やサービスの特性上「テクノロジーによる介在余地は少ない」と思われてきました。
 われわれは、この“人力だった部分”をテクノロジーによってスケーラブルにすることに挑戦しています。
マンションの売主と買主をテクノロジーでつなげる商流のなかで、すべての領域にエンジニアが関わる。
 その土台として開発してきたのは、物件とユーザーのマッチングの自動化です。各物件にどのユーザーが興味を示すかをデータベース化して分析することで、流通のボトルネックを解決できるよう開発を進めています。
 今後は、AIがエリアごとの適正価格や売れやすい内装のパターンなどを解析し、事業者側にリノベーションプランのデータを提供するようなシステムを作りたいと考えています。

新しい「住宅の消費」市場を作る

──事業エリアを東京圏に絞っている理由はなぜでしょうか。
 東京圏の中古マンション流通マーケットは1.4兆円規模だといえる試算があり、それが日本全体の約50%を占めています。例えばアパレルEC市場全体が約1.4兆円であることを考えれば、非常に大きなマーケットです。
 しかも、リノベーションマンションの流通が新たな事業機会になっている先進国は日本しかないため、競合となりうるグローバルジャイアント(多国籍企業)が存在しません。
 cowcamoはサービス開始から約2年半で、年間流通数を200戸近くまで伸ばしました。これは東京圏の中古再販事業者に置き換えるなら、業界トップ企業の20%前後まで届いています。
──流通を一気通貫で提供できるようになることは、ユーザーに何をもたらすのでしょうか。
 投資目的で不動産を購入する人を除いて、居住目的で「家を買う」人は、不動産がほしいのではなく、そこでの自分らしい「暮らし」がほしいのです。
 衣食住の中で、「衣」「食」は、自分らしさの表現や人生を豊かにするためのものになっていますが、「住」だけはまだまだその域に到達していません。それを解決するひとつの解が、流通市場の発展です。
 例えば、フリマアプリ「メルカリ」が登場したことで、社会にどんな変化が起きたかといえば、高価な服を買う消費者が逆に増えたんです。2カ月着たあとに、飽きたからとメルカリに出せば定価の8割で売れる。
 ロレックスの高価な時計を購入する人も、ロレックスの価値は下がらないと知っているから購入しやすい。つまり、流通が保証されていれば、人は大きな買い物もするようになるということです。
 ライフスタイルの変化にあわせて、cowcamoで所有している物件を売り、新居をcowcamoで買うというユーザーが生まれている。(写真:廣川かりん)
 それに対して、不動産がカジュアルに買えない最大の要因は、「ちゃんと売れるか、損をしないか」が不安だから。つまり、必要なのは物件が適正に評価される流通市場を作ることです。
  そういう意味では、cowcamoエコノミーは、不動産におけるシェアリングエコノミーとも言えます。
 デジタルデータによって裏付けられた物件が流通していけば、修繕履歴もすべてデジタルで確認できるようになる。常に客観的に物件価値を検討して、購入後の流通を見通すことができます。
 「暮らす」という営みのスタイルは本来多様であり、住居には居住者の“自分らしさ”が反映されることで、生活は豊かになるはず。
 われわれが新たな中古マンションの流通市場を作ることで、東京に暮らす人々に、新たな消費行動を作れると考えています。
 このビジョンを達成するためには、これまで以上にエンジニアの力が重要になってきます。エンジニアの採用に関しては、全社的に力を入れています。
 今、ツクルバにはエンジニアが毎月入社していますが、彼らに話を聞くと「自分たちの力で意味のあるサービスをつくりたい」「多様なクリエイターの中で働き今までと違った刺激を受けたい」など、ツクルバのビジョンや環境に共感して集まってくれています。
 こういったキーワードに少しでも引っかかるエンジニアの方とは、ぜひ一度お話ししたいと思います。

多様なスペシャリストが集う“場”

 cowcamoのビジョンを実現するために、ツクルバにはいわゆるITベンチャーとはやや毛色の違ったスペシャリスト人材が集う。例えばこんなキャリアの持ち主たちだ。
ソフトウェアエンジニア……サービスの隅々にテクノロジーを実装する
アーキテクト(建築士)……3Dモデリングを活用した物件の設計、デザインを担う
データサイエンティスト……物件情報や購買データを多角的に分析する
編集者・デザイナー……物件情報をコンテンツとして発信する
不動産エージェント……ユーザーとの面談、売買仲介業務を行う
 各領域のスペシャリストが集結するコミュニティであることが、ツクルバのビジネスの独創性に直結している。彼らはなぜツクルバに集まるのか。多様なプロが集うことで生まれる“場”の価値について、実際に働くメンバーに話を聞いた。
テクノロジーチーム 藤田貴志氏。2016年に入社後、エンジニアの増加に伴ってチーム化の必要性を感じ、現在のポジションを自ら作って就任。
「 “場をつくる”という社名の通り、まさに自分たちで働く場、環境を作っている実感があります。自分たちが持つスキルや経験を、よりよいサービス提供にいかに応用できるかという視点をみんなが常に持っていて、提案できるフィールドがある。多様な領域のスペシャリストがいる環境だからこそ、自分の価値をいかに発揮すべきかを、自由に考えられるようになるんだと思います」
カウカモ事業部の中村圭佐氏。前職はメガベンチャーのグロースハッカー。ツクルバ第1号エンジニアとして加入後、cowcamoの設計を中心にプロダクト全体を担当。
「ツクルバに入ってから、“モノづくり”をしているという思いが強くなりました。以前まで、僕が手がけるサービスはオンラインで完結するものに限られていましたが、cowcamoは高額な不動産商品を扱う特性上、リアルな接点が不可欠です。ただプログラムを作っているのではなく、リアルとオンラインを広く包括した“体験の仕組み”を作っているということをすごく実感します」
cowcamoのエージェントと商品開発を兼任している長谷川莉実氏。前職の大手ゼネコンでは新築マンション建設の現場監督だった。1年前にツクルバに入社。
「中古物件は一戸一戸すべてが違うからこそ、唯一無二のこだわりに良さを感じるお客様が必ずいます。そして、その物件を選ぶことで描く暮らしも、一人ひとり異なる。その暮らしの土台となる“場=住まい”を提案できることが、とても面白いんです」
建築設計事務所から2015年にジョインしたアーキテクトチームの松山敏久氏。グッドモーニングビルディング(東京・渋谷)や、小学校のフルリノベーション(鳥取県八頭町)などの大型物件を手がける。
「エンジニアチームがすぐ隣にいるので、cowcamoのサイト設計において『本当にその機能は必要なのか』『それがツクルバとユーザーとのコミュニケーションをどう生み出すのか』という議論がよく聞こえてきます。過去のキャリアでは、エンジニアとは接点がなかった。彼らとつながったことで、モノづくりの本質を改めて考えるようになりました」
(取材・文:田中瑠子 編集:呉琢磨 撮影:岡村大輔)