クアルコムしらける株主 13兆円買収阻止の代償
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注目のコメント
株主権と公共の利益のコンフリクト、というテーマです。
コンフリクトは普通にあり得るし、その場合公共の利益を優先するのが世の常。
公共の利益が勝る典型は、独占禁止。
記事後半でも触れられている通り、いずれにせよ本件でも公取が発動する可能性は高かった。
しかし今回発動された公共の利益は、国家安全保障。外国企業によるMAでは例えば空港運営企業など例は少なくありませんが、IT関係では恐らくあまり例が無いのでは。
またそもそも安保上の何が問題か明確な根拠説明が無かった事が株主の不満を生んでいます。
理由として最有力視されているのが、5G規格における米中競争。
中国のファーフェイに対して米国のクアルコムが両国を実質リードする形で規格策定が進んでいた。
ブロードコムに買収されると経営が中国側に傾くというより、クアルコムが実質解体されてしまう事をトランプ陣営が懸念したという説が有力です。
ただし、それが本当の理由かは最後まで分からない。やはり理由が明確でない以上はその妥当性の議論が出来ず、したがって国家権力による市民権の不当な侵害であると主張する者が現れても理屈上はおかしくない。ただしトランプを向こうにしてそれをやっても得より損が多いからやる人がいないという事でしょう。
本当の理由、の他のいくつかの可能性は下記にコメントしています。
https://newspicks.com/news/2882558?ref=user_143212イノベーション、プラットフォームと競争政策のあり方が変わってくる。M&Aもそうだ。何のための政策か。
独禁法の解釈は、専門家に任せるが、それも、社会通念や価値観で変わってくるものであることは、米国におけるコングロマリットへの規制、研究所設立、水平分業へのシフトにも大きく関係している。その意味では、プラットフォーム戦略にも寿命があり、未来永劫のものではなかろう。
先日、日経の西條氏が紹介したカーン氏の論文は過去30年ほどで米国の独禁政策の主流の理論になった、「消費者の利益(consumer welfare)」のみに焦点を当てるシカゴ学派の説に異議を唱え、米アンチトラスト法制が成立当初から重視してきた、ライバルを締め出すことを目的とした不当廉売やサプライチェーンに連なる川下や川上のプレーヤーを傘下に収める垂直統合について、米競争当局はもっと厳しい姿勢を取るべきだと主張しているようだ。売上が急増しながら、利益は横這い、株価は高騰という現象は、株価を煽り、不要な値下げやコストをかけライバルやサプライチェーン全体を締め出そうというものなのだ。
https://www.yalelawjournal.org/note/amazons-antitrust-paradox
ビッグデータ時代には、情報の二次利用は大きな議論となる。広告を利用、ネットワーク外部性とプラットフォームに依存、時価総額を活用してきた、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)は大きな転換期を迎えているのかもしれない。
日本でも、公取委員長の杉本氏が、日経新聞の取材で、データ寡占は独禁法の対象であり、巨大企業の収集について、問題点検討とコメントしている。特に、「データ収集は、個人情報保護と競争政策とが交わる新分野だ」という点が興味深い。更に、これに課税のあり方や、株価操縦的な利益が出て居ないのに長期に売上拡大だけ煽るようなやり方も議論されるべきだろう。さらにいえば、独禁法の解釈において、従来から主張しているコングロマリットとファンドの境界が無くなっていることも問題だろう。いい記事。
日本の経済紙がクアルコムとブロードコムのことを書くとすればこういう内容になるのか。サンディエゴの街を歩けば見えてくるクアルコムの存在感、といったところか。
企業は誰のためにあるのか?国のため?社員のため?株主のため?経営者のため?上場企業ならば株主のため、となるわけだが、時に大きすぎる企業買収は国や周りを巻き込んで大きな波紋を呼ぶ。それは独禁法もそうだし、安全保障もそう。Huaweiもアメリカ進出には苦戦してるし、今の米国政府は通信については明確に中国との間にある一定の線引きをしてる。
買収とリストラを繰り返してシリコンバレーの企業は大きくなってきたし、合理化を果たしてきたのもまた事実。大きな買収や事業撤退が起こるたびにシリコンバレーの街に失業者が増え、また転職者も増える。これ以上新陳代謝は起こらないのか、それとも…
ブロードコムが本社登記をデラウェアに移したのは面白い。それ「だけ」で果たして米国企業と見てもらえるのか、それともやはりお金の出し手を気にするか。