[ニューヨーク 14日 ロイター] - 米国では大規模金融緩和がゆっくり終わりを迎えつつあり、物価と金利は上昇している。このため金融業界では9年目に入った米国株の強気相場の先行きが心配される中で、ある一角だけはやけに雰囲気が明るい。それは企業のリストラや債務再編を手掛ける業界だ。

彼らは今後債務不履行(デフォルト)が増え、資金調達環境全般が厳しさを増すと見込んでいる。株式投資家にすれば縁起でもない話だが、リストラ専門家にとっては事業拡大を期待できる。

何人かのリストラ専門家はロイターに、事業環境の先行きについては2008年の金融危機以降で今が最も楽観的になっており、早ければ来年早々に始まって、何年も続く債務再編の大波が到来する事態に備えていると語った。

アリックスパートナーズの経営再建・リストラ部門グローバルリーダー、リサ・ドナヒュー氏は「われわれは下級職やMBA取得者などの人材を活発に募集している。この先予想されるのは著しい事業の成長と雇用増加だ」と話した。

こうした自信の裏には、金利上昇によって資金繰りの苦しい企業は、かつて緩和マネーが市場にあふれかえっていた局面と同じようには、追加の借り入れや借り換えができなくなるという読みがある。

リストラ専門家は、信用力の低い企業にとって重要な調達先であるジャンク債市場から投資家の資金が流出していることや、物価上昇のために企業の幅広い部分でじわりと経費負担が増大している状況も、自分たちの業界には追い風になると指摘した。

先月ラスベガスで開催された企業リストラ業界の年次会合では、多くの参加者が、何年も縮小が続いてきた事業が転換点に達しているとの見方を示した。

SSGキャピタル・アドバイザーズのマネジングディレクター、マイケル・グッドマン氏は同会合後ロイターに「事業は上向き始めていると思う。過去5年間は、企業に与信面の問題があっても、新規借り入れで問題を解決できた。これからはそれは不可能になり、結果的に債務再編と(ディストレスト資産の)売却が起きる」と説明した。

これまでの金融緩和局面でわが世の春をおう歌してきたのは、例えば企業合併・買収(M&A)の助言手数料で稼ぐ投資銀行で、活発なM&A市場の恩恵を被った。反対にリストラ専門家は、コストの安い資金が潤沢に手に入る時代は日の目を見なかった。

リストラ専門家業界団体の登録者数は、こうした緩和局面で大きく減少。足元で人数はまだ回復していないが、専門家養成コースの受講者が増えているのは吉兆だ。

専門家養成コースを開設している企業倒産・リストラ助言者協会幹部のトム・モロー氏は、昨年は参加者が28%増えたと述べた上で「業界の各企業は新規採用を再開し始めた」と付け加えた。

リストラ専門家が苦難の時代を何とかしのげたのは、2014年の原油価格急落に伴うエネルギー部門のデフォルトや、その後のアマゾン・ドット・コム<AMZN.O>の事業拡大のあおりを受けた小売業界の相次ぐ破綻のおかげだった。

そして今、他のセクターでも緊迫した状況が目に入ってきた。地域病院を運営するコミュニティ・ヘルス・システムズ<CYH.N>は約140億ドルの債務を抱え、金利が上昇する中で今後数年間は毎年多額の返済を迫られる。石炭市況低迷を何とか乗り切ってきた鉱業のマレー・エナジーも、2021年償還債の価格は今年初めから20%近く下がっている。

(Jessica DiNapoli記者)