ブロックチェーンで難民IDを 通貨以外の利用知って イーサリアム財団の宮口礼子さん
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IDは、サービスを受けることができる条件となることで、価値をもちます。世界には、国が供与するIDを得られない人々がいます。ミャンマーのロヒンギャの人々が典型的です。国によるIDを得られなければ、行政サービスを受けられません。教育も、医療も、保険も、補助金も、商売のための認可も受けられません。最近では、携帯電話購入の際に、IDの提示を求められます。また、多くの場合、国によるIDをもたない人々は、殺されたり盗まれたり犯されたりしても、下手人が罪に問われることはありません。
国によるIDを得ることができない難民に提供されるIDに、国連による難民登録があります。国によっては一定程度の医療を受けられたりしますが、この難民登録も、受け入れ先の国家が認める範囲で提供されます。結局、国による十全な行政サービスが受けられるようになるには、先進国に行って難民として認められることが、有力な方法です。
難民問題というのは、誰に国によるIDが与えられて行政サービスを受けられるようにするべきか、をめぐる争いが大きな部分を占めています。
国ではない民間団体の供与するIDに価値はあるのか、ですが、結局、それがサービスと結びつくのか、で決まります。もし多数のNGOがそのIDを用いて、衣食住や医療、教育、治安を提供するための条件とするのであれば、そのIDは価値を持ちます。その際、IDの偽造や流用、盗用を防ぐための方法としては、生体情報による認証が唯一無二でしょう。
もし仮に、NGOに加えて、多数のグローバル企業が、その民間団体が提供するIDを用いて、携帯電話購入や銀行口座の開設、保険加入を含むサービスを受けたり、就労するための条件とするならば、国によるIDを超える価値をもたせることもできます。そうなれば、国によるIDが誰に与えられるべきか、をめぐる争いも減ります。難民問題が生じている地域では、国家による信頼の基盤が崩れてしまっていることが多いので、インターネットとブロックチェーンを使ったデジタルIDや、それに基づく経済取引を導入するメリットは大きいだろう。先進国の視点からは、まずは生命、食料、水道、電気、住居を提供して行くべきで、スマホとインターネットは最後でいいと考えがちだ。しかし、記事に書かれているアフリカのデジタルマネー(M-PESA)の事例でも分かるように、水道や電気の前に、携帯電話による資金決済が切望され、普及している実態がある。難民支援も、当事者が何を欲するかをしっかり見極めて実行する必要があるだろう。
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翻って、先進国では、様々な公共サービスや決済サービスが発展段階を経て提供されて来た。各々のサービスに慣れている世代の消費者が混在しており、各々の世代がそれらにほぼ満足しているから、敢えて新しいものにチャレンジしようとは思わない。供給者側が新しいサービスを提案しても爆発的には普及しないから、むしろ新興国のサービスの方が先進的という逆転現象が起きるのだろう。こうした事情もあり、日本のキャッシュレス化を実現させるためには、強力な政策対応が必要だと思う。