[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米大統領は12日、シンガポール半導体大手ブロードコム<AVGO.O>が提案している米クアルコム<QCOM.O>買収について、国家安全保障上の観点から禁止する命令を発出した。

ブロードコムはクアルコムに1170億ドルで買収を提案。実現すればテクノロジー業界で過去最大の買収になるとみられていた。買収提案は、米財務省が主導する対米外国投資委員会(CFIUS)が調査を進めていた。

大統領令は「買収者(ブロードコム)が提案したクアルコム買収は禁じられ、実質的に同様のいかなる合併、買収も禁じられる」と表明。クアルコムを支配したブロードコムが「米国の国家安全保障を損なう恐れがある行動を取る可能性」をトランプ大統領が信じるに至る「確かな証拠」があると指摘した。

米大統領がCFIUSの異議に基づいて買収を阻止したのは5件目。トランプ氏としては就任以来2件目となる。

大統領令に先立ち、CFIUSはブロードコムに宛てた11日付の書簡で「国家安全保障上の懸念が裏付けられた」と指摘していた。

半導体業界は第5世代(5G)無線技術用の半導体開発を急いでいる。クアルコムは、この分野でシェア獲得を狙う華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]など中国企業に対する最大の競合社の1つで、米国にとって貴重な資産となっている。

CFIUSの考え方に近い筋によると、ブロードコムによるクアルコム買収が成立すれば、10年以内に華為1社が関連技術を牛耳ることになり、米国の通信事業者は華為から設備を買う以外の選択肢を断たれる、との懸念が米軍内にはあるという。

CFIUSは5日付の書簡で、ブロードコムのクアルコム買収案を巡り、ブロードコムと「外国企業」との関係性について、安全保障面でのリスクを認識していると説明していた。

CFIUSは「5G技術の中国企業による独占は米国の安全保障にとって重大な問題をもたらす」と警告した。

ブロードコム側は、大統領令を精査中だとした上で、「当社はクアルコム買収案が国家安全保障上の懸念をもたらすとの(米政府の)主張に強く反対する」と表明した。

クアルコム買収を阻止する大統領の決定に不服を申し立てることはできない。だが、ブロードコムが本社の米国移転計画を推進する場合にどの法令の管轄になるかは明確ではない。

一方、クアルコムはCFIUSの調査で延期していた年次株主総会を3月23日に設定した。