変化のプロセスを省略してはならない。よく考え、未来の変化に備えるための時間を確保しよう。

変化のプロセスすべてを検討する

現在、ビジネスにおける変化のペースは加速している。その大部分は、新しいテクノロジーがもたらす破壊的革新が煽っているものだ。コンサルタンティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、各社はこうした変化についていくのに苦労しているようだ。
リーダーたちにとって変化についていくとは、変化に対処する方法を初めから終わりまで注意深く検討することを意味する。
新しいソフトウェア・システムという形の変化であれ、合併や買収であれ、あるいはプロセスにおける小さな変更であれ、そうした変化への取り組み方をどうすれば確実にビジネス上の成功につなげられるだろうか。
私の経験から言うと、問題はたいていリーダーが変化のプロセスを最初から最後まで検討していないことにある。
私が最近書いた記事では、アン・サレルノがその著書『The Change Cycle(変化のサイクル:邦訳なし)』で述べている「変化の6段階」を取り上げた。そして、最初の4段階(喪失、疑い、不安、発見)でチームをいかにうまく導くかが、生産性を取り戻す助けになると説明した。
しかし、そこで止まってしまってはいけない。
第5段階「理解」と、第6段階「統合」では、リーダーに変化のプロセスを振り返るよう求めている。結果を確認し、フィードバックを得ることに時間を費やせば、次の変化(そしてまたその次の変化)がやってきたとき、組織全体が変化によどみなく対応できるように備えることができるだろう。

1. まずは影響を把握する

私が人事管理シニアディレクターとして勤務するコーナーストーン・オンデマンド社では最近新たに、世界規模のマネージャー・トレーニング・プログラムを導入した。以前はもっと個別のものだったが、新しい形式では新マネージャーたちのグループ・ディスカッションに力を入れた。
新マネージャーたちをオンラインでグループ分けし(チャットルームのようなものだ)、彼らが自分の考えをシェアしたり、進行役が提供したトピックに答えたり質問したりすることができるコミュニティをつくったのだ。
新しいプログラムがうまく施行されると、私たちは変化のプロセスの第5段階「理解」に入った。第5段階では変化を現実的にとらえるようになり、その影響を理解し始める。
そこでマネージャーたちが集まり、その変化による短期的および長期的な影響を話し合った。われわれのチームにとって、短期的な影響とはわれわれの製品をこれまでと違う形で使っていること。長期的な影響はマネージメントに関して異文化間の話し合いを進めることだ。
変化について話し合うときは、明確に表現されるようにしよう。言葉で表現すると、個人としてもグループ全体としても憶測を避けることができる。具体的な言葉を使うことも大切だ。
「マネージャーのためのこの新しいシステムは、われわれの目標を達成したか」という問いかけは、漠然としすぎている。代わりに「われわれは、異なるオフィスのマネージャーたちをつなぐシステムを導入したか」という質問は、皆が同じ議論に参加していることを明確にしてくれた。

2. チームを褒める

このプロセスは簡単だ。変化のプロセスに関わった各人の成果を認めるのだ。たいていの人にとって変化はつらいものだから、第5段階に無事に到達すること自体が大きな功績だ。
パーティーを開く必要はない。「あなたが懸命に働いたことはわかっている」と認めるだけでいい。簡単なステップだが、彼らには大きな意味がある。

3. 十分に考察し、報告してもらう

変化のプロセスの第6段階では変化を振り返り、報告を求める。全社的な報告会は適切とは言えない。意見が埋もれてしまうからだ。
そうではなく、彼らの声を代表するであろう人物を選び、報告会に参加してもらう。われわれが行った報告会では、小集団システムを導入したチームを集めた。
そしてプロセスの初めに設定した目標を振り返り、問いかけを行った。「われわれが望む結果は得られたか。より良い結果を出すためには、次回は何をすればいいか。予期していなかった結果は何か」という問いだ。
われわれの場合、予期していなかった結果とは、グループ分けしたマネージャー同士の話し合いにおいて彼らがこれほど早く自分をさらけ出し、その結果として偽りのない前向きなコミュニケーションをするようになったことだ。
最後に、それぞれに対してプロセスを振り返るよう促すことも必要だ。「この変化を通して、自分について何を学んだか。ほかの人について、そして彼らが変化にどう対処するかについて何を学んだか」
われわれのチームで変化をリードした人物は、それまでこのようなことをしたことがなかった。彼は報告会で「この経験で、助けを求めてもいいということがわかった」と語り、求めれば助けが得られたとも述べた。
この報告会のプロセスを経て、彼の自信はさらに強まった。次に変化が訪れるときは、彼は変化に対してもっとオープンになるのではないだろうか。
心理学ではこれを「レジリエンス」と呼ぶ。自分の人生を変えるような困難に、うまく順応する能力のことだ。変化のプロセスを最後の段階まで経験することにより、個人の中にレジリエンスが生まれるだけでなく、会社のDNAの中にもレジリエンスが培われていく。
そしてやがて、効率と生産性を求める変化が、麻痺や大きな混乱をもたらすことがなくなっていくだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jeff Miller、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:jankovoy/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.