世界で初めて、電子の「量子」超臨界状態を発見 東京大学
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注目のコメント
東大の世界ランキング低下が叫ばれて久しいですが、物理学は10位前後をキープ。素晴らしいです。
QS World University Rankings by Subject 2016 - Physics & Astronomy
https://www.topuniversities.com/university-rankings/university-subject-rankings/2016/physics-astronomyこんな基礎物理の話題がNPで200以上ピックされ話題になっているのにも驚きだが、中身に対するコメントが少ないようなので少しばかり。
レアアース問題などで話題になる希土類元素を含む、ランタノイド(希土類元素+Sc+Y)やアクチノイドと呼ばれる元素は、f軌道に電子を持つ。f軌道では、近藤効果(f電子のモーメントを伝導電子が遮蔽し遍歴させようとする効果)による斥力で電子が重いフェルミオンとなり、電子の有効質量が見かけ上通常の千倍以上となるとなるため、「重い電子系」とも呼ばれる。
また、伝導電子を介してf電子間に働き局在させようとする力であるRKKY相互作用(ルーダーマン・キッテル・糟谷・芳田)と近藤効果の競合により、磁気秩序相とフェルミ液体相の間に量子臨界点(T_N=0)を持つ(ドニアック相図)。その近傍における非フェルミ液体や格子揺らぎ(フォノン)ではなく磁気揺らぎが引き起こす超伝導相の可能性などが注目されて来た。
4f電子を1つもつCe(セリウム)系では多くの超伝導相が見つかっていたが、4fに正孔(ホール)を1つもつYb系でなかなか超伝導が見つかっていなかった所、2008年に今回の発見に関与している中辻研が初めてYb系の超伝導を発見(β-YbAlB4単結晶において、T_c=80mK)した。
今回の発見は、この物質と同組成で、反転対称性が破れているα-YbAlB4によるもの。この物質は非フェルミ液体が基底状態のβ相とは異なり、きれいなフェルミ液体(パウリ常磁性)。また、両者は価数が整数値から外れたいわゆる「価数揺動系」と呼ばれる物質。
普通の価数揺動系では価数相転移は一次相転移(潜熱がある)だが、今回の物質は絶対零度でも臨界点より上の状態である一種の「超臨界」状態とみなせるため、二次相転移であるのにも関わらず絶対零度であることから熱揺らぎが殆どなく(「絶対零度の超臨界流体」といえる)、殆どがトンネル効果による量子揺らぎによる転移となっていると期待できる。
β相の超伝導相の中に圧力方向に分布した特異点があることも示唆されていて、その関連も興味深いところ。
しかし、このすごさはどれだけの人が理解しているのだろう。筋違いのコメントが多くて、「知の最先端」たるNPのコメント欄なんてこんなものかと思ってしまう。絶対零度で圧力や磁場を変化させた際の相転移は量子相転移と呼ばれる。量子相転移前後の臨界揺らぎがどのような性質を生み出すか、長年興味が持たれてきたが、水などの流体を絶対零度にして量子相転移を引き起こすことは実現困難とされてきた。
そこで本研究では、超臨界流体に似た性質を持ち、かつ量子相転移が可能な候補として、物質中のイオンが持つ電子の数(価数)が変わる相転移に着目。圧力により価数が変動する性質を持つイッテルビウム化合物に、鉄を微小量添加すると圧力と似た効果が得られることを利用して、価数が急峻に変化するクロスオーバーの観測に成功した。
すげーー!!!
これはすげーぞ!!!