スマイルズ遠山正道の「ビジネス×アート」な人生

2018/4/21

ライフワークは「現代アート」

なぜ企業がアーティストとして作品を創るのか?
「世の中の体温をあげる」を掲げて、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」をはじめ、ネクタイ専門ブランド「giraffe(ジラフ)」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON(パスザバトン)」など、さまざまな事業を展開してきました。
そんな私のこれからのライフワークになっていきそうなのが「現代アート」です。

ビジネスがアートから学べること

マーケティングはしない。仕事はすべて「自分ごと」
アートから学べることは、マーケティングがないこと。スマイルズの経営には、いわゆるマーケティング的な発想はありません。
アーティストはお客さまに、「どんな絵を描けばいいでしょう?」なんていうアンケートはとりません。「とったアンケートから上位3つの絵を描きました」なんていうことも決してしない。だって、そこがいちばん重要で、面白いところなんだから。
何を想い、どう表現するのか。それこそが価値なのに、そこを委ねてしまったら、そもそもの意味がなくなってしまいます。

「なんでこうなっちゃうの?」

億単位の作品に違和感。「アートの民主化」が必要だ
2017年に、スイスのバーゼルで開催されている世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」に行きました。そこはほとんどが億単位の作品ばかりという印象で、ある種の疎外感と共に、それなりの違和感を覚えました。
「なんでこうなっちゃうの?」
Soup Stock Tokyoを始めたときの一つの感情でした。20円安いより、200円高くてもいいから、ちゃんとしたものを食べたい、と。
アート・バーゼルでも感じました。「なんでこうなっちゃうの?」と。

祖父は日興証券創業者

祖父は日興証券創業者。アートに通じる私のルーツ
私の祖父・遠山元一は、のちの日興証券となる川島屋証券の創業者でした。じいさんには娘が1人と息子が3人いて、父の直道は末っ子の三男です。

父が飛行機事故で他界

父が飛行機事故で他界。11歳の目に映った光景
日興証券の副社長だった私の父は、飛行機事故で亡くなりました。父は47歳、私が11歳のときでした。

慶應高校時代は奇術部長

慶應高校の奇術部部長、夜の六本木で手品師になる
幼稚舎から慶應の人って、だいたいは体育会系にいくんです。私も幼稚舎のときは、1つ下の代だった玉塚元一くんたちとラグビー部にいたんですけど。
当時から私はちょっと特殊な立ち位置で、体育会系の友人もいれば、文科系の友人もいて。どちらとも結構仲良くつき合っていて、そういうところは今でも変わりませんね。
高校時代は奇術部の部長で、家で鳩を飼っていました。

三菱商事への入社を切望

三菱商事で学んだビジネスの基本と品格
三菱商事の入社試験が一次、二次と進むにつれ、「三菱商事に入りたい」という気持ちがどんどん強くなりました。
でも、集団面接のとき、ほかの応募者が立派に受け答えしている中、私はうまく話すことができず、ここでもう終わりだなと感じました。
それでもどうしても諦められず、面接が終わったその足で、部長を訪問します。

「頼まれてもいない仕事」の喜び

三菱商事で「頼まれてもいない仕事」の充実感を知る
私はこの経験を通じて、誰に頼まれたわけでもなく、自分の想いや熱意によって手がけた仕事が人々に喜んでもらえることの充実感も知りました。
以来、現在のスマイルズでも、「頼まれてもいない仕事」を大切にしています。

年齢は三捨四入で

あなたの夢は何? いつやるの?
「いつやるの?」と言われ、「いやいや、夢ですから」と返すと、「いつやるの?」と畳みかけてくる。
仕方がないので考えて、35歳と言おうとしたが、ちょっとオジさん臭いかな、34歳までにしたほうがいいかな、などと適当なことを言うと、「年齢は四捨五入ではなく三捨四入、33歳までにやれ!」と。

外食産業に対する苛立ち

Soup Stock Tokyoを生んだ企画書「スープのある1日」
KFCでの新しい事業プランを構想しているときに、外食産業に対しての「どうしてこうなっちゃうんだろう?」という、素朴な疑問が生まれました。それは苛立ちとも言えるものでした。
周囲の環境にそぐわないド派手な電飾看板や、体に悪そうな印象を与えるメニューなど。もっと低投資でも、感度の高い提案をしたい。
そう考えていたある日、友人と食事をしているときに突然、一人の女性が温かいスープを飲んでほっとしているシーンが思い浮かびました。

社内ベンチャーゼロ号

三菱商事の“社内ベンチャーゼロ号”スマイルズ
三菱商事ではコーポレートベンチャー制度の導入を検討していたようで、Soup Stock Tokyoはその前哨戦のようなかたちでスタートすることになりました。
ですから私は、Soup Stock Tokyoの事業は、三菱商事の“社内ベンチャーゼロ号”などと呼んでいます。

事業計画を描いた1枚の絵

スマイルズの10年間を描いた数字のない事業計画
スマイルズの利益が安定せず、苦境にあった2005年。コーチングを受けたことで、Soup Stock Tokyoを提案した当時の想いに立ち返ることができた私は、原点から10年間にわたる事業計画を描いてみることにしました。
そうすることで、スマイルズ本来の姿や、進んでいく未来像を再確認したかったのです。
といっても、数値目標などが記されたいわゆる事業計画書ではありません。それは、「スマイルズのある1日」と題した1枚の絵です。

新規事業の「四行詩」

新規事業に大切な4つの視点とは?
「やりたいということ」「必然性」「意義」「なかったという価値」
これは、スマイルズが新しい事業を行うときに大切にしている4つの視点「四行詩」です。

「47人の集団脱サラ」募集

社員に「先着47人の集団脱サラ」募集
「47人の集団脱サラ」というプランを提案しました。先着47人の脱サラ募集と。
応募の要項は、以下の通り。
【集団脱サラの6カ条】

決まったルールはない

人生のプロジェクトを実現しよう
いきなり会社を辞めて起業するには相当の勇気と覚悟が要りますし、リスクもあります。ですから、最初の2年は給料を出す。3年目からは自分の給料は自分の会社で稼いでね、というセーフティネットもあります。ダメだったら、帰ってくればいい。
特段の決まったルールはありません。というか、ルールすら自分でつくってきてほしいと思います。
(予告編編集:上田真緒、撮影:遠藤素子、デザイン:今村 徹)